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Vol.6 養鶏農家が「国産鶏肉と外国産鶏肉」問題を語る【農家の本音 〇〇(問題)を語る】

農家の声

和歌山の養鶏農家・古田雄也です。おかげさまで鶏肉は2012年を境に豚肉を抜いて日本で最も消費量の多い食肉となりました。健康意識の向上に加え、豚肉・牛肉と比べて比較的安価なことも要因と考えられます。今回は「安全性」「美味しさ」「品質」について外国産鶏肉と国産鶏肉の比較をしていきたいと思います。

外国産鶏肉も安全

外国産の鶏肉は国産の鶏肉に比べ安価なので、「薬漬け」や「劣悪な飼育環境で育てられている」など悪いイメージを持たれがちです。しかし日本の食品安全基準は厳格であり、輸入される鶏肉もその基準を満たしているので安全です。上記に記した悪いイメージについては全くのデタラメと言えます。様々な物価が上昇している現在、消費者の皆さんは安くて安全な外国産鶏肉を選びがちではないかと思います。生産者になる前の私も価格の安さから外国産の鶏肉を購入していました。

なぜブラジル産鶏肉は安いのか

外国産の鶏肉が安くなる要因として大きく二つあります。一つ目は人件費です。月給で比較すると日本の平均月収は36.9万円、タイの平均月収27.352バーツ(約10.6万円)、ブラジルの平均月収2.250レアル(約4万円)となっています。同じ鶏を育てるにも人を雇う費用は、約3倍から10倍程度日本の方が高いのです。

二つ目は飼料代です。タイは自国での穀物生産が制限されているので飼料の一部を輸入に頼っており、飼料コストがかさむため、日本と比較してもそれほど差がつきません。一方、ブラジルは大規模な穀物生産国であり、自国で飼料の原料を生産しているため、飼料コストは日本、タイに比べると比較的低くなります。そのほか、光熱費、地価など複数の要因により外国では鶏肉の生産コストが低くなるので、輸送で多少費用がかかっても国産より外国産の鶏肉の方が安くなります。

養鶏農家が「国産鶏肉と外国産鶏肉」問題を語る

国産鶏肉と外国産鶏肉の比較

まず安全性について、日本では国産鶏肉の品質管理には徹底したトレーサビリティシステムが取り入れられています。生産者から流通、販売までの経路が明確になっており、鶏肉の品質や安全性を追跡、管理することができます。これに対して、他国産の鶏肉は生産基準や規制が日本と異なる場合があります。品質管理の面では、国産鶏肉の方が優れていると言えます。

また近年、畜産物に投与される抗菌薬が薬剤耐性菌を増殖させているとの主張が問題となっていますが、畜産物に使用されている抗菌薬の60%近くはアメリカ、中国、ブラジル、オーストラリア、インドで使用されています。国内での鶏飼育において、抗菌薬入りの飼料は入雛して雛のうちしか食べません。出荷までに鶏が食べる餌の総量の中ではごくわずかです。

次に美味しさについてです。鶏肉の臭みはデカジナールという成分が関係しており、国産鶏肉は外国産のものに比べてこの成分が少なくなっています。また、鶏肉らしい風味をもたらす、香気成分のヘキサナールの含有量については外国産の鶏肉よりも、国産鶏肉の方が多くなっています。その結果、国産鶏肉は臭みが少なくクリーンな味わいで、より鶏肉本来の風味を楽しむことができます。

また外国産の鶏肉は冷凍輸送が多く、スーパーに並ぶのは解凍された鶏肉です。一度冷凍し、解凍するとどうしてもドリップが多くなります。ドリップが多くなるということは旨味、栄養素がお肉の外に逃げてしまっているということなので、国産鶏肉のチルドと比較した際に味わいは劣ると言えます。

最後に品質についてです。国産鶏肉の最大の魅力は鮮度にあると考えます。国内処理により、生の新鮮なまま消費者の元へ鶏肉が届く。冷凍しないことによりドリップが少なく旨味、栄養素の流出も少なくなります。鶏肉の栄養素の中で特筆すべき栄養素はアンセリンとカルノシンという栄養素です。これらは外国産よりも国産チキンに多く含まれており、特にムネ肉では高い値が示されています。アンセリンは尿酸値を下げる機能を持ち、カルノシンは体のサビから守り、生活習慣病を予防する効果があります。

仮に冷凍したとしても、国産鶏肉は外国産に比べ鮮度の低下が緩やかであるため、品質低下はしにくく保存性は高いと言えます。

まとめ

以上のことから、国産鶏肉は安全性(品質管理)、風味・鮮度、栄養価の面で外国産鶏肉より優れていると言えます。鶏肉は焼いたり茹でたりする調理方法によって異なる風味が楽しめます。胸肉は茹でる、もも肉は焼くことにより鶏肉らしさが強くなり美味しく食べることができます。国産鶏肉ならではの風味や食感は日本の一般的な鶏肉料理にも合致していると思います。

国産の鶏肉を消費することは地域経済の活性化にもつながります。地元の養鶏農家や関連産業を支えることで、地域の雇用や農業の発展に寄与することができます。地域の生産者さんを応援しながら、美味しく食べることができる質の高い国産鶏肉を選んでもらいたいと国産鶏肉業者の一員である自分はそう思います。

 

【農家の本音 〇〇(問題)を語る】記事一覧

筆者

古田雄也(養鶏農家)

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