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グリホサートが卵巣機能に影響する可能性は低い 最新の研究で明らかに
影響が見られたのは最大曝露量の条件下のみ
査読付き学術誌である、Toxicology and Applied PharmacologyとReproductive Toxicologyに発表された2つの研究では、除草剤ラウンドアップの有効成分として広く使われているグリホサートについて、マウスの卵巣機能がその曝露レベルに応じてどのように反応するかの分析を行った。
その結果、卵巣の重量と卵胞数が増加したのは、最大曝露量の条件下においてのみだった。責任著者でありアイオワ州立大学で動物科学、特にリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関わる健康)を専門に研究しているアイリーン・キーティング准教授は、この研究結果をもって「グリホサートが卵巣機能の健康に影響を及ぼすと立証することはできない」という。さらに、多くのエンドポイント(訳注: 有害影響を評価するための指標となる、観察又は測定可能な生物学的事象)はグリホサートへの曝露によって変化がなかったと述べた。
バイアスを排した研究結果では大きな影響は見られない
この研究では、グリホサートをマウス群へ経口投与し、食物生産に使用される水や土壌に残留したグリホサートに人間が曝露される状況を擬似的に作り出した。その結果、グリホサートの曝露による、心臓、肝臓、脾臓、腎臓、子宮の重量の変化は見られなかった。アイリーン・キーティング准教授は、「この研究の最大曝露量の条件下で生じた卵巣の肥大とタンパク質の過剰産生が、マウスの生殖能力に影響を及ぼすかどうかは定かでない」という見解を述べている。また、その問いに対する答えを見つけるには、さらなる研究が必要だと考えているが、本研究の結論は、グリホサートを安全に使用する方法を決定することを目的とした数年前の研究結果と概ね一致している。
グリホサートの使用にあたっては、健康への影響の有無に関して激しい論争が続けられてきた。そうした状況を踏まえて、研究者たちは可能な限りバイアスがかからないように研究デザインを行った。実験結果が恣意的な予想やバイアスに左右されないよう、例えば、科学者たちは個々のサンプルがグリホサート処理されたものかどうかわからないようにして分析を行った。
キーティング准教授は「グリホサートが懸念すべきものであるか否か、を明らかにしようとする際には、普段よりも実験計画をよく練り、また研究の独立性にもより注意する必要がある」と語っている。
原文
Exposure to the chemical glyphosate changed the level of some ovarian proteins in mice but did not impact ovarian steroid production, an indication
除草剤グリホサートは卵巣機能に影響が低いことが研究結果で明らかになった
(GLPチーム2020年7月29日公開) を翻訳・編集した。