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Vol.7 反グリホサート運動の「深層C」=IARCの腐敗ビジネス【日本・世界の「反グリホサート運動」の真相】

食と農のウワサ

AGRI FACT執筆者でもある農業ジャーナリストの浅川芳裕氏が「日本・世界の反グリホサート運動の真相」と題し、オンライン講演を行った(2021年6月20日「食のリスクコミュニケーション・フォーラム2021」第2回)。その中で、浅川氏はグリホサート問題の中心地IARC(国際がん研究機関)の内部と背後で蠢く人たちの腐敗ビジネスに鋭く言及し、食の不安を煽って農業や社会を歪める構造の正体を浮き彫りにした。今回は、Vol.7『反グリホサート運動の「深層C」=IARCの腐敗ビジネス』をお届けする。(Vol.6はこちら

反グリホサート運動の「深層C」
=IARCの腐敗ビジネス

ここまで見てきたとおり、反グリホサート運動最大の根拠は、IARC(国際がん研究機関)の評価、つまり2015年にグループ2A(おそらく発がん性がある)に分類したことです。この評価が科学的に正しいのかどうか、実際の評価プロセスをジャーナリストとして調査・検証してみました。

IARCは、主に人の疫学調査+動物の発がん性実験研究に基づいて評価します。グループ2Aとは、夜間の交代勤務制、赤身肉、65度以上の飲み物などと同じ程度とされています。これはあくまで論文等の定性分析結果をもとに発がん性があるかの根拠の強さ(ハザード評価)を示しているもので、物質の発がん性の強さでも暴露量に基づくリスクの大きさ(リスク評価)ではありません。科学的な厳密性に欠け、どの調査を根拠に選ぶかの「恣意性が強い」分析方法と世界の規制機関や学者から批判されています。

IARCの詳細な評価基準については、以下の記事をご覧ください。

そしてグループ2Aの評価を下したときに世界でもっとも科学的信憑性の高い、5万人以上のグリホサートを使用している農業者の疫学調査をした研究で「グリホサートに発がん性は認められない」という結論の研究がありました。にもかかわらず、この研究を採用せず、別の8つの研究を採用したIARCだけが、他の規制機関と違っておそらく発がん性があると結論づけたのです。

IARCが選んだ8つの研究のすべてが不十分か誤って解釈されているというのがEPA(米国環境保護庁)と米国ロバート・タロン博士などの見解です。しかも8つの中には5万人以上の農家の疫学調査研究より劣る3つの研究が採用されており、グリホサートと非ホジキンリンパ腫(NHL)の関連性を正当化するために引用したというのがEPAと米国ロバート・タロン博士などの分析結果です。基本的に他の研究、科学機関、ドイツ、ニュージーランド、ヨーロッパ、カナダも同様の否定的な見解で一致しています。

ロイター/ケイト・ケランド記者のスクープ記事

ロイター/ケイト・ケランド記者のスクープ記事(審査公表前に「発がん性を否定する」研究を削除)

なぜ評価にあたって重要な論文、研究を引用しないかですが、もともとは入っていたのです。ところが、もともと入っていた発がん性を否定する研究が審査公表前に削除されてしまった。その結果、ドラフトの段階では発がん性の裏付けなしという評価になるはずが、公表された内容を見ると発がん性の裏付けありになっている。その間に10箇所の変更点がありました。もともと腫瘍を起こさないという研究と、腫瘍を起こすという研究を差し替え、がんとの関連性の根拠を強める統計処理を採用していたのです。これをスクープしたのがIARCのドラフトを入手したロイターのケイト・ケランド記者でした。

Vol.8へ続く

【日本・世界の「反グリホサート運動」の真相】記事一覧

筆者

浅川芳裕(農業ジャーナリスト、農業技術通信社顧問)

編集担当

清水泰(有限会社ハッピー・ビジネス代表取締役 ライター)

 

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