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【誤り】検証内容「グリホサートの影響を減らすには食事を有機に切り替えることが最も確実な方法だ」猪瀬 聖氏(ジャーナリスト)

食と農のウワサ

「グリホサートの影響を減らすには食事を有機に切り替えることが最も確実な方法だ」猪瀬 聖氏(ジャーナリスト)

AGRI FACTによるファクトチェック結果

事実関係に誤り

その理由は?

通常食をとる人の尿中グリホサート濃度は「健康に影響を与えない」レベルであるにもかかわらず、「ごく微量のグリホサートが健康に悪影響」という誤った印象を読者に与えているため。

AGRI FACTのファクトチェック【対象と選択基準】
AGRI FACTのファクトチェック【評価基準と判定】


以上の要旨はAGRI FACT事務局が作成したものです。
詳細は以下でご確認ください。

農と食にまつわる噂・ニュース・風評の「ウソ?本当?」を検証するサイトAGRI FACT(アグリファクト)は2020年9月1日、「グリホサートの影響を減らすには食事を有機に切り替えることが最も確実な方法だ」猪瀬 聖氏(ジャーナリスト)との投稿についてファクトチェックを行い、「事実関係に誤り」とする調査結果を発表した。

ファクトチェックした記述内容

「グリホサートの影響を減らすには食事を有機に切り替えることが最も確実な方法だ」

記述内容の原文(検証対象は太字部分)と出典

地球の友らの研究では、16人から採取した合計158の尿サンプルを分析した結果、全サンプルの93.7%からグリホサートが、96.9%からAMPAが検出された。グリホサートやAMPAが検出されなかった参加者は1人もいなかった。
6日目から食事を有機食品に切り替えると、グリホサートとAMPAの尿中濃度が、平均してそれぞれ70.93%、76.71%減少した。
<中略>
調査チームは、グリホサートを対象としたこの種の調査は「初めて」と強調した上で、「今回の研究からわかることは、(農業従事者などを除く)一般の市民にとっては、グリホサートに曝露する最大の原因は普段の食事であり、このため、グリホサートの影響を減らすには食事を有機に切り替えることが最も確実な方法だ」と指摘した。

出典:猪瀬 聖氏(ジャーナリスト)のWeb記事(2020年8月25日公開)https://news.yahoo.co.jp/byline/inosehijiri/20200825-00194886/

ファクトチェックの検証結果

国際環境保護団体の「地球の友」に所属する米国の科学者らは、同記事によると「米国内の各地から4家族を選び、4歳から15歳までの子ども9人を含めた計16人に、まず普段通りの食事を5日間続けてもらい、6日目からは朝昼晩とも、農薬や化学肥料を使わずに生産した有機農産物のみを使った食事に切り替え、6日間、継続してもらった。

そして「16人から採取した合計158の尿サンプルを分析した結果、全サンプルの93.7%からグリホサートが、96.9%からAMPA(*グリホサートが体内で変化し生成されるアミノメチルリン酸)が検出された。

6日目から食事を有機食品に切り替えると、グリホサートとAMPAの尿中濃度が、平均してそれぞれ70.93%、76.71%減少した。」などと猪瀬氏は調査結果の概要を述べたうえで、
調査チームの結論として
「『今回の研究からわかることは、(農業従事者などを除く)一般の市民にとっては、グリホサートに曝露する最大の原因は普段の食事であり、このため、グリホサートの影響を減らすには食事を有機に切り替えることが最も確実な方法だ』と指摘した。」と書いている。

しかし、「グリホサートの影響を減らすには食事を有機に切り替えることが最も確実な方法だ」という調査チームの結論は、読者に著しく誤解を与えるものであると言わざるをえない。

公表された論文が示している科学的事実は「通常食から有機(オーガニック)食品に切り替えると、尿中のグリホサートとAMPAが減少すること」と、「通常食を食べている人たちの尿サンプルから検出されたグリホサートとAMPAの平均尿中レベルが、0.83ng/ml(=0.00083mg/l)と0.59ng/ml(0.00059mg/l)だったこと」、そして「全部の尿サンプルから検出されたグリホサートの尿中レベルは非検出から6.22ng/ml(=0.00622mg/l)の範囲で、AMPAでは非検出から1.96 ng/ml(=0.00196mg/l)の範囲であったこと」である。

農場などに散布されたグリホサートは急速に分解するため、作物や水、空気中など環境中に存在するグリホサートの量は極めて微量である。しかし存在はしているため、人の尿を検査すると通常1~10μg/ℓ(1μgは0.001mgなので=0.001〜0.01mg/ℓ)のグリホサートが検出される。

この尿中レベルをどう見るかだが、グリホサートのADI(一日摂取許容量)は「体重1kgあたり1mg/日」であり、体重60kgの大人であれば、1日の摂取許容量は60mg(体重30kgの子供なら30mg)となる。

その60mgと、尿から検出される0.001〜0.01mg/ℓを比較すると、許容量のわずか6万分の一~6000分の一というごく微量であり、健康への影響はない(無害)というのが科学的な判断である。

地球の友が集めたサンプルの尿中レベルは、通常食の期間を含めて、すべて健康に影響を与えない正常レベルの範囲内か範囲以下である。

たしかに有機食品に切り替えると、グリホサートとAMPAの尿中レベルが「平均してそれぞれ70.93%、76.71%減少した」ことは事実だが、論文は通常食の尿中レベルのグリホサートが健康に影響を与えるかについては何も調査していないし、論文内ではそのことに言及すらされていない。

地球の友の調査チームと猪瀬氏の引用および解説は、論文で示された科学的判断に必要なデータを読者に隠したまま、論文が調査・言及していない「グリホサートの影響を減らすには」という科学的根拠のない論点を提示して、「ごく微量のグリホサートが健康に悪影響」という誤った印象を読者に与えている。

ゆえに、「グリホサートの影響を減らすには食事を有機に切り替えることが最も確実な方法だ」とする記事内の結論は、検証対象の情報・言説(仮説)に関して、著しく妥当性・信頼性を欠いていることから、「事実関係に誤り」(【評価基準と判定】)と判断される。

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