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消費者の知らない展着剤の話【落ちこぼれナス農家の、不器用な日常】
消費者の皆さんは、農薬散布と聞いて何を思い浮かべますか?
害虫を減らす殺虫剤?
病原菌を減らす殺菌剤?
雑草を枯らす除草剤?
実をいうと、このほかにも農薬散布時に使うメジャーなものがあります。
それが、タイトルにもある「展着剤」です!
ということで今回は、
「消費者が知らない展着剤の話」
をテーマに、農家の僕ナス男が展着剤について紹介します。
展着剤って何?
そもそも展着剤とは何かというと、作物に農薬を付着しやすくして農薬の効果を安定させるための薬剤(主成分は界面活性剤)です。
散布液が流れ落ちてしまえば、農薬の効果は完全には得られないですからね。
雨で流れやすい露地作物や、散布液をはじきやすい作物や害虫に対して使用する時は、特に効果的です。
農家にとって展着剤は、
● 農薬量↓
● 農薬費↓
● 農薬散布回数↓
● 労働時間↓
とたくさんのメリットがあります。
今の農業には欠かせない農薬の一種、それが展着剤なのです。
展着剤の種類は3つ
展着剤は、
①固着剤、②一般展着剤、③機能性展着剤(アジュバンド)
現在は大きくこの3つに分けられます。
① 固着剤
固着剤とは、農薬の付着量を増やして、雨や露などで流れ落ちにくくする薬剤です。
露地作物の農薬散布時に使用されることが多いです。
② 一般展着剤
一般展着剤は、散布液が水滴にならずに濡れ拡がるようにする剤です。
農薬が作物にかかった時に水滴が多いと、雨で流れたり散布ムラの原因になることがあります。
一般展着剤は散布液の表面張力を下げることで、水滴になりにくく濡れ拡がるように作物に付着させることができます。
③ 機能性展着剤
機能性展着剤は、一般展着剤の濡れ性や伸張性の他に、浸透性や侵達性の効果を加えた薬剤です。
作物の体内に農薬成分が入りやすくなり、より農薬の効果を引き出すことができます。
僕がナス栽培で一番使用しているのが、この機能性展着剤です。
展着剤を使用しない場合も
このように展着剤はメリットが多いですが、農家は農薬散布時に必ず展着剤を入れているわけではありません。
展着剤を入れずに農薬散布するケースももちろんあります。
①農薬との組み合わせが悪い場合
特定の農薬との組み合わせが悪い場合があります。
その場合に強引に混用すると……作物が薬害になることもあります。
②すでに農薬の中に展着成分が入っている場合
展着剤を入れなくても、展着成分が入っている農薬もあります。
その場合は展着剤を入れない選択肢もあります。
ただ農薬にすでに入っている成分と、農家が求める展着剤の成分は違うこともあるので、展着剤を入れることもあります。
③コストを削減したい場合
雨で流される心配がない場合や、展着剤を入れなくてもいい場合。
これは例えば、コストを削減したいからというケースです。
農家は当然、余計なコストをかけずに栽培できた方がいいので、展着剤を使用する前に考えを巡らしています。
思考停止して毎回必ず展着剤を入れているわけではないんですね。
まとめ
展着剤の使用は農家にとってメリットは多いですが、不安に思う消費者の方もいるかと思います。
しかし消費者にとっても展着剤の使用は、農薬を減らした作物を買えるという間接的なメリットがあります。
そして現在は、農薬取締法やポジティブリスト制度などに則って登録された展着剤しか使用できません。
「また余計な化学物質を入れやがって! よく分からないモノは入れるな!」
という意見も当然あるかと思いますが……
展着剤も農薬と同じく、正しく知って正しく恐れることが重要です。
筆者ナス男(ハイパーナスクリエイター「いわゆるナス農家」) |