会員募集 ご寄付 お問い合わせ AGRI FACTとは
本サイトはAGRI FACTに賛同する個人・団体から寄付・委託を受け、農業技術通信社が制作・編集・運営しています

農業に関するデマで打線組んでみた!〈パート41〉【ナス農家の直言】

農家の声

物価高を背景に農作物への関心が高まるのに比例してデマも増えがち。2026年初の今回も、
「農業に関するデマで打線組んでみた!〈パート41〉」をテーマに、
農家の私が農業に関する誤解や偏見を正していきます。

1.(中)土に栄養がなくても、野菜は育つ!

「もやしやスプラウトが育つように、栄養がなくても野菜は育つ!」
という投稿を見ました。

だから化学肥料は使うな、という主張につなげたいのでしょうが、残念ながら間違っています。
種の中にはある程度の栄養があり、発芽してから数日は、無肥料でも育ちます。
しかし発芽してから大きくなって実をつけるほどの栄養を種は蓄えられておらず、やはりいずれは肥料成分が必要です。

2.(二)電極を立てれば無施肥でも栽培可能!

「針金を割り箸に巻いて電気を誘導すると、肥料がなくても育つ!」
という投稿を見ました。

たしかに空気中の窒素を空気プラズマで固定化させる研究はあります。
雷が稲妻と呼ばれるのには、雷が落ちると稲の生育が良くなるからという説もあるようです。
しかしプラズマによる空気中の窒素の固定は研究段階であり、まだ農業の現場での実用化には至っていません。
スプラウトなどの、発芽から数日で収穫するような野菜ならまだしも、電気の力だけで作物が収穫までできるという報告はないのです。

3.(右)グリホサートはラウンドアップしか使われていない!

「グリホサートの成分は、ラウンドアップしか使われていないから、ラウンドアップだけを叩けばいい!」
と勘違いされている方がいますが、生成AIに聞けばすぐに違うと分かります。

グリホサートを有効成分とする除草剤は、他にもたくさんあります。
なんなら、ジェネリックのグリホサート除草剤も出ています。
活動家のデマに流されて、ラウンドアップ製品群だけが悪だと洗脳されているのでは?

4.(一)ポジティブリスト制度って何だ!

食の安全への高まりを受けて、2003年の食品衛生法の改正で、「残留農薬等のポジティブリスト制度」が導入されました。

農林水産省のポジティブリスト制度のページ

ポジティブリスト制度によって、250農薬、33動物用医薬品が対象になったのですが、
「250もの農薬の使用や残留を認めるのか! やはり日本は残留基準を緩めている!」
と、数字の多さだけを見て批判している、残念な方がいます。

以前はネガティブリスト制度といって、「原則規制がない状態で、規制するものをリスト化するもの」でした。
現行のポジティブリスト制度とは、「原則規制(禁止)された状態で、使用、残留を認めるものについてのみリスト化するもの」です。
ネガティブリストとポジティブリストの違いを、分かりやすく遠足のおやつに例えるなら、

ネガティブリスト:「クッキーとチョコはダメ! それ以外はOK!」
ポジティブリスト:「クッキーとチョコしか認められない!」

となります。
ポジティブリスト制度の方が、持って来られるおやつが極端に少なく、厳しい制度なのは明白ですよね!

またネガティブリストでは防ぎきれなかった、「未登録の農薬」についても使用や残留を認められなくなったことも、大きな前進です。
そして私の記事で何度も説明している通り、残留農薬や農薬登録の基準はとても厳しく、一般消費者が普通に生活している分には全く問題にならないほどです。
日本の残留農薬の基準は厳格であり、過剰に不安になる必要はないのです。

5.(左)JAは有機栽培を推奨していない!

「JAが推奨しているのは、化学農薬を使った慣行栽培だけだ!」
という主張は誤解です。

JAでも有機栽培の野菜は(規格以上であれば)出荷できるはずですし、有機栽培の農作物を売りにしているJAもあります。
代表的な例がJA馬路村のユズ(柚子)で、他地域との差別化を図り、ユズの有機栽培やジュース加工に成功しています。

6.(三)有機栽培が多い馬路村を見習え!

