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グリホサートとネオニコチノイドに対する農家の本音【落ちこぼれナス農家の、不器用な日常】
グリホサートとネオニコチノイドは農業の現場では広く認知されて使われている反面、農薬デマのターゲットにされることも多いです。
この2つに対するデマへの反論は長くなってしまうので今回の記事では書きませんが、農家として消費者に現場への正しい理解をしてほしいと思うことはあります。
ということで今回は、
「グリホサートとネオニコチノイドに対する農家の本音」
を語りたいと思います。
消費者の方に知ってほしい知識でもありますので、ぜひ読んでください!
グリホサートとは
グリホサートは除草剤の成分です。
他の除草剤との違いは、成分が根まで浸透して、根っこごと枯らすという特徴があることです。
ある程度かかれば根っこごと枯れるので、薬剤がかかった部分だけ枯れる除草剤と比べると除草作業が非常に楽になります。
ハウスナス農家の僕がグリホサートを使う場面は、ハウス周りの雑草に対してです。
ハウス内への害虫の飛び込みを避けるために、ハウス周りの害虫の宿り木になる雑草を除草するのに使っています。
万が一かかると作物が枯れてしまうので、栽培しているハウス内ではグリホサートは使用しません。
ネオニコチノイドとは
ネオニコチノイドは、タバコなどに含まれるニコチンを改良して作られた成分です。
コナジラミやアブラムシなどのやっかいな害虫に効果があり、1990年代に農薬登録されて以降、今も全国で使われています。
ネオニコチノイドは、他の殺虫成分と比べてハチに対する影響日数が長いです。
ネオニコチノイド系の薬剤を使用すると、その後長期間ハチを放つことができません。
ハウス栽培のトマトやイチゴなどの果菜類は、ミツバチやマルハナバチを使って受粉させるので、ネオニコチノイド系の農薬を使う時はタイミングを十分に考える必要があります。
グリホサートとネオニコチノイドが使えなくなったら……
今農業の現場では、基準改定により昔からある農薬が次々に禁止になって、安全基準を満たした新しい農薬がそれに置き換わってきています。
グリホサート系やネオニコチノイド系の農薬も、デマも散見されているとはいえ、いずれ使用が制限されていくかもしれません。
もしもグリホサートとネオニコチノイドが使えなくなったらどうなるか?
僕のナス栽培は変わらないでしょう。
グリホサートは今でも使用しなくても困りませんし、代替除草剤に変えるだけです。
僕はハウスの面積も少ないし、除草作業に経費も時間もあまり取られないので、特に困らないと思います。
ネオニコチノイドは天敵昆虫やハチに影響が出てしまうので、現状でも定植直後に1回使うか使わないかくらいです。
その一回を他の農薬に変えても、特に問題はありません。
ただ今すぐに禁止されてしまうと、影響が出てしまう作物の農家もいます。
農薬登録にはかなりの時間がかかるので、この2つに置き換わるような新農薬が出てくるまでかなりの時間がかかります。
農薬に対して不安が消えない消費者の方もいるかと思いますが、なるべく農薬を減らす努力は農家全員がしていることは理解していただきたいです。
収まらない農薬デマ
さらに僕が懸念していること。
それは、グリホサートとネオニコチノイドが使用禁止になっても、農薬への批判が収まらないことです。
儲かるネタを活動家が手放すはずがないので、農業デマはなくならないでしょう。
活動家は使用禁止の既成事実を大々的に喧伝して、さらに要求を高めてくるでしょう。
間違った知識で世論が形成されて農薬を批判されると、現場の農家の圧迫につながります。
今でも農薬に対する偏見を感じているのに、さらに間違った偏見を持たれると農業がますますやりにくくなってしまいます。
消費者の方は、活動家のデマを鵜呑みにしないでください!
正しいリスクを知って、正しく怖がることが大事です。
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