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化学肥料に関するデマで打線組んでみた! 【落ちこぼれナス農家の、不器用な日常】

農家のホンネ

農薬と同様に、化学肥料についてもよく批判の的になります。
しかしその批判の中には、根拠に基づかないデマも散見されます。
化学肥料を、そして農業を正しく理解してほしい!
ということで今回は、

「化学肥料に関するデマで打線組んでみた!」

と題して、化学肥料に関するデマを農家の僕ナス男が紹介していきます!
前回紹介した「農薬に関するデマで打線組んでみた」と同じくらい、消費者の方にこそ知ってもらいたい内容です!

1.(中)有機質肥料を使っていたら有機栽培だ!

商品のPRなどで、「有機質肥料を使用している」と表示されているものがあります。
しかし注意してほしいのは、有機質肥料を使っていたら有機栽培になるわけではないということです。
有機質肥料も使いながら、化学農薬を使っているケースもあります。(化学農薬を使っていたとしても安全です。)
有機栽培の定義は誤解している方が非常に多いので、ぜひ知ってほしいところです。

2.(二)慣行栽培は化学肥料しか使っていない!

「慣行栽培は化学肥料だけしか入れてないだろ⁉」
と誤解されている方も多いです。

確かに昔は、化学肥料をバンバン使用していた時代もありました。
しかし土壌のバランスや肥料成分の土壌流出などの問題が浮かび上がり、化学肥料をバンバン使う農業は現代では見直されています。

現代の慣行栽培は堆肥も緑肥も使いますし、慣行栽培であっても有機質肥料も使う農家は多いです。
ちなみに僕は慣行栽培でナス栽培をしていますが、堆肥も入れますし有機質肥料も使っています。

3.(指)農家はJAの言われるがままに化学肥料をバンバン入れている

「農家はJAの栽培暦通りに肥料をバンバン入れているだろ!」
「慣行栽培は肥料過多のメタボな土になる!」

という方もいますが、誤りです。
農家もバカではないので、JAの言いなりではないです!

なるべくコストをかけずに品質のいい野菜を作ろうしているのは、どの農家も当たり前。
肥料代を節約したいに決まっていますし、必要以上に畑に肥料を投入したいとは考えていません。
土壌分析で肥料成分の残量を把握して、適切な量の肥料を毎作入れています。

4.(左)化学肥料には発がん性がある!

「化学肥料を使った野菜には発がん性がある!」
「硝酸体窒素主体の化学肥料は危険だ!」

というとんでもないミスリードをしている人もいます。
確かに、化学肥料は硝酸体窒素が主体の肥料です。
しかし、硝酸体窒素が主体の肥料に問題があるわけではありません。
硝酸体窒素の過剰施肥が良くないんです。

有機質肥料(アンモニア体窒素主体の肥料)を使ったとしても、分解されないまま植物体に吸収されるわけではありません。
有機質肥料(アンモニア体窒素主体の肥料)も、植物体に吸収される時には硝酸体窒素になっています。
つまり有機栽培だとしても、硝酸体窒素の過剰は起こりうるということです。
デマを流している人は硝酸体窒素の問題の論点をすり替えて不安を煽っているので、注意してください!

5.(一)化学肥料は脱炭素に反している!

SDGsの理解の高まりや、みどりの食料システム戦略の改定から、

「化学肥料はSDGsと逆行している!」
「脱炭素には有機栽培が有効だ!」という意見もよく聞きます。

しかし、下の表を見てください。

Energy use and greenhouse gas emissions in organic and conventional farming systems in the Netherlands
Energy use and greenhouse gas emissions in organic and conventional farming systems in the Netherlands から引用

この表は化学肥料の製造中に発生するCO2の量も加味されているので、むしろ有機質肥料の方がCO2の発生は多いのが現実です。

考えられる主な理由としては、以下が挙げられます。

• 肥効が弱い有機質肥料では、化学肥料より多くの量が必要になるから
• 有機質肥料の輸送にかかるCO2の排出や、栽培時の雑草との戦いで使う機械の動力がかかるから

つまり有機質肥料がSDGsだとは言い切れないのです。
確かにSDGsにも色々な観点からの見方がありますし、化学肥料への反対意見は消えないかもしれません。
しかし現代の化学肥料は環境面から見ても安全で、敵視するようなものではありません。
飢餓の撲滅や労力の削減という観点から見ても、化学肥料はSDGsにマッチしています。

6.(捕)化学肥料を使わずとも、収量は上がる!

