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【誤り】グリホサートは発達障害など子供たちの健康に影響がある 藤田和芳氏(オイシックス・ラ・大地㈱代表取締役会長)

食と農のウワサ

「(グリホサートがもたらす健康被害には)発達障害など子供たちへの影響がある」
藤田和芳氏(オイシックス・ラ・大地㈱代表取締役会長)

AGRI FACTによるファクトチェック結果

その理由は?

自閉症とグリホサートの因果関係を証明した論文がないから。

AGRI FACTのファクトチェック【対象と選択基準】
AGRI FACTのファクトチェック【評価基準と判定】


以上の要旨はAGRI FACT事務局が作成したものです。詳細は以下でご確認ください。

農と食にまつわる噂・ニュース・風評の「ウソ?本当?」を検証するサイトAGRI FACT(アグリファクト)は2021年4月14日、「(グリホサートがもたらす健康被害には)発達障害など子供たちへの影響がある」藤田和芳氏(オイシックス・ラ・大地㈱代表取締役会長)との投稿についてファクトチェックを行い、「事実関係に誤り」とする調査結果を発表した。

ファクトチェックした投稿内容

「(グリホサートがもたらす健康被害には)発達障害など子供たちへの影響がある」

投稿内容の原文(検証対象は太字部分)と出典

除草剤ラウンドアップと、その主成分グリホサートがもたらす健康被害は、発がん性だけでなく、さまざまな分野で明らかになっている。発達障害など子供たちへの影響、妊娠や出産への影響、さらには世代を超えて受け継がれる悪影響などがある。いま世界では禁止を含む規制の流れが強まっている。

出典:藤田和芳氏(オイシックス・ラ・大地㈱代表取締役会長)のTwitter投稿(2021年4月13日午後4時23分)
https://twitter.com/DWMK_fujita/status/1381870757370753025

ファクトチェックの検証結果

藤田和芳氏は食材宅配大手オイシックス・ラ・大地株式会社の代表取締役会長である。当然、食を扱う企業のトップとして、食と農に関する言動には大いなる責任が伴う。

藤田氏はtwitterの投稿で、「除草剤ラウンドアップと、その主成分グリホサートがもたらす健康被害は、発がん性だけでなく」と「グリホサートの発がん性」に繰り返し言及している。しかしグリホサートの発がん性については、各国の規制研究機関が科学的な因果関係を否定し、安全性の高い農薬として世界157カ国で使用が認められている。【科学的根拠なし!】検証内容「発がん性のある除草剤グリホサート」藤田和芳氏(オイシックス・ラ・大地㈱代表取締役会長)でファクトチェックしたように、科学的根拠のない言説である。

藤田氏が、除草剤ラウンドアップと、その主成分グリホサートがもたらす健康被害の事例として挙げている発達障害の一種であるASD(自閉症スペクトラム障害)は、まだ原因、つまり発症のメカニズムが特定されていない。グリホサートとの関連性については、千葉大学社会精神保健教育研究センターの橋本謙二教授のグループが2020年5月に、米国科学アカデミー紀要の電子版に研究(実験)結果を発表した論文において、「グリホサートがASDの原因である可能性がある」という仮説を提示したにすぎず、科学的に証明されたものではない。論文内に、「本結果からヒトでの妊婦のグリホサートの摂取が、子どもにASD(自閉スペクトラム症)を引き起こすという結論は導き出せません」と明記され、橋本教授もインタビューなどで「関連を調べるには、今後、妊婦を対象とした大規模な追跡調査が必要」と言明している。

千葉大学の論文は、グリホサート入り飲料水を飲ませた妊娠マウスから生まれた子マウスの糞を調べると、そうではない子マウスと比べて、腸内細菌叢のバランスが乱れていたことから、腸内細菌叢のバランスの乱れが、ASDに関連していることを示唆している。しかし、その因果関係は明らかにされていないため、単なる相関関係といえる。因果関係が原因から結果が起る仕組みや過程のことなのに対して、相関関係は統計的な数値の類似にすぎず、科学的な見地では推論でしかない。

藤田氏は2020年10月11日のtwitter投稿で「妊婦マウスにグリホサートを投与すると、生まれてくる子マウスに自閉症の症状が起きた。」と投稿しているが、これは「グリホサートが自閉症を引き起こすかのような」誤解を与える不正確な内容のつぶやきである。千葉大学の論文で示されたのは、「妊娠中のマウスにグリホサートを投与した結果、その子どもに“ASDに似た行動”があらわれた」が正確で、人間のASDと同じものではない

グリホサートが原因でないのならば、何が子マウスにASDに似た行動を引き起こしたのか。最大の要因は、千葉大学の動物実験で使われたグリホサートの投与量があまりに大量だったからと考えられる。研究者自身が「本実験で用いたグリホサートは高濃度(0.098%)である」と言う。この濃度の水を体重およそ30gの妊娠マウスに与えたとすると、1日4.9mgのグリホサートを投与したことになり、体重1kg当たりに換算すると163.3mgとなる。

日本の食品安全委員会では、人間1人が1日に摂取しても安全なグリホサートの量を体重1kg当たり1mgとしており、実験でマウスに投与された量は実にその160倍以上だった。人間が摂取するのは物理的に不可能な量で、マウスに何らかの異常行動が生じても不思議ではない。

腸内細菌とASDに関係があるとする説はいくつかあるが、いずれも科学的に証明されていない相関関係を使った仮説、それもかなり無理がある推論ばかりである。たとえば、交番の数が多い地域ほど、犯罪件数が多いという事実があり、相関関係があるとはいえる。だからといって「交番が多いから、犯罪件数が多い」という推論が成り立たないことは明らかである。因果関係を明らかにせず、相関関係のみで推論すると間違った結論になることが多い。

藤田氏は2020年10月11日の投稿で「海外の動物実験では、肝臓や腎臓などに悪影響を与えることも分かっている。」ともつぶやいているが、動物実験の結果がそのまま人間に当てはまるわけではない。マウスは哺乳類なので、トカゲや鳥に比べるとずっと人間に近い動物ではあるが、言うまでもなく、マウスの実験結果がそのまま人間に当てはまるとはいえない。

神経科学の権威であるカルフォルニア大学サンディエゴ校のアリソン・ムオトリ教授は、「自閉症は多因子性のヒトの状態で、意義のある精度でマウスやサル等でこれを再現することは非常に困難である」と述べているほか、「ASDの研究は、マウスを使った信頼性の低い動物実験のせいで遅れている」と主張している。「iPS細胞の開発など新しい技術で可能になった、培養した人間の神経細胞を使った実験の方が、よりASDの研究は進むだろう」と予測している。(https://www.hsi.org/news-media/autism-research-animal-models-muotri-jp-033015/?lang=ja などを参照)

千葉大学の実験で明らかになったのは、グリホサートの危険性ではなく、むしろ「グリホサートとASDの関連性が確認できなかった」ことである。したがって、「(グリホサートがもたらす健康被害には)発達障害など子供たちへの影響がある」という投稿は、「科学的根拠なし」評価基準と判定)と判断される。

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