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Part2 商業生産の実現に向けて-日本で遺伝子組換え作物を栽培するにはどうすればよいか?-その1【遺伝子組換え作物の生産とその未来 】

特集

遺伝子組換え作物とは

私は、1996年に日本で最初の遺伝子組換え(GM)作物の認可の取得に携わってからずっとGM作物に関わってきた。

GM作物の農業上のメリットは大変大きい。雑草や害虫防除による減収からの回復、除草剤や殺虫剤の使用量の削減、労働力の削減、収益の増大、環境にやさしい不耕起栽培の実現などのメリットが1996年の商業栽培開始以来、世界で実証されてきた。このように生産性の向上や環境保全に役立つGM作物を日本で栽培し、日本の農業を発展させたいという強い思いを私は持っている。

(左)非遺伝子組換え(中央)害虫抵抗性遺伝子組換え(右)非遺伝子組換えに殺虫剤を散布 写真提供/バイエルクロップサイエンス(株)(左)非遺伝子組換え(中央)害虫抵抗性遺伝子組換え(右)非遺伝子組換えに殺虫剤を散布
写真提供/バイエルクロップサイエンス(株)

生産者にGM作物の話をすると、「そんなメリットがある作物ならやってみたい」「自分のところでやったらこんなメリットが考えられる」といった意見をお聞きしてきた。例えば、北海道のテンサイの生産者は、除草剤耐性テンサイを栽培した場合の試算をし、労動力の削減により現在の人数で栽培面積を2倍にできること、かつ10a当たりの利益を、現在の従来品種栽培で得られる1万6285円から、GM除草剤耐性テンサイ栽培では2万7590円にできると述べていた。これは非常に大きな生産性の向上であり、生産者にとってはとても魅力があるという意見であった。

GM作物は生産者にメリットがあるが、消費者にはメリットがないとよく言われる。それは本当であろうか。ダイズで考えてみよう。日本は、これまで毎年約300万tのダイズを輸入している。25年以上前は世界一のダイズの輸入国であったので、主要輸出国の米国は日本向けに品種を開発してくれていた。しかし、中国が1996年からダイズの輸入を本格的に始める。1999年には中国の輸入量が日本を上回りはじめ、現在では1億t以上に達する。中国がダイズの輸入を始めたのは、生活の向上による油や肉の消費量が多くなったためで、ダイズは、搾油して油を食用とし、油かすを家畜の飼料に利用している。中国がこんなにたくさんのダイズを輸入しているのに、日本がまだ輸入を続けられるのは、世界のダイズの生産量がGMダイズのおかげで大きく伸びたことによる。つまり、日本の食糧安全保障にGM作物が大いに貢献しており、これは消費者にとってはかけがえのないメリットである。

こうしたことから、私は日本でもGM作物を栽培して農業の生産性を向上すべきと考えており、私が生きている間に何としてもGM作物の栽培を行いたいという夢を持って活動している。

なお、GM作物について詳細を知りたい方は、私が幻冬舎より出版した『もしもがんを予防できる野菜があったら「遺伝子組み換え食品」が世界を救う』(写真)をご覧いただければ幸いである。

もしもがんを予防できる野菜があったら「遺伝子組み換え食品」が世界を救う

 

※『農業経営者』2022年11月号特集「日本でいよいよ始まるか! 遺伝子組換え作物の生産とその未来Part2 商業生産の実現に向けて」を転載

【遺伝子組換え作物の生産とその未来 】記事一覧

筆者

山根精一郎(株式会社アグリシーズ代表取締役社長)
1947年生まれ、東京都出身。東京大学理学部生物学科植物課程卒業、東京大学大学院農学部植物病理学博士課程修了。76年に日本モンサント(株)に入社し、その後、遺伝子組み換え技術の第一人者として第一線で活躍。02年に同社の代表取締役社長に就任。17年3月に同社を退職し、同年4月に(株)アグリシーズを設立。

 

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