会員募集 ご寄付 お問い合わせ AGRI FACTとは
本サイトはAGRI FACTに賛同する個人・団体から寄付・委託を受け、農業技術通信社が制作・編集・運営しています

国会オーガニック議員、真冬の衆院選に消ゆ【オーガニック問題研究会マンスリーレポート15】

コラム・マンガ

あらゆる意味で日本中を揺るがした真冬の衆院選ですが、物価高対策や社会保障制度をめぐる切迫した争点の陰で、実は「オーガニック問題」の観点からも幾つかの象徴的なトピックがありました。

  • 「オーガニック給食を全国に実現する議員連盟(以下、給食議連)」事務局長を務める衆院議員の山田勝彦氏(長崎2区)が、中道改革連合から出馬し落選、議席を失う。
  • 同「給食議連」共同代表を務めていた元参院議員の川田龍平氏(千葉7区)が、反ワクチン陰謀論政党「減税日本ゆうこく連合」から出馬するも落選、国会への返り咲きならず。
  • 「日本人ファースト」などの政策を掲げ、25年夏の参院選で躍進した参政党が自民・中道に次ぐ190名もの候補者を立てるが、小選挙区では全員落選。また、党公式サイトに「健康な精子と卵子を育てることで少子化対策も実現できるように、オーガニック等の安全な学校給食と食育を推進」と掲げていたことが物議を醸す。

結果として見えたのは、ポピュリズム色の強い一部野党とともに埋没してゆく「オーガニック」の姿でした。

山田勝彦氏(長崎2区/中道改革連合)

山田勝彦氏の父、正彦氏は民主党政権時代に農水大臣を3カ月ほど務めたものの、2年後には民主党から除籍処分を受け、新党を結成。しかしその後の選挙では一度も当選することなく、13年参院選での落選を最後に、農業と食の誤情報に基づく政治活動へと傾倒していきます。

その実態と悪影響についてはAGRI FACTの各所でも厳しく指摘され続けてきた通りですが、地元・長崎で政治家を志した息子の勝彦氏もまた、父の地盤もろともこれらの活動スタイルまで忠実に受け継ぎ、支持固めに利用してきました。

ただ、少なくとも今回の衆院選に関しては、その主義・主張を完全に封印していたようです。公式サイト上の「重点政策」にも、政見放送にも、オーガニックや食の安全をめぐる政策があらわれることはありませんでした。「日本の食と農を守る!」と題したショート動画(※1)でさえも、食品物価高対策としての消費税減税や、生産者への直接支払い制度について触れているだけで、もはやわざと避けているのではないかと感じるほどです。

選挙自体が異例の超短期決戦であったこと、中道改革連合への合流を決めたことから、主要争点に特化せざるを得なかった事情はあるのかもしれませんが、いずれにせよ「給食議連」事務局長の「山田2世」が議席を失った事実は、一部の運動家やロビイストにとって少なからずダメージになったのではと思います。

やや不思議に感じるのは、公式の発信を見る限り、正彦氏が勝彦氏を表立って支援している形跡が発見できなかった点です。後述するゆうこく連合の川田龍平氏に対しては、千葉県まで応援演説に駆けつけたにも関わらず、です。

川田龍平氏(千葉7区/減税日本ゆうこく連合)

一方の川田氏は、立憲民主党を離れ、筋金入りの反ワクチン陰謀論政党から出馬したためか、山田勝彦氏とは対照的にフルスイングで信念に振り切った選挙活動を展開していた点が印象的でした。応援弁士の顔ぶれを見るにつけ、本当に当選する気があったのだろうかと訝しく思うほどです。

  • リチャード・コシミズ氏:自称ジャーナリスト。著書に『救世主ウラジーミル・プーチン』『mRNAワクチン大虐殺生き残りマニュアル』『3.11同時多発人工地震テロ』『新型コロナテロと米国大統領不正選挙: ディープステート裏社会の最後の悪足搔き』他。
  • 林千勝氏:自称近現代史研究家・ノンフィクション作家。反ワクチン運動家。WHOから命をまもる国民運動共同代表。著書に『世界で動きだす国民運動 プランデミックの衝撃 WHOの大罪 トランプ圧勝で仕組まれたパンデミックが明らかになる』他。参政党の勉強会にも度々登壇。
  • 森田洋之氏:内科医としてクリニックを経営、医療経済ジャーナリストを自称。衆院選では「減税日本ゆうこく連合」への強い支持を表明。共著『ルネサンスvol.0 もうだまされない マスコミが触れない現代社会8つの嘘』では、アイヌへの悪質なヘイトスピーチを繰り返す小野寺まさる氏や、地球温暖化懐疑論者の杉山大志氏らと名を連ねる。
  • 和田秀樹氏:精神科医、作家。Wikipediaによれば2022年だけでもほぼ毎週ペースで47冊の書籍を出版しているが、「血圧は200mmHgを超えても良い」「高血圧でも減塩は不要」など、根拠のない過激な主張をおこなう。自身のクリニックでは保険適用外の高額なアレルギー検査を提供。

もはや陰謀論と疑似科学のデパートの様相(※2)ですが、これに名を連ねて「オーガニック給食運動」に関わる人々も、川田氏にエールを送っていました。

そのうち「NPO法人 めだかの学校」理事長の中村陽子氏はオーガニック給食運動の中心的人物のひとりとして各地で講演活動などをおこない、「農薬が発達障害増加の原因」と主張し続けています。

