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農業に関するデマで打線組んでみた!〈パート36〉 【ナス農家の直言】
猛暑で農作業が厳しい中でも農業デマは続々とわいてきます。
放置してはダメ!
ということで今回も、
「農薬に関するデマで打線組んでみた〈パート36〉」を
農家の私ナス男が紹介します。
1.(中)自然由来のもので消毒すれば無農薬だ!
「化学農薬から自然由来のものに変えろ! そうすれば農家は無農薬になるだろ!」
農薬取締法の改正により、自然由来のものであっても、農薬目的で使用すれば農薬扱いになります(特定農薬を除く)。
納豆菌や木酢液でも、病害虫の防除目的で使えば立派な農薬です。
農薬不使用とは表記できませんので、注意してください!
2.(右)農薬を使わなければ、JAに出荷できない!
「JAは無農薬農家を差別している! 農薬を使わなければ出荷できない!」
なんていうXのポストを見かけましたが……
そんなことはないはずです。
少なくとも私が知っているJAは農薬を使っていなくても取り扱いができます。
農薬の使用の有無で出荷の判断をするのではなく、出荷規格に合った野菜かどうかで出荷できるかが決まるはずです。
無農薬栽培農家がJAに出荷して他の農家の野菜と同じ値段になってしまえば利益は出ないから、出荷がほとんどない、というのが正しい現状だと思います。
3.(左)農薬は外資メーカーに支配されている!
「日本の農薬業界は外資メーカーに握られている!」
外資メーカーの陰謀は典型的な陰謀論の一つです。
農水省がまとめている農薬製剤市場の企業別シェアでは、上位10社のうち、
外資系メーカーのシンジェンタ(1位)とバイエル(3位)で約17%、それ以外は日本メーカーが占めています。
シェアを握られているとは言えず、むしろ国内企業が奮闘していると言えるのではないでしょうか。
企業間で健全な競争をしてもらって、農薬の品質や価格により反映されれば農家としては嬉しいです!
4.(一)種は除草剤とセット売りされる!
「遺伝子組換えと除草剤をセット売りされたら、日本の農業は安全でなくなる!」
これは種苗法改正の議論が活発だった時に出てきたフレーズです。
遺伝子組換えの安全性はここでは置いておいて。
種(タネ)と除草剤をセットで売っている所は、今の所聞きませんね。
もし売っている所を知っているのであれば、ぜひ紹介してください!
栽培戦略を考慮して、買うかどうかを積極的に検討したいです!
5.(二)オーガニックで「免疫力」アップだ!
これもよく聞くフレーズですね。
有機栽培野菜を食べれば免疫力がつくという意味でしょうが、根拠はありません。
そして有機栽培野菜であろうが慣行栽培野菜であろうが、野菜を食べれば健康にいいのは学校の教科書にも載っています。
そもそも、活動家が言う「免疫力」が強い状態とはどういう状態ですか?
なんとなく健康にいいというイメージだけで判断することは避けたいですね。
6.(捕)黄身の色が濃い卵は薬物まみれだ!
「鳥に抗生物質を打っているから濃い黄色になるんだ!」
という、低レベルの意見を見かけました。
いやいや、卵の色は餌の配合に依るんです。
鶏のエサの主成分はトウモロコシなので、黄身の色は基本的には薄い黄色ですが、
エサに赤い色素のものを混ぜると、黄身の色は濃いオレンジ色に近づきます。
どこに抗生物質や農薬が関係しているのでしょうか?
農薬憎しが度を過ぎると、全てがねじ曲がって見えてしまうのでしょう。
7.(三)種にも農薬がついている!
「買ってきた種が青色だった! キモイ!」
「種子消毒がされている種は危険だ!」
種子についている青色はチラウムのことだと思いますが、当然ADI(一日摂取許容量)の基準値内です。
メーカーもきちんと説明していますし、それに対してあたかも隠された真実のような煽り方、止めてください。
それならばジャンボタニシの卵はショッキングピンクなので、駆除しないといけません!
家庭菜園をしたことがあれば知っている事ですが、種子消毒されている表面の青色は、発芽するときに剥がれますよ?
自然な色でないことが問題だというのであれば、完熟したゴーヤの種は赤色なので危険ということになります。
まずは家庭菜園を初めて、農業を少しでも知ることから始めましょう。
8.(遊)肉は出荷前(屠殺)に大量の抗生物質を打っている!
「出荷前に大量の抗生物質を打っている! 危険だ!」
という、ワクチン憎しが伝わってくるアカウントがありました。
いやいや、出荷直前に打っていたら、成分が残留してしまいますよ?
肉に関わらず野菜でも、農薬成分が基準を超えて残留している農産物を出荷した農家は、出荷停止という責任を負い社会的な信用を失います。
ワクチンや抗生物質、農薬がとにかく嫌だということでしょうけど、それならば食べられる食材はなくなりますよ。
過剰すぎる安心安全信仰をやめるべきです。
9.(投)お茶を飲み続けると病気になる!
「お茶にはネオニコチノイドが使われているから危険だ!」
と、お茶メーカーやお茶農家を敵に回す発言をしている人もいます。
毎回説明していますが、農薬とがんなどの病気の増加に相関はあっても因果関係はありません。
そしてお茶の産地では、寿命が平均以上あるというデータがあります。
デマに惑わされていたら、おいしいお茶も飲めなくなっちゃいますよ!
まとめ
次々に生まれる農薬デマに関して、一般の消費者が判断するには難しいデマも増えています。
まずは情報を多角的に得て、特定の人の意見に傾倒しすぎないことです。
バランス感覚を大事にして、適切に怖がることが大切です。
筆者ナス男(ナス農家&サイト「農家の決断」管理人) |