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環境団体のプロパガンダに騙されるな! 有機使用農薬の誤解を解いて使いこなす方法とは

ニュース

慣行農業の危険性を刷り込むプロパガンダ

アメリカの「Genetic Literacy Project(遺伝子リテラシープロジェクト=GLP)」は、資金の独立性を保ちながらバイオテクノロジーのイノベーションに関する情報を収集・分析し、調査結果を発表している。

多くの環境団体は、従来型の慣行農業は遺伝子組み換え(GM)作物を栽培するしないにかかわらず、大量の農薬を使用している。それに対して有機農業は農薬不使用の農業である、と一般の人々に刷り込もうとしている。しかし、これは正確ではない。こうしたプロパガンダの結果、多くの消費者はどんな化学物質が危険なのかについて混乱し、オーガニックフードがもれなく従来型の慣行農法の作物よりも人体に「より安全」だという間違った認識を持つことになってしまう。例えば、「The Soil Association in the UK(英国土壌協会))は、95%の消費者が「全ての農薬を避けるためにオーガニックフードを購入する」と回答した、という意識調査の結果を発表した。

多くのGM作物反対運動の活動家は、慣行農業で使われる農薬が、人間、動物や環境にとって危険なものだと指摘してきた。代表的なものが、グリホサート系除草剤や2,4-D(2,4-ジクロロフェノキシ酢酸)などである。GM作物反対運動の組織である、 「The Environmental Working Group(環境ワーキンググループ)」は2,4-Dについて以下のように記している。

研究者によると、2,4-Dは甲状腺機能低下症、免疫機能低下、パーキンソン病、がん、そして他の深刻な疾患につながると報告されている。農業従事者は散布の際に2,4-Dを吸い込んだり皮膚に付着したりする可能性がある。この化学物質は、散布された土地から近隣へ流出する可能性がある。人々に付着して家へ持ち込まれるかもしれない。その害は農家のみならず散布地域近隣に居住している人にも及ぶかもしれない。

標的にされたグリホサート

2015年にWHOのがん研究部門である国際がん研究機関(IARC)は、一般に広く使われているグリホサート系除草剤について「おそらくヒトでの発がん性があると考えられる」と公表し、波紋を呼んだ。

IARCは確かにグリホサートの使用者(散布者)について言明したが、ほとんどの活動家が焦点を当てている食品への残留物における危険性は明言するのを避けている。そして、この危険性の格付けは現実社会の中のばく露に基づくものではない。世界の食品安全を担う各国各地域の規制当局は、ばく露についても考慮しているが、推奨された使用量を守っている限り、使用者にも消費者にも健康被害は確認されていない、という一貫した知見を表明し続けている。IARCの規定はこの流れから外れるものであるにもかかわらず、有機農業の活動家と反化学物質活動の支持者グループはIARCの見解を元に、グリホサートとグリホサート耐性GM作物の使用を禁止すべきだと主張している。

天然でも合成でも毒性あり

もちろん有機農法の農家も普通の農家と同様に農薬を使用する。違うのは、例外はあるにせよ、有機農業では「自然界にある」農薬を使用するということだけだ。その一例が硫酸銅で、これは温帯気候の地域で殺菌剤として使用される。一般農家では(化学)合成農薬の代替品があるものの、硫酸銅は有機農業と慣行農業の両方で使用され、「天然由来成分」の殺菌剤だが“毒性”はある。

天然成分か合成成分かを問わず、完全に安全な農薬は存在しない。同様に、有機農業の作物が慣行農業に比べて必ずしもより危険性が低いというわけではない。有機農法=無農薬も事実ではない。科学者兼科学ジャーナリストのChristie Wilcoxはサイエンティフィック・アメリカンの記事の中で「(有機農業でよく使われている)硫酸銅は(天然由来成分の)銅粉を硫酸と合成することで作られている化学物質である。」と書いている。

