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第4回 農薬登録を取るまでの作業、安全性試験の概要【たてきの語ろう農薬】

コラム・マンガ

農業に携わる人間は消費者などから農薬について質問されたり、農薬使用を否定されたりすることも多々あります。どのように応えればいいのか悩むことも多いと思います。本企画では農薬の使用に関して世間と対話していく上でひとつの方法論を示していきたいと考えてます。(農薬ネット 西田立樹)
※web版『農業経営者』2001年9月1日 【たてきの語ろう農薬】から転載(一部再編集)。本文中の役職や肩書き等は2001年9月現在のものです。

農薬のリスクを知る必要性

本誌連載では物事をリスク(危険性)とベネフィット(利便性)をハカリにかけて考える必要性を一貫して述べてきています。農薬についても同じ考えのもと必要性を判断していくわけですが、そのためにはどれくらいのリスクがあり、ベネフィットがあるのかということを知らなければなりません。農薬使用によるリスクとベネフィットにはどんなことが考えられるかということは、本連載の第一回で述べています。その中でも農家にとってお客様である消費者が最も気にするのは、農薬を使って育てた作物を食べて自分の健康が害されないかということです。生産者である農家(つまりこの雑誌の読者)はお客様にそのことをきっちり説明する義務があると言っても過言ではないと思います。

市販のデータ集は難解なので要約します

前回書きました通り、「食べて安全なのかどうか?」はADI(一日許容摂取量)よりたくさん身体に入ってきているのかどうかを調べることでわかります。それらのデータ集は市販されているのですが、通常目にするようなことはありませんし、見ても大量の数字とカタカナが羅列されていて難解です。そこで、日本で主に使われている農薬と主な作物にしぼって、わかりやすく要約します。

主な農薬ADI

主な農薬のADIを表に示しました。これは体重50キロの人が一日にこれぐらいの量なら毎日摂取してもまず大丈夫ということを意味しています。もし、ある日たまたまこの値を超えても、毎日越えるわけではなければ心配することはありません。μg(マイクログラム)は100万分の1グラムです。

農薬は作物にどれくらい残留しているのか

次に、作物にどれくらいの農薬が残留しているのかを示します。これは全国の様々な分析機関が実際に作物の残留農薬を検査した結果を集計したもので1998年のデータからの抜粋です。そもそも作物に残留する農薬は非常に少ないことがわかります。

消費者の口にどれくらいの農薬が入っているのか

マーケットバスケット調査というのがありますのでそのデータの一部を示します。この調査は国民栄養調査というのに基づいて、日本人が通常摂取するメニューを作ります。飲料水や加工食品なども含まれます。実際に市場で食材を購入し、通常行われる調理法に従ってそれらの料理を作ります。これらをすりつぶして全量分析する方法で、消費者がどれぐらいの農薬を摂取しているのかがわかります。なお、検出されなかった農薬も検出下限値の20%は検出したものとすることになっており、比較的厳しい試験です。1998年の結果を表に示します。

実際には農薬はほとんど口に入っていない

マーケットバスケット調査の結果は先にも書いたように、検出されなくても検出下限の20%は加算することになっています。生データを見てみると、今回上げた農薬の中ではオルトランを除いて全く検出されていませんでした。またオルトランも一部の献立で検出されただけで、大部分のからは検出されていません。つまり、農薬が身体にどういう影響を与えるかということを考える以前に、そもそも農薬の摂取量自体が非常に少ないということを説明しなければなりません。

ただし、これはリスクゼロを意味するものではありません。摂取量は非常に少ないのであって、ゼロとは言えないのです。ADIに対して摂取量が非常に少ないという結果から言えることは、「農薬による消費者の健康リスクは非常に小さい」ということです。

健康を害する原因は農薬だけとは限らない

以上のことをふまえた上で、日常生活での死因となりうる危険度を相対比較した表をご覧ください。農薬のリスクは非常に小さいわけで、他に入ってくるもの、例えばたばこやアルコールなどと比較しても、取るに足らないリスクしかないということがわかります。「消費者、つまり私たちの健康を考える際に、農薬のリスクはゼロではないが非常に小さい。他の不健康要因と比べて無視できるレベルにあり、我々が日常生活で口にするもののことを考えるならば残留農薬を気にすることはない」が結論となります。

筆者

西田 立樹(「農薬ネット」主宰)
企業で農薬の研究を行いつつ「正しい農薬の知識を身につけるページ」をネットで公開中。著書に「気になる成分・表示100の知識」「ダイオキシン100の知識」(いずれも東京書籍)など。

 

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