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グルテン過敏症を引き起こす説の非科学性を糺す!

コラム・マンガ

グルテン過敏症の原因はグリホサート?

除草剤ラウンドアップの主成分グリホサートは、世界の規制機関によってその安全性が証明されています。しかし、米国のセネフ博士とサムセル博士は、グリホサートが多くの病気の原因であると強硬に主張しています。グリホサートはグルテン過敏症と関係があり、それが生殖障害と関連している、というのも彼らの主張の一つです。

グルテン過敏症または非セリアック・グルテン過敏症とは、グルテンというタンパク質を含む食品を摂取することによって引き起こされる腸の病気です。グルテンは小麦粉を練ったときにできる、粘着力や弾力を出す成分で、麺類やパンの歯応えや柔らかさの元になるものです。グルテン過敏症の患者はグルテンを含む食品を摂取すると、胃痛や吐き気などの症状が出ます。

誤った結論を導く三段論法の希薄な前提

グリホサートがグルテン過敏症を引き起こすと主張するセネフ博士とサムセル博士の仮説は、次のような三段論法で導き出されています。

理由1:グリホサートは消化管内の微生物に影響する可能性がある
理由2:グルテン過敏症患者の消化管内細菌には変化がみられる
結論:消化管内細菌を変化させるグリホサートはグルテン過敏症を引き起こす

結論を導き出す前提となる理由1の「グリホサートが消化管内の微生物に影響する可能性」の根拠としては「家畜や実験動物の消化管でグリホサートがクロストリジウム属の腸内細菌を増やす」という内容の科学論文が存在します。クロストリジウム属の腸内細菌は悪玉腸内細菌と呼ばれるものなので、おそらく彼らはこの論文を根拠にしているのでしょう。しかしこの論文に反論する研究もあり、科学的に検証され尽くした定説とはとても言えません。

また、動物実験の結果はそのまま人間に適用できるものではありません。さらに、近年の研究ではまだ動物実験の段階ではありますが、クロストリジウム属は単純な悪玉ではなく、そのうちの17種に炎症抑制効果があることもわかっています。

三段論法の前提が可能性に過ぎない希薄な根拠なので、結論も曖昧なものにしかなりえません。そもそもグルテン過敏症自体が診断の難しい病気で、発症のメカニズムもよくわかっていないのです。病気の定義自体が「グルテンを食べることによって症状が出て、食べないことによって改善する患者のうち、セリアック病と小麦アレルギーを除いたもの」であり、「他の病気ではない」という否定の形でしか診断できず、医学会でも論争の多い病気です。希薄な根拠でグリホサートを原因として結び付けるのは非科学的です。

化学物質の原則を無視した主張を展開

この段階で曖昧なのに、彼らはさらに主張を発展させます。グルテン過敏症患者は非ホジキンリンパ腫と不妊、流産、先天異常などの生殖障害のリスクが増大しているので、グリホサートはそれらの病気にも関係している、というのです。非ホジキンリンパ腫は悪性リンパ腫のことで、リンパ系の癌の一種です。しかし、市販されているラウンドアップを用法用量を守って使用した結果、環境中に残留する「微量」のグリホサートが、これらの病気を引き起こすことを示した研究はありません。

確かにグリホサートを含む除草剤と非ホジキンリンパ腫や先天異常等の生殖障害の関連性を示す研究はあります。しかし、その研究は規制値を上回る多量のグリホサートが投与されたもので、すべての化学物質にあてはまる「用量作用関係の原則」(多量なら危険、微量なら安全)を無視しています。人体に必須の食塩(塩化ナトリウム)も200g食べれば死ぬことがあります。

動物性タンパク質、精製糖、でんぷん、脂肪の多い加工食品の摂取という欧米型食生活によって、大腸炎など消化管の病気が大幅に増加したのは事実です。グリホサートとは関係ない食生活の変化が消化管内に存在する微生物を変化させ、胃腸病を引き起こしている可能性を否定できません。したがって、グリホサートがこれらの病気の原因になるという三段論法の仮説は、前提となる事実が確定していないこと、他の可能性を排除できない強引な論理展開から、科学的な根拠なしと判断されます。

参考

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