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健康フェイクニュースの見分け方

コラム・マンガ

健康関連記事の落とし穴

健康食品などの補完的な健康法や代替医療は、テレビやインターネット、雑誌、新聞などのニュースでよく取り上げられます。そうしたメディアの健康情報を鵜呑みにしてしまう方もいるでしょう。そこで補完代替医療に関するニュースを見分けるポイントをお伝えします。

たしかに健康関連の記事を読むと、健康問題について知ったり、健康に対する意識を新たにすることができます。ニュースの質が高ければ、医学について正しい知識を得ることもできるでしょう。しかし、健康に関するニュースや新説は正確さに欠けることが多く、誤った健康判断につながるリスクがあります。

とくに次のような情報は省略されることがあるので要注意です。
・ほかのアプローチとの比較
・副作用について
・研究結果が偶然生じたものではないかどうか
・研究が動物実験のみではなく、人に対しても行われたのかどうか

重要な詳細が不足している

2011年に、従来のインフルエンザ治療薬であるタミフルと、漢方の麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)と銀翹散(ぎんぎょうさん)の煎じ薬、さらにこれら二つを併用したときの効果を比較する研究結果が報告されました。

このニュースでは、治療薬なしの場合と比べ、併用すると熱が早く下がったことが示されていましたが、解熱が早まったのは11時間だけだったということは述べられていませんでした。またどの治療薬も、咳やのどの痛みなどを改善する効果はみられなかったという点も省略されていました。

副作用についての情報がない

有害な副作用の可能性や、研究結果を裏付けるエビデンスの信用性について、十分に説明されないこともあります。

2010年に、妊娠中に魚油を摂取することについてのニュースが報道されましたが、胃の不調など魚油の副作用については全く触れられていませんでした。

記事全体に問題がある

別のニュースでは、ある研究でビタミンAを摂取した男女は、摂取しなかった参加者に比べて、メラノーマになるリスクが60%低かったと報じました。しかし、問題はこの記事の指摘通り、「リスクの低下は男性よりも女性のほうが顕著だった」ことです。

どういうことかというと、実際の男性のリスク低下の割合は、ビタミンAの効果なのかたまたま低かったのか判断できないほどに小さく、とてもリスクが60%減少するとは言えないものでした。もとの研究論文では、一般の女性がビタミンAを定期的に摂取することで、メラノーマのリスクが35〜90%減少すると見積もられていました。

人間での効果が確認されていない

動物実験のみの研究結果が報道されることもあります。この段階ではまだ人にも効果があるかどうかわからないということについては、往々にして説明されません。

たとえば2010年、ダークチョコレートに脳卒中の後遺症を防ぐ効果があるかもしれないというニュースが報じられましたが、その研究がマウスのみを対象に実験したものだということは述べられませんでした。

健康関連ニュースにみられる矛盾

新しい医学の研究に関する報道は、時として互いに矛盾することがあります。ある健康食品や健康法が体によいというニュースと、別のニュースがそれを否定しているのを目にすることがあるでしょう。

研究論文は次々と発表されていくので、その結果が以前のものと異なるのは珍しくありません。メディアの報道に矛盾が生じるのはそのためです。たとえば、赤ワインには心臓に好ましい効果があることや、赤ワインに含まれるレスベラトロルという成分が乳がんの成長を遅らせる可能性があることが研究で明らかになっています。一方それまでの研究で、どんな種類であってもアルコールの摂取が乳がんのリスクをわずかに上昇させるということもわかっています。こういう矛盾がある場合には、十分な数の研究結果が出たあとの専門家の評価を待つべきです。

信用できるニュースの条件

ニュース記事が正しいかどうかは、記事のもとになっている論文にあたってみないと、なかなかわかるものではありません。しかし次のような場合には、正しい記事である可能性が高いといえます。

・特定の意見や主張を広めようとするメディアの記事ではない
・医学的な知見を理解できるよう訓練を受けた科学記者が書いたものである
・その研究に関わっていない専門家の考えも引用し、研究結果を客観的に捉えて別の視点も示している

補完代替医療報道の特徴

補完的な健康法や代替医療に関する報道内容の特徴について、これまでの調査で以下のようなことがわかっています。

・補完的な健康法は従来の医療を代替するものではなく、従来の医療と併用されるべきだとする
・多くは病気や特定の症状の治療法として紹介される
・可能性のあるリスクについては述べられないため、概してポジティブなトーンで報道されている

偽ニュースサイトの見分け方

2011年4月、米連邦取引委員会は、アサイベリーの「減量」製品の宣伝を目的とする偽のニュースサイトについて、警告を発しました。

典型的な偽「ニュース」サイトには、記者がその製品を数週間使用し、「劇的な」結果が得られたという調査結果が記事として掲載されています。本物のニュースサイトのように見えますが、実際はただの広告です。記者も報道機関も調査もすべて作り物で、作り物でないのは販売サイトへのリンクだけです。

以下のような特徴があれば、偽ニュースサイトである可能性が高いでしょう。

・特定の製品を推奨している
・その製品についてメリットしか言わない人だけを選んでいる
・肯定的な研究結果のみを取り上げている
・販売サイトへのリンクがある
・肯定的なコメントのみが掲載されており、誰でも記入できるコメント欄がない

反対に、独立した専門家の意見が掲載されていたり、研究の限界や副作用の可能性について書かれているサイトは、偽ニュースサイトである可能性は低いと考えられます。

健康フェイクニュースを見分けるためのチェックリスト

メディアが取り上げる健康関連のニュースは、なんらかの研究論文に基づくものがほとんどです。とはいえ、研究結果とその内容から導き出される新説(仮説)には、「定説」になりうるレベルの質の高いものから、そうでないものまでさまざま。見聞きしたニュースが研究結果の全体像を正しく伝えているかどうか、もとになった研究結果の妥当性を判断するには、以下の9項目でチェックしてみてください。

1.人での効果が確認されているか―動物実験で得られた結果がそのまま人に当てはまるとは限りません
2.記事で取り上げられている健康法のほかに、別の方法があるか―すでに利用できる方法と比較してみるのは大切です
3.研究データは十分か―調査対象者の数が少ないと、堅実な結果とは言えません
4.自分にとって意味のあるものか―研究者の興味をかき立てるものであっても、自分の健康や生活にはあまり関係ないかもしれません
5.研究者が、研究に参加した人の健康状態や健康習慣など、結果に影響を与えうる要素を考慮し、研究結果からわかることには限界があるということを説明しているか
6.研究に参加した人は、年齢、人種、性別など重要な要素について自分と似ているか
7.研究期間は、長期的な効果やリスクを示すのに十分な長さがあるか―天然物は、効果が現れるまでに時間がかかることがあります。また、副作用が出るまでに数か月から数年かかるものもあります
8.ほかの研究者も同じ結果を出しているか―一つの研究結果だけでは、偶然ということも考えられます
9.研究に出資しているのは、その研究結果から利益を得る団体か―もしそうなら、注意が必要です

代替医療を試す前にかかりつけ医に相談を

補完的な健康法についてのニュースは、医学の新しい研究結果を知るのに役立ちます。しかし、いかにも効果がありそうに思える新しい健康法であっても、それを試す前に、まずはかかりつけ医などとよく相談することです。

※「健康に関するニュース記事の事実(アメリカ国立衛生研究所)」を翻訳・編集した。

参考

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