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農業に関するデマで打線組んでみた!〈パート42〉【ナス農家の直言】

農家の声

年明け早々、突如決まった解散総選挙。各政党の農業政策がテレビ・新聞で大々的に報道されることは少ないが、SNS上では某政党支持者と思われる人たちが流す農業デマをめぐって、農業インフルエンサーとのバトルが繰り広げられている。国政選挙の前後は農業デマが飛び交いがち。そこで今回も、
「農業に関するデマで打線組んでみた!〈パート42〉」をテーマに、
農家の私が農業に関する誤解や偏見を正していきます。

1.(中)地域での一斉防除は、農薬使用の強制だろ!

JAが農家に農薬を強制することはないと、何度か私の記事では紹介しています。
ただし、地域の一斉防除というのは存在します。
「カメムシが大量発生しているので、防除を徹底しましょう」
といった町内放送がある地域もあるようです。
ただこれは、農薬使用の命令ではありません。「注意喚起」です。

産地を守るためには、地域協同の一斉防除で害虫の密度を減らす必要があるからです。
ドローンなどで広域での空中散布を行う場合には、事前の計画の提出や地域への情報提供などを行ったうえで実施されます。

カメムシにやられて中身が変色した果実を買ったら、損した気分になるでしょう?
変色したコメが混じっていたら、損した気分になるでしょう?
適切な使用方法で農薬を使用すれば、安全性に何ら問題はありません。
消費者の方は今まで通り、果実やコメをスーパーや農家から購入してください。

2.(二)カメムシには家庭用の自然由来の食器用洗剤が効く!

「家庭用の食器洗剤を希釈して使うと、カメムシがいなくなった!」
「自然由来の石鹸だし、雨で流れるから安心安全!」
という投稿を見ました。

農家は栽培中に自然由来の食器用洗剤を使うことはありません。
なぜなら何度も説明していますが、農薬登録のない使用は、農薬取締法に違反しているからです。
さらに付け加えると、自然由来だからと言っても安全とは限りません。

家庭菜園で自分で食べる野菜であればまだしも、農家に無登録のモノの使用を強いるのは止めましょう。

3.(右)アレロパシーを利用して雑草を防げ!

アレロパシーとは、植物が自ら化学物質を葉や根、茎などから放出して、他の植物の発芽や成長に影響を与える現象のこと。

上手に利用すれば、雑草の抑制や害虫の予防など、農薬に頼らず自然の力を生かした栽培が可能になります。

ヘアリーベッチは土にすき込んで肥料として使う緑肥作物としてだけでなく、シアナミドという成分雑草の発芽を抑える働きがあることでも知られています。

コンパニオンプランツや、草生栽培にも通ずるものがありそうです。

「植物の力で雑草を抑制できる技術があるなら、除草剤なんか使うな!」
と思われるかもしれませんが、そう簡単ではありません。

①経済性、効率が悪くなる。

例えばキャベツの畝間の雑草に困っていたとして、畝間にヘアリーベッチを蒔いたとします。おそらく発芽まではしますが、中耕という作業があり、根張りを良くするとともに、雑草の根も切る作業です。あってもなくても一緒で、それならアレロパシーを狙って経費をかけなくてもいいとなります。

②相性が悪い作物同士もある。

例えば、キャベツとゴマを一緒に植えると、キャベツの育ちが悪くなるという報告も。
「肥料分を作物以外に吸われて、雑草は抑えられたけど、作物の生育も抑えられてしまった!」という結果も十分考えられます。

家庭菜園であれば、失敗も小さく抑えられますが、農業ではそうはいかないです。
アレロパシーなどの技術も、考慮されたうえで、現代の農業は作業体系がなされているのです。

4.(三)〇ちゃん農法は世界を救う!

「微生物の力を借りれば、無農薬無肥料で野菜は育つ!」
という農法の提唱者は、農薬や肥料を一切使わずとも野菜は作れると喧伝しています。
本当に微生物の力を活かすだけで無農薬で栽培できたら、慣行栽培農家にとっても画期的なことですが……。

その微生物農法の本には、
「無農薬のコツは、冬の虫がいない時期に野菜を作ること。虫の出やすい時期は堆肥を作る。」
と書いてあるのです。

いや、微生物関係ないやん!