農水省が市町村別に耕地面積に占める有機農業の面積が高いランキングを発表しています。
5.で挙げた高知県馬路村がトップで、実に耕地面積の81%は有機栽培です。
「他の市町村も馬路村を見習って、有機栽培の面積を増やせ!」
と思われるかもしれませんが、そう簡単ではないのです。

なぜなら馬路村で栽培量が多いユズは、比較的農薬を使わずとも栽培できるので、上位に来るのは必然なのです。
農薬・化学肥料の適正使用が規格品の安定収穫につながる露地野菜などの栽培が盛んな地域では、有機栽培化に舵を切る農家は少数でしょう。

7.(遊)農家は有効期限が切れた農薬も使っている!

「大量に農薬を仕入れているが、ちゃんと使いきれているのか?」
農薬にも有効期限があり、その期限内に使うことが農薬取締法に定められています。
有効期限が切れると、農薬の成分が保証されてなかったりするからです。
期限切れリスクを避けるためにも、農家は適当に農薬を大量に買っているわけではありません。
どの農薬をどれだけ栽培期間内で使用するのか。農家は計算した上で買っているのです。

ちなみに私は、農薬散布する数日前に、必要な量だけその都度買うことが多いです。
大規模農家なら、いちいちその都度買いに行くのは面倒でしょうが、うちは大規模ではないので一度に散布する量はたかが知れてますからね。
それに使いきれずに残った農薬は、有効期限内に使わないといけないというプレッシャーに駆られるのも、個人的には嫌です。
状況に応じた農薬を、その都度使い切った方が、在庫にもなりませんので。

8.(捕)農家は農薬のボトルを適当に捨てている!

「穴を掘り返したら農薬が出てきた! 農家はけしからん!」
という投稿がありました。

たしかに昔は、「残った農薬は袋に入れて穴に埋める」という趣旨の処理方法がされていましたから、批判されるのも仕方がないことかもしれません。
しかし現在では、農薬の空容器は適切に処分することが求められています。
私の場合は、そもそも使い切れるだけの量の農薬しか買いません。
使い切った農薬のボトルは3回ほどすすいだ後、JAの廃棄物回収の日に持っていきます。
それこそ適当に捨てたり、別用途で再利用したら、環境汚染になりかねません。

9.(投)JAは一年も前から農家に農薬を買わせている!

「害虫が大発生するかわからない前年から、水田面積当たりで計算した各種農薬を、コメ農家に買わせている」
某大学教授のコメントですが、間違っています。

たしかにJAには、来シーズンの作付に向けた農薬の予約注文はあります。
注文数を確定したほうが仕入れに有利でしょうから、農薬の予約注文は通常時よりもお得に買えることが多く、農家にもメリットがあります。
しかし私の記事でも何度か説明している通り、JAは農家に強制的に農薬を買わせることはありません。

種苗店で買おうが、適切なオンラインショップで買おうが、農家の自由です。
ちなみに私は、JAではなく種苗店でその都度分を買うことが多いです。
種苗店で農薬を買う理由は、出荷の帰りについでに寄れる場所にあるからです。
JAで農薬を買わないからといって、JAから注意されたことは一度もありません。

まとめ

大学教授などの権威ある人の発言でも、正しいかどうかはまた別問題です。
2026年こそ不安を煽る情報を妄信せず、冷静に、そして多角的に調べてみてください。

 

【ナス農家の直言】記事一覧

筆者

ナス男(ナス農家&サイト「農家の決断」管理人)

 

 会員募集中! 会員募集中!

関連記事

記事検索
Facebook
ランキング(月間)
  1. 1

    農薬を落とすというナントカウォーターの勧誘を受けてみた(前編):63杯目【渕上桂樹のバーカウンター】

  2. 2

    農業に関するデマで打線組んでみた!パート24〈ネオニコチノイド編〉【ナス農家の直言】

  3. 3

    農薬を落とすというナントカウォーターの勧誘を受けてみた(後編):64杯目【渕上桂樹のバーカウンター】

  4. 4

    Vol.36 煮つめるほど体に入りやすくなる? 白湯の不思議言説をウォッチ【不思議食品・観察記】

  5. 5

    Vol.6 養鶏農家が「国産鶏肉と外国産鶏肉」問題を語る【農家の本音 〇〇(問題)を語る】

提携サイト

くらしとバイオプラザ21
食の安全と安心を科学する会
FSIN

TOP
会員募集中
CLOSE
会員募集中