ここで、同じくオーガニック給食運動の仕掛け人とも言える山田正彦氏の応援演説の内容を確認しておきましょう。2月6日、流山おおたかの森駅での街頭演説に駆けつけた山田氏はマイクを握るなり「一番大事なこと」として「発達障害の急増は食が原因」との持論を展開し、「子供たちの命、健康を守るために」川田氏への支持を呼びかけます。(※3)

それを受けて川田氏は「国会議員の毛髪から除草剤グリホサートが検出された」というエピソードを紹介しながら、「農薬や食品添加物こそが国民の健康を阻害し、病気の本当の原因になっている」と息のあったレスポンスを披露しました。

これらの主張は多くの誤りを含むだけではなく、当事者への無理解や偏見・差別を助長するとして、川田氏、山田氏ともに過去何度か手痛い「炎上」を経験しているはずなのですが、今に至っても全く考えを変えていないとわかります。

このような人々が官公庁や地方行政を巻き込んだ「オーガニック給食運動」の中核を担ってきたという事実に、あらためて戦慄するばかりです。

参政党

190名もの候補者を擁立しながら小選挙区で全員落選した参政党ですが、今回の選挙期間中には党公式サイトに「オーガニック給食が健康な精子と卵子を育て、少子化対策になる」とする幾重にも問題のある文言が掲載されていたことが話題となりました。

単に根拠がないだけではなく、「より純粋で汚染のない人間こそが優れている」といった優生思想にも容易に直結し得る点において悪質性が高いと言えるでしょう。

参政党公式サイト 具体政策一覧〜政策カタログ〜(令和5年7月 現在)より

参政党前代表の参議院議員・松田学氏は投開票日直前のラジオ番組でこの点を問われた際に「必ずしもオーガニックだけで少子化対策に繋がるとは考えていない」と回答しお茶を濁していますが、同じ番組内で「同性婚の推進を仕掛けているのは日本の伝統破壊を目論むグローバル勢力」と語るなど、党政策の根本に誤情報と陰謀論が根付いていることが再確認される機会となりました。(※4)

また、「健康な精子と卵子」に留まらず、最新の政策集でも

  • 有機栽培(自然栽培)面積目標25%を15年前倒し(2035年に達成)
  • 学校給食の有機食材使用義務化
  • 化学物質や食品添加物を削減した給食(有機推奨)
  • 有機JAS認証の基準を変更

など、カッコ付きの「オーガニック給食運動」と親和性の高い主張が並んでおり、国会のみならず参政党の地方議員が確実に増加している情勢も踏まえると、今後の影響が懸念されます。

参政党公式サイト 参政党の政策 2 食と健康・環境保全(2026年1月31日 更新)より

オーガニック(反ワクチン)議員や政党の退潮が各地で見られたことから、ひとまずこれらを政治利用するトレンドは後退したようにも見えるのですが、選挙戦終盤になって高市総理が「食料自給率100%を目指す」と荒唐無稽な発言を始めた点は、今後新たな懸念材料となるかもしれません。高市氏の周辺には、藤井聡氏(堤未果氏との共著『ヤバい“食” 潰される“農” 日本人の心と体を毒す犯人の正体』を出版するなど、ゆうこく連合や参政党とも親和性の高い主張をおこなう)のような問題人物も存在するためです。引き続き、注視する必要がありそうです。

 

参考

(※1)日本の食と農を守る!(山田カッチャンネル)
(※2)減税日本の河村たかし氏、流山市議会議員のうた桜子氏(元ママエンジェルス。反ワクチン政治団体「チーム日本」より出馬)等からも応援演説を受けているほか、SNS等では日野市議会議員の池田としえ氏、医師の高橋徳氏、Trilliana 華氏、マルチビジネスを展開する「政治系YouTuberママ」エリザベス氏(いずれも反ワクチン陰謀論を展開)、またトランスジェンダーへの差別発言やノーマスクの主張をおこなう自称環境活動家の谷口たかひさ氏からも応援メッセージが寄せられています。
(※3)【いのちを守る川田龍平】#山田正彦 元農水大臣 #川田龍平 流山おおたかの森駅 2026.2.6
(※4)【衆院選2026】各政党の幹部・議員との質疑まとめ(TBSラジオ)

 

【オーガニック問題研究会マンスリーレポート】記事一覧

筆者

熊宮渉(ダイアログファーム代表)

 

 会員募集中! 会員募集中!

関連記事

記事検索
Facebook
ランキング(月間)
  1. 1

    Vol.34 参政党の炎上案件で知名度爆上がりのジャンボタニシ。どうしてこうなった!?【不思議食品・観察記】

  2. 2

    参政党の事実を無視した食料・農業政策を検証する

  3. 3

    子供達のためにオーガニック推進に立ち上がった「カッコいい」市長名鑑③【オーガニック問題研究会マンスリーレポート14】

  4. 4

    Vol.6 養鶏農家が「国産鶏肉と外国産鶏肉」問題を語る【農家の本音 〇〇(問題)を語る】

  5. 5

    ゲノム編集トマトの販売停止要求に正当性・妥当性はあるのか

提携サイト

くらしとバイオプラザ21
食の安全と安心を科学する会
FSIN

TOP
会員募集中
CLOSE
会員募集中