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日本の農薬残留基準値は改正されて緩くなったのか – グリホサートの真実とは2【完全版】(vol.7)

食と農のウワサ

生産現場のリアルな声を発信する日本有数の農業チャンネル「トゥリーアンドノーフ」を運営する徳本修一氏が、グリホサート問題の歴史的経緯から背後で蠢くビジネス人脈、科学的評価や対立の解決法まで、食の安全安心の権威・唐木英明氏に聞きまくった1時間。グリホサートの真実とは2【完全版】をAGRI FACT用に再構成してここにお届けする!(vol.7)

日本の農薬残留基準値は改正されて緩くなったのか

徳本 日本は農薬の基準が緩すぎて不安だ。「農薬大国」ではないか、というコメントも数多くいただいてます。

唐木 最初に押さえておくべきなのが「ポジティブリスト制度」です。これは食品衛生法ですべての農産物と畜産物には個別に残留農薬基準を設定しなければならないという決まりで、基準値を上回る農畜産物は出荷停止の処分となります。登録農薬のそれぞれで、すべての農産物ごとに基準値を決めるのは大変な手間なのですが、この厳しい制度があることによって日本の農畜産物の安全性が守られています。

例えば、現行のグリホサートの残留基準値は、小麦だと5ppm(ppmは100万分の1を表す単位で体重1kgあたり1㎎の残留基準値であれば1ppmとなります)ですが、2017年12月までは5ppmでした。それを「30ppmへと6倍緩めた。これはけしからん」。あるいは、ほかにも基準値を高くしたものが多くあるので「日本は食の安全を蔑ろにしている」などという意見が出ていることは私も承知しています。

ですが、もちろん緩めたとかそんなことはありません。実は国際基準の残留基準値に合わせただけなんです。なぜ国際基準に合わせる必要があるのかといえば、日本は小麦を米国やカナダ、南米などから大量に輸入しています。そして輸入元である海外の生産者は当然、国際基準の30ppmでグリホサートの使用を管理しています。にもかかわらず日本の基準は5ppmだから、「全部輸入禁止」となってしまうと、それこそ小麦の供給に支障をきたし、日本の食が脅かされる怖れがあるのです。ですから国際基準に合わせようということで基準値を変更(改定)したわけです。

参考

この措置に反対する人は「日本は基準を緩めた」といいますが、逆に「厳しくした」基準もあるんですね。例えばエンドウマメは、3ppmが0.2に、豚肉・牛肉は0.1ppmが半分の0.05に変更されました。ところが、残留基準値を厳しくした食品については何もおっしゃらない。トータルとしては基準を上げたものも下げたものもあるということです。

こうした基準値の上げ下げは食の安全性と関係があるのかというと、実はないのです。どういうことかというと、農畜産物ごとの残留基準値は「1日許容摂取量(ADI)」の内訳の変更にすぎないからです。1日許容摂取量とはグリホサートの場合、1日に体重1kgあたり1㎎以下であれば、一生の間毎日食べ続けても何の影響もない量なのです。この量が外側の枠としてあり、これを超えなければ内訳をいくら変更しても問題ない。農畜産物ごとの残留基準とは、この枠の中の内訳をどう決めるのかという部分です。

日本人の食生活の変化や状況などに合わせて、トウモロコシには5ppm、小麦は5だったけれど30に、大豆には20を割当てましょうと、外枠を変えずに内訳を見直すことはよくあることなのです。見直す際に、外側の枠であるADIを超えなければ何の問題もありません。ここがわかりにくいところで、内訳を変えたから安全を疎かにしているとはならないのです。

仮にADIを変えたのであれば、安全を疎かにしているということになりますが、そうではありません。制度への無理解や曲解から、日本は農薬大国だとか基準が緩いといった誤解が生じているのだと思います。

さらに理解を深めたい場合は

グリホサートの真実とは<2> -「食の安全」の世界的権威に聞いてみた!〜完全版

 

【グリホサートの真実とは2】記事一覧

プロフィール

唐木英明(公益財団法人食の安全・安心財団理事長 東京大学名誉教授)
徳本修一(トゥリーアンドノーフ株式会社代表取締役)

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