「テレビや雑誌では、有機栽培でも慣行栽培と同じくらいの収量を上げられると言っていたぞ!」
「有機栽培農家を見習えば、化学肥料を使わずとも収量を落とさずに栽培できる!」

というSNSの噂を鵜呑みにしている人もいます。
これに関しては、環境や土質、作物にも依ります。
先進的な有機栽培農家は、慣行栽培農家と同じくらいの収量を上げられるかもしれません。
しかし、ほとんどの作物では有機質肥料のみでは収量を落とします。
やはり肥効が安定している化学肥料の方が安定した収量を上げられるのはほぼ確実です。

7.(右)化学肥料を使う野菜は、楽して作られた粗悪品!

「化学肥料を使うなんて、楽をして粗悪品を作るのと一緒!」
「手間暇が抜け落ちているから、安心安全ではない!」

というツイートに、いいねがたくさんついていてがっかりしました……
確かに化学肥料は有機質肥料より肥効が安定していて計算しやすいので、化学肥料を使った方が野菜づくりは簡単でしょう。

しかし、

「化学肥料や慣行栽培=手間暇が抜け落ちている」

とレッテル張りしてしまうのはいかがなものか!

慣行栽培だろうと有機栽培だろうと、農家は人生を懸けて栽培しています。
土にも触ったことがなさそうな素人のツイートなので、あまり関わりたくはないのですが……
「だったらあなたが野菜を育ててみろ!」
と言いたいです。

そこまで言うなら、僕の農園に来て実際に働いてみてください。
こき使って……いや、農業のリアルを教えてあげますよ!

8.(遊)化学肥料を使用した野菜は、栄養がなくスッカスカだ!

「昔と比べて、ビタミンや鉄分はこんなにもが落ちている!」
「化学肥料を使うから、栄養がないんだ!」

このようなことを表の数値だけを見せて説明している人がいますが、これはデマです。
なぜなら、昔と今では栄養分の分析の仕方が異なり比較することができないからです。
なので、一概に昔の野菜と現代の野菜とを比較することはできません。

以上のような事実を隠して表の数値だけを見せて、
「化学肥料で作った野菜は栄養価が少ないから、○○野菜を!」
と謳っている人がいたら、デマや不安商法を疑ってください。

9.(三)「化学、化成」がついている肥料は全部危険!

「化学や化成と名前についている肥料は全部危険だ!」
という極端すぎる主張もあります。

化学的、科学的なものは一切信用しないということだと思いますが、
それってあなたの感想ですよね?

肥料を販売するためには、「肥料取締法」に基づいた検査や届出が必須です。
この肥料取締法により、市販の化学肥料には安全性が担保されています。
肥料取締法について

化学肥料の安全性のリスクをどう考えるかは個人の自由ですし尊重されるべきですが、
化学肥料を危険だと喧伝するのはダメでしょう!
化学肥料のみを取り上げて叩いている人には、注意してください!

まとめ

今回は、化学肥料に関する様々なデマを紹介しました。
やはり『化学』と名前がついている以上、化学肥料のイメージは悪く、有機質肥料の方がイメージはいいでしょう。
しかし消費者の方が思っている以上に化学肥料はとても安全です。
まずは正しく化学肥料のリスクを知ってほしいです。

AGRI FACTのサイトでは、農薬やリスクについて化学的なデータを含めて解説したページがたくさんあります。
ぜひ参考にしてみてください!

筆者

ナス男

 

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