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【コラム】がんとの因果関係に科学的根拠なし!
波紋を呼んだグループ2A分類
グリホサートの発がん性が取り沙汰されるきっかけは、IARC(国際がん研究機関)が2015年に公表したある見解でした。WHO(世界保健機関)の一機関であるIARCが発がん性に関する独自評価を見直し、グリホサートをグループ2Aに分類したことです。このグループ2Aが「ヒトに対しておそらく発がん性がある」というカテゴリだったことから、グリホサートの安全性に対する疑義が世界的に広がりました。
発がんリスクの高さを分類したものではない
しかしながらIARCの分類は、IARCが実験などを実施したわけではなく、「科学的根拠の強さ」、わかりやすく言うと「発がん性が疑われると結論付けた論文がある」と言っているだけです。論文の数が一番多いものがグループ1、その次に多いものをグループ2に分類しているということです。決して実際の発がんリスクの高さ(発がん性の強さの証明)を分類したものではありません。
結論から言えば、グリホサートとがんの因果関係に、科学的な根拠はまったくありません。これが世界中の公的な安全規制機関に共通した見解です。
では、IARCが主張している内容と、各国の規制機関との見解はどこが異なっているのでしょうか。その詳細について説明します。
IARCの3つの主張
IARCが主張するグリホサートによる発がん性の根拠として参考にした論文にはどのようなものがあるのでしょうか。簡潔にまとめると、以下の3点となります。
1 非ホジキンリンパ腫 (がんの一種)の発生に関わっている
2 動物実験で発がん性がみられた
3 DNAや染色体への損傷、酸化ストレス (がんの一因)の誘導がみられた
これらの主張に対し、各国の規制機関は「再現性のある科学的なアプローチ」を基本としてグリホサートとがんの因果関係を検討しました。
再現性とは「誰が、いつ、どこで」実験しても、同じ結果が得られることです。つまり、各国はデータの捏造が不可能な調査を基に、IARCの主張が正しいか否かを検討したのです。
発がんとの相関性を訴えること自体に無理がある
2016年には世界保健機構(WHO)と世界農業機関(FAO)が共同で「グリホサートに発がん性はない」と発表し、IARCの見解を否定しました。
EPA(米国環境保護庁)も、IARCの主張1「非ホジキンリンパ腫 (ガンの一種)の発生に関わっている」に対し、科学的な調査を改めて実施しました。その結果、グリホサートへの曝(ばく)露とヒトにおける発がん性との相関は明らかでない、という結論に至り、その詳細を2017年に公表しています。
欧州連合の政府機関であるEFSA (欧州食品安全機関)が再評価した結論も同様でした。さらにEFSAは、そもそもIARCの主張には裏付けとなるデータが不十分なことから、相関性を訴えること自体に無理があるという見解を述べています。
その理由の一例を挙げます。IARCが採用した論文データは、対象者のグリホサートへの被ばく量だけでなく、曝露したか否かも定かではなく、およそ科学と呼べるものではありませんでした。
データに再現性も優位性もなし
主張2の「動物実験で発がん性がみられた」について、IARCはマウスやラットを用いた実験で、がん細胞の発生が増加したとするデータを根拠としました。
一方で、EFSAはこれらのデータを全て、科学的に否定しています。なぜなら、これら実験データには、「再現性」も「有意性」もなかったからです。実際に提出されたデータを検証してみると、がん細胞の種類やがん細胞が発生した臓器は、グリホサートの有無に関わらず毎回バラバラで、発生した細胞数も自然発生の場合と差がありませんでした。
つまり、IARCの主張は、繰り返し行った実験のなかで、たまたまがん細胞の発生量が多かった事例を「人為的」に選んだに過ぎない、と結論付けました。要は数を打って、偶然当たったボールで物を言うのは科学ではないということです。
完全否定された遺伝毒性
主張3は遺伝子情報へ悪影響 (以下、遺伝毒性)を及ぼす「DNAや染色体への損傷、酸化ストレスの誘導がみられた」に関するものです。
IARCはグリホサートに遺伝毒性があると主張していますが、これも各国の再評価によって、完全に否定されています。なぜならIARCが根拠として採用した論文には、「独自の実験法」で採取したデータしかなかったからです。
これに対し、「世界共通のマニュアルに従った実験法」を使った論文は、いずれもグリホサートに遺伝毒性はない、と報告しています。
悪意をもって実験すれば、たとえ「水」であっても遺伝毒性があるように見せかけることが可能です。このため実験には「世界共通のマニュアル」があります。各国の研究機関はこのマニュアルに従い、捏造が不可能な状況下で採取したデータを根拠にしています。
なお、この試験は日本の食品安全委員会も実施しており、遺伝毒性を同様に否定しています。
世界各国の規制機関が科学的な根拠を基に否定
以上のように、IARCの主張するグリホサートとがんの因果関係は、各国の規制当局の再調査によって公式に否定されています。
各国の研究・規制機関での公式見解の特徴は、再現性のない「非科学的」な根拠を基にしたIARCと異なり、世界共通のルールに基づいた実験法を用い、「科学的」に否定をしていることです。
ここで取りあげた国以外の例えば、ドイツ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの規制当局でも、同様にグリホサートとがんの因果関係を否定しています。
IARCが無視した長期の疫学調査結果
さらにIARCが無視した重要な調査結果があります。それは、米国ノースカロライナ州とアイオワ州でラウンドアップ関連製品を散布していた農業者約4万5000人を対象に1993年から2005年まで長期にわたって実施された疫学調査の結果で、がんになる割合が増えることはなかったという極めて重大な内容です。いかにIARCの判断が恣意的で非科学的なものかを示しています。