寄付 問い合わせ AGRI FACTとは
本サイトはAGRI FACTに賛同する個人・団体から寄付・委託を受け、農業技術通信社が制作・編集・運営しています

国際がん研究機関(IARC)の判断に対して世界中の科学者から批判が出ていると聞きましたが、何が問題とされているのですか?

食の疑問答えます

A 世界の食品安全関連機関はグリホサートに発がん性がないと報告しているにもかかわらず、IARCが独自に「おそらく発がん性がある」と判断したことです。判断が分かれた最大の理由は、どのような科学論文に基づく判断だったのかという点です。実は、IARCが参考にした論文の選び方、選んだ論文の重要性の評価に問題があり、そのため他の機関とは異なる結論になったと考えられています。詳細は次の論文をご覧ください。

D Brusick, M Aardema, L Kier, D Kirkland,G Williams. Genotoxicity Expert Panel review: weight of evidence evaluation of the genotoxicity of glyphosate, glyphosate-based formulations, and aminomethylphosphonic acid. Crit Rev Toxicol. 2016 Sep;46(sup1):56-74. doi: 10.1080/10408444.2016.1214680.

さらに重要な点は、IARCで評価を担当した委員会のブレア委員長が重要な調査結果を無視したことです。それは米国ノースカロライナ州とアイオワ州でラウンドアップ関連製品を散布していた農業者約4万5000人を1993年から2005年の長期にわたって調査した結果、がんになる割合が増えることはなかったという内容です。2017年7月14日配信のロイターの記事によれば、この調査結果を論文として発表する立場にあったブレア委員長自身が論文発表を故意に遅らせ、IARCの評価に間に合わせないようにした疑惑がもたれています。

この「グリホサートに発がん性はない」とする調査論文がIARCの評価に間に合えば「IARCの判断は変わっていた」と、ブレア委員長自身が認めています。その詳細は以下のWebサイトで見ることができます。

注:商品名『ラウンドアップ』の有効成分名は「グリホサート」と言い、Q&Aでは2つの名称をその都度使い分けていますが、実質的には同じものだとご理解ください。

回答者

唐木英明(公益財団法人食の安全・安心財団理事長・東京大学名誉教授)

回答日

2020年3月20日

 

関連記事

検索

Facebook

ランキング(月間)

  1. 1

    他人事じゃない、秋田県のお米をターゲットにしたいじめ問題:49杯目【渕上桂樹の“農家BAR Naya”カウンタートーク】

  2. 2

    日本の農薬使用に関して言われていることの嘘 – 本当に日本の農産物が農薬まみれか徹底検証する

  3. 3

    【特別セミナー】グリホサート評価を巡るIARC(国連・国際がん研究機関)の不正問題  ~ジャンク研究と科学的誤報への対処法~

  4. 4

    VOL.22 マルチ食品の「ミネラル豚汁」が被災地にやって来た!【不思議食品・観察記】

  5. 5

    第49回 福島、秋田、放射能。オーガニックな風評に翻弄される米たち【分断をこえてゆけ 有機と慣行の向こう側】

提携サイト

くらしとバイオプラザ21
食の安全と安心を科学する会
FSIN

TOP
CLOSE