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農薬に関するデマで打線組んでみた!〈パート14〉【ナス農家の直言】

農家の声

毎度お馴染みのテーマになりますが、今回も、
「農薬に関するデマで打線組んでみた〈パート14〉」
をテーマに、農家の私ナス男が農薬デマを紹介します!

1.(中)ヘリコプターやドローンでの農薬散布はやめろ!

ヘリコプターやドローンによる航空防除は、作業者の肉体的負担も少なく、水稲地域では特に有効な防除だと期待されています。

航空防除の事前には、

● 事前の実施日時の周囲への告知
● 許可証の提出
● 適応のある低毒性の農薬を使用
● 農薬飛散の注意

など、農水省によって細かくルールが設けられています。

nikyokucho_tsuchi.pdf (maff.go.jp)

より高性能に進化している航空機を見ると、人間が田んぼや畑に入ってホースを引っ張って農薬散布する時代は終わっていくのかなあと個人的に感じます。
航空防除に対して批判的な意見があるのも分かりますが、これからの時代には必要な農機、技術だとご理解いただきたいです。

2.(左)マツの木への農薬散布はやめろ!

害虫の影響で、山に生えているマツの木が禿げ上がっている映像を見たことはありますか?
そんな山の防除に対しても、航空防除は有効な防除方法です。
山の上の方まで農薬や散布液を運ぶのが大変なのは、想像に難くないですからね。

「山に農薬を使うな!」

という声もありますし、過去には農薬飛散による健康被害が出てしまった事例もあるのは事実です。
しかし山への農薬散布は、周辺住民への被害を出さないことを大前提として、マツの木の保全の一環として必要だからやるのです。
禿山には土砂崩れのリスクがあり、これを放置することは近隣住民への安全を脅かすことになります。
農薬を使わずに別の方法で……と時間を伸ばしている余裕はないこともあります。
山への農薬散布も、ちゃんとした理由があって有効な手段だからやる、ということはご理解いただきたいです。

3.(一)日本の農作物だけが、海外の残留農薬規定に引っかかっている!

「日本の農作物だけが海外の検疫で引っかかっている! 日本は海外の残飯処理場だ!」

台湾の検査に日本のイチゴが引っかかったという記事が出ていますので、このような印象を持つ方もいるでしょう。
しかし台湾のイチゴのケースに関しては、以前の記事〈パート12〉でも紹介した通り、業者が日本向けに作られたイチゴを買って台湾に輸出している可能性があります。
そして実際は、日本の検疫に引っかかる海外の農作物も当然ながらあります。
日本もちゃんと検査していますし、逆パターンもあるのです。

そして日本の農産物の海外への輸出額も、順調に伸びています。日本の農産物は世界にも認められているのです。

zisseki-35.pdf (maff.go.jp)

以前にも紹介しましたが、残留農薬の基準は日本だけが緩いわけではなく、世界標準に合わせているだけです。
日本の農作物も十分に安全ですので、過剰に不安になる必要はありません。

4.(三)皇室の方は無農薬野菜を徹底している!

「国民には農薬使ってても安全と言っているが、皇室が無農薬の農作物しか食べられていないのが答えじゃないか!?」

というニュアンスの、過激な意見がSNSにありました。
たしかに、天皇家の方々は「御料牧場」という場所で栽培された野菜を口にされていますが……

宮内庁のHPには、

「農薬・抗生物質は対象に応じて定められた使用基準を遵守し、生産物の安全性の確保に努めています。」

と書かれています。

宮内庁に電話でも確認しましたが、無農薬ということではないとのことでした。
個人のサイトでは、天皇家は無農薬のものしか食べられていないなどと書かれているものもありますが、間違いなので信じないようにしましょう。

5.(右)JAは無農薬野菜は出荷できない!

「JAは農薬を使った野菜でないと売ってくれない!」

という意見は間違いです。
農薬不使用でも品質基準や規格さえ合えば、ちゃんと扱ってくれるJAは多いはず。
以前の〈パート7〉でも紹介したように、冬場の葉物野菜は無農薬が多いですが、出荷できるJAは多いです。
ただ共同選果のため慣行栽培の野菜と同じように売られ、同じような価格になってしまいます。
それでは手間暇がかかっている有機栽培などの野菜は、わりに合わない価格になることもあるので、有機栽培農家は個人で販売する方が多いのです。

6.(捕)テレビは農薬の危険性を報じない!

「インターネットにはこれだけ農薬の危険を示すデータがあるのに、テレビは一切報じない! テレビは闇の利権にコントロールされている!」

というSNSの書き込みは、果たして本当でしょうか?

これは私の意見ですが、農薬の話題をテレビが取り上げないのは、

● 農薬の安全性に関して賛否両論あるから題材として取り上げにくいから
● 消費者にとって難しい内容になるから
● そもそも農薬の安全性に興味がない消費者の方が多いから

ニュースの取り上げ方や中立性などは素人には分かりませんが、個人の陰謀論めいた主張をテレビが取り上げたらそれは大問題です。
テレビは真実を報じないからといって、匿名のネットの記事やYouTubeの動画を参考資料として主張している方がいますが、それは信ぴょう性に欠けるというのは覚えておいて欲しいですね。

7.(二)イベルメクチンを農作物にかければ安全!

「リンゴにもイベルメクチンをかけてみた!」
「田んぼにもイベルメクチンを溶かして流してみた!」

という、びっくりするような報告をSNSで見かけます。
駆除剤であるイベルメクチンに関しては、私は専門外なのでここではコメントしませんが、
以前にも紹介した通り、防除目的で農薬以外のものを使用することは農薬取締法で禁止されています。
そして、出荷団体の抜き打ちチェックで引っかかれば、産地にも迷惑がかかります。
自家用に使うだけだとしても、私は止めた方がいいと思います。

8.(遊)肉牛に農薬を塗って出荷している!

「肉牛に得体のしれない農薬を塗りたくっている!」

という、畜産農家が子牛に対して液体を塗布している動画が出回りました。
これは畜産農家によれば、アイボメックトピカルという殺ダニ剤だそうです。
この薬は、食用になる直前の牛に使うことはできません。
動画では子牛に使用していましたが、この子牛が数日後に出荷されるとは考えられないと、案の定X(旧Twitter)のコミュニティーノートが貼られていました。
デマを流しても、分かる人にはすぐにバレてしまうのですね。

9.(投)「オーガニック化粧品は安全!」

「オーガニックだから、自然由来だから、肌によさそうで安心。」

という言葉のイメージで、化粧品を選ぶのはやめたほうがいいです。
食品のイメージのせいか、オーガニック化粧品も安心安全と思っている人が多いようですが、安全性や使用効果が一般的な化粧品より優れているかは個人差があるからです。
人によっては、オーガニック化粧品を使用して皮膚トラブルを生じることも可能性としてあります。
オーガニック化粧品が自分の肌に安全かどうかは、やはり自分の肌で試して一般の化粧品と比べて確認するしかないのです。

まとめ

農薬デマも、時代に沿ったものや流行に合わせて生み出されていますね。
一見すると正しそうな情報でも、多角的に情報を集めるようにしましょう。

 

【ナス農家の直言】記事一覧

筆者

ナス男(ハイパーナスクリエイター「ただのナス農家」)

 

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