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有機マーケティングは世界の農家と消費者を救えるか

食と農のウワサ

有機・オーガニック食品は一般食品より、安全でも健康的でも美味しくもなく、実際は無農薬ですらない確率が高い。にもかかわらず、これだけ一部の人たちに持てはやされているのは「ハロー効果」と「プラシーボ効果」という人間心理の組合せ効果が大きい。偽薬効果で環境・健康意識の高い自分に浸れるのだから、豊かな社会のブランディングとしては有効なのかもしれない。しかし、世界には豊かでない人と農家が無数にいる。私たちはこの現実をどう捉えたらよいのか。AGRIFACT執筆者で農業ジャーナリストの浅川芳裕氏のツイートをもとに考えたい。

有機という言葉の魔力

有機マーケティングは、有機・オーガニック食品を生産・消費するだけで正義感や高揚感を得られるかのようにうたう。豊かな社会のブランディングとしては有効だろうが、実態は社会課題の解決にはつながらず、かえって逆効果のことが多い。

エコの名を借りたエゴ

世界に目を転じると、有機農家は7億人強いる。その大多数は途上国に暮す、最貧の農民層である。化学肥料や農薬は買う余裕はなく、自分と家族の自給自足がやっとの有機農業に従事している。それを先進国の活動家は「真のエコだ」「真のオーガニックだ」と持てはやすが、彼らは近代技術を使いたくても使えないほど貧しい「貧困の罠」に陥っているということなのだ。豊かな国に暮らす世界の富裕層は有機食品を健康や環境への配慮、自然と結びつくライフスタイルと捉えるが、有機農家7億人の貧困に配慮することはない。

操られる消費者の暴走しやすい被害者意識

人は一度、自分が被害者だと認識すると、その感覚を長期的に維持しようとする心理が働く。その被害者心理の悪用に長けているのが有機・無農薬等の社会的マーケティングなのだろう。被害の事実があるかどうかは関係なく、農薬を使う農業は不当であり、不正であり、不道徳であると断じ、背後に大きな加害者の存在があるとささやく。AGRIFACTの記事を読んでほしい。事実に基づかないこの手の言説がいかに多く発信されているかわかるだろう。被害者意識が肥大化すると、妄想する加害者のイメージも拡張する。農業をする人、農薬をつくる人は病気や環境汚染の元凶となる「悪の権化」という架空の物語が社会化されることを望むようになる。

この元ツイート主も消費者の被害者意識を悪用する有機・無農薬マーケティングの被害者ともいえるが、抜け出すのは容易ではないだろう。その意識が根付くと、自分は道徳的に優れ、同情を受ける権利があり、社会全体も私の味方との認識が強化されてしまう。正確な情報に接しても「我こそ正義の多数派」という誤認から修正が困難になるからだ。被害者意識が根付く前に、AGRIFACTなどの情報に接する機会を増やしていくしかない。

 

筆者

AGRIFACT編集部

 

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