冬であれば、慣行栽培でも農薬は使いませんよ!
芸能人の方がこぞって〇ちゃん農法を宣伝しているようですが、まずは提唱者の方が農家からの疑問に対して説明すべきだと思います。

5.(左)草生栽培を利用しろ!

「柿やリンゴの畑は、草で覆われているだろ! 耕したり除草剤を使ったりして、地面を裸にするな!」
という意見があるかもしれません。
しかし、草生栽培に向く作物と向かない作物があります。
かくいう私もナスで草生栽培をしたことがあります。

「ナスの根元までヘアリーベッチで覆えば、乾燥も防げるし、肥料も安く済むのでは?」

結果は、収量は微減、作業性は著しく低下しました。
灌水チューブにも絡まってしまい、片付ける時に苦労しました。
現在のナス栽培は、白マルチで覆っていて、効率や収量もいいです。

6.(一)全ての農薬には副作用が記載されている!

「農薬は例外なく副作用が出る可能性がある! だから農薬は毒だ!」
というような主張を展開されている方がいます。
たしかに私の記事でも紹介した通り、SDS安全データシートや農薬のラベルには、使用上の注意書きが書かれています。

間違った使い方をしたら、農薬中毒になる可能性も当然ありますが……、どの注意書きも、正しく使用すれば回避できることです。
ADI=一日摂取許容量すらも下回っている濃度を怖がっていては、もはや食べられるものはなくなります。

「農薬」というワードに過剰反応するの、もう止めませんか?

7.(遊)反農薬反ワクチンのケネディ氏が米厚生長官に就任した!

アメリカ大統領選に出馬したR.F.ケネディJr氏は、食品添加物や農薬、ワクチンなどに関する規制の再検討を主張していました。

加えて、日本の反農薬運動家らが制作したオーガニック給食推進映画に出演し、そこでは農薬企業と戦う英雄として称揚されているようです。
その後トランプ氏の勝利を受けて、厚生長官に就任するわけですが……。

反ワクチン反農薬の同氏の発言に関して、科学者は否定的な意見を返しています。
極端な思想の持ち主が政権入りしているからといって、農薬の安全性や科学が否定されることはないのです。

8.(捕)オーストリアでも、グリホサート反対を唱える政党が支持されている!

オーストリア議会では2019年、除草剤グリホサートの使用を全面禁止する法案が可決されたことがあります。
常に危険な農薬として悪のレッテルを貼られてきたグリホサート……、もし禁止が実現すればEU加盟国初の画期的な措置となるはずでした。

オーストリアの法案はその後、EUに却下されるなどの紆余曲折を経て、最終的には部分的な禁止にとどまり、農業など業務用分野では引き続き使用が認められています。
農業で生計を立てている現場の切実な意見が、反農薬の団体や政治家の主張を退けたのです。

9.(投)JAが横やりを入れて販路を邪魔してくる!

「中間業者の搾取によって、コメの価格が上がっている! だから中間業者を省いて、俺たちがコメを直接視聴者に届ける!!」
としていた某ユーチューバーの計画は、全てが計画通りにはいっていないようです。

①「県の概算金を上回る価格で農家からコメを買い取って、直接視聴者に販売する!」
と意気込んで始めた計画。
しかし概算金が上昇したことにより、5kgで4,660円(送料除く)と、予定よりも大幅に高くなってしまったようです。
5kg5000円を超えるとなると、スーパーで買った方が安い。
これはつまり、中間業者による搾取はなかったということなのでは?

②「JAに目をつけられているのか、50社にアポを取っても精米を断られる!」
という趣旨の発言を動画内でしていますが、この発言には疑問が残ります。
というのも各農家やコメ業者ともに、収穫・精米や備蓄米の対応で多忙のシーズンだからです。
お得意様のコメを精米する予定が入っているのに、いつ撤退するかも分からない方のコメを優先して精米する業者がいるでしょうか?

視聴者の関心を集めたいのか、タイトルも内容も煽り気味なのが気になります。
そこで私からの提案です。
お金があるのであれば、中山間地の農地を集め、自らコメを栽培してみては?
実際に資金を投資して参入したほうが本気度も伝わりますし、今やコメは視聴者の関心のあるワードですからね。

まとめ

農業デマが飛び交う政治・政党活動が活発な時期ほど不安を煽る情報を妄信せず、プロの農家の声に耳を傾けてください。

 

【ナス農家の直言】記事一覧

筆者

ナス男(ナス農家&サイト「農家の決断」管理人)

 

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