世の中にはオーガニックフードにまつわるたくさんの神話にあふれており、ほとんど理解されていない方法を支持するたくさんのプロパガンダにあふれている。有機農業は他の形態の農業とちょうど同じように、作物に害を与える生き物を防ぐために今でも殺虫剤や除草剤を使用している。長年、自然界に存在する成分の殺虫剤(例えば、ある種の植物の中にはそういった物質を分泌するものがある)はどういうわけか人工的なものよりも人体と環境によって良いと思い込まれてきた。しかしながら、毒性に関する研究が進むにつれ、これもまた正しくないことが分かってきた。多くの天然由来の殺虫剤は、潜在的に、或いは深刻に、健康被害の恐れがある事が判明した。

オーガニック承認農薬だから100%安全・安心は間違い

硫酸銅は 「USDA(アメリカ合衆国農務省))の全米オーガニックプログラムで承認されている多くの農薬の一つである。だが、人体、動物、益虫や環境に対する毒性が高いことが、多くの研究によって示されている。例えば、殺菌剤として用いられた場合はミツバチにとって有毒である。加えて、土壌に銅が蓄積して汚染されたため、フランスやアメリカなどの複数のワイナリーではオーガニックワインの醸造をやめたところもあり、ヨーロッパでは硫酸銅殺菌剤の禁止も視野に入れて検討されている。

硫酸銅は銅粉が硫酸と合成されることで生じる化学物質であり、米国では1956年から農薬として使用登録されている。その機能は、銅原子がタンパク質に結合してタンパク質の構造を変化させることによって細胞を取り囲んでいる細胞膜が破れ、細胞死を引き起こす。硫酸銅は菌類、藻類の駆除に効果的であり、カタツムリさえこの方法で殺すことができる。
「The National Center for Food and Agricultural Policy(米国全国食糧農業制作センター)」によると、有機農法でよく使用される殺菌剤は銅と硫黄であり、慣行農業でも使用される。

硫酸銅は農業以外でも使用されており、スイミングプールの藻類駆除や自然界の湖の藻の発生率を下げることにさえ使われている。そして、他の多くの化学農薬と同様に菌類や藻類の中には硫酸銅に対して耐性を持つものが現れた。それがこの60年間の使用で生じた大きな変化である。

硫酸銅は人間や大型動物にも健康被害をもたらす。その作用は菌類だけに特有のものではないからで、皮膚や眼の炎症に関係し、大量に吸い込むと吐き気・嘔吐・組織損傷の原因となりうる。がんの発生にはつながらないとされているものの、長期的暴露による影響はいまだに判明していない。

社会を豊かにする農薬使用の判断基準

製造は他の化学物質と同様に工場で行われる。硫酸銅は、その低価格さと有効性から、有機農業コミュニティの間ではほぼ代替品のない化学物質であると考えられている。また、多くの慣行農家でも硫酸銅は普通に用いられているが、慣行農家には硫酸銅に替わる、特定の用途に合った代替合成薬剤もすでに存在している。

これまで慣行農業で使用されるグリホサート、2,4-Dや他の化学物質は多くの注目を集めてきたが、環境問題に関心のある消費者にとって有機農業の土壌で何が使われているかを知ることは同じように重要である。そして当然、合成成分の農薬に対する多くの批判は硫酸銅にも同様に向けられるべきだろう。単にある環境下で一定の危険性があるからといって、いかなる化学物質の使用も差し控える、と安直に決定するべきではなく、化学物質がなければ、私達の社会は食料の大幅増産・安定供給という「緑の革命」を起こすことはできなかっただろう。焦点を当てるべきは誤用や乱用であって、単純な使用の是非についてではない。

農家や規制・管理当局、そして一般消費者は、化学物質が「合成化合物」か「天然由来」かの違いに安直に着目してはならない。判断基準は、何が最も効果的かつ、持続可能な環境に最も適した作物保護製品(天然由来、合成由来農薬含む)か、ということであるべきだ。この判断基準に基づいて選ばれた最も有益な作物保護製品を農家が使用する際に求められる条件とは、行政的に適切に管理され、農家や消費者にとって安全であることだ。農薬をリスクと効果、コストとベネフィットを秤にかけながら適切に使用することで、広く大きな経済的利益を上げることができるだろう。

原文

有機農業の農薬である硫酸銅が人体、動物、虫を脅かす(GLP 2018年11月16日と2020年7月23日掲載、著者Andrew Porterfield)より翻訳・抜粋

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