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2. 農薬がないと満足につくれない作物がある【農薬をめぐる重要な10項目】
農薬は農作物の収量や品質を維持し、商品価値を高める役割を果たしています。農薬を正しく使うことで、病虫害や雑草から農作物を守ることができるので、病害虫防除や除草の効率が高まり、労力とコストを削減することができます。
歴史的に有名な国内外の飢饉の原因が、害虫や作物の病気の 大発生であったこともあります。一般的に農薬を使わないと病害虫や雑草によって、たとえば米の出荷金額なら 20〜40%減、桃は80%減、りんごでは壊滅状態になるという調査報告があり、農薬なしで、現在の生産レベルを維持するのはむずかしいことがわかります。
農薬を適正に使えば、農作物を有害な生物から守り、収量や品質を維持し、商品価値を高めることができます。農薬は農業生産に重要な役割を果たしています。
労力とコストを削減
農作物は自然環境と隣り合った農地で栽培されるので、いろいろな病気にかかったり、害虫や雑草の被害にあったりします。病気になれば、作物は枯れ、果実も腐ります。害虫は葉や根を食い荒らし、時には作物の病原体を媒介します。農業では、こうした被害から農作物を守り、高品質で十分な量の作物を収穫しなければなりません。
これまで人々は、病害虫や雑草から農作物を守るために多大な努力をしてきました。病害虫に強い品種の利用、栽培法を変えたりする耕種的防除、ビニールシートや敷きわらによる雑草 抑制などの物理的防除、天敵を利用した生物的防除などが行われていますが、大変な労力を必要とし、コストもかかります。 農薬を使えば、少ない労力とコストで安定した効果を得ることができます。
(2)病害虫や雑草による被害はどのくらい?
病害虫の有効な防除方法がなかった時代では、農作物の被害は人々に大きな影響をもたらしました。たとえば、1732年に西日本や九州地方一帯を襲った享保の飢饉は、ウンカやイナゴの大量発生で稲作が壊滅的な被害を受けたことによります。1845年、アイルランドで主食であるジャガイモの疫病が大発生して、ジャガイモが収穫できず悲惨な飢饉が生じました。ドイツのエルケ博士らは、全世界の潜在損失について、生産金額についてみると、病害による損失量が18%、害虫によるものが23%、雑草は29%と分析しています。つまり、病害虫や雑草を防除しなければ生産できる農作物の生産金額は、潜在的な収量のわずか30%にすぎないと1994 年に報告しています。
一般的な栽培方法で、農薬を使わないと病害虫や雑草によってどのような影響がでるのでしょうか。(一社)日本植物防疫協会や(公財)日本植物調節剤研究協会により調査が行われました(表2-3)。米の出荷金額は20〜40%減、りんごの収穫は壊滅状態となり、葉菜類に大きな被害が出ました。農薬による病害虫防除対策を行わないと、農作物の収穫量が大幅に減少するばかりでなく、収穫物の品質が低下するため、収量の減少率以上に出荷金額が減少することがわかりました。
表2-3 農薬を使用せずに栽培した場合の病害虫などによる、収量と出荷金額の減少率
(3)農薬なしで、現在の生産レベルを維持するのはむずかしい
家庭菜園のように栽培面積が狭く、いろいろな種類の作物を栽培している場合は、病害虫の被害が目立たないこともありますが、一般的に栽培面積が大きくなればなるほど、また同じ作物を長い間連続して栽培をすればするほど病害虫による被害を受けやすくなります。りんごやもものように病害虫の被害による影響が特に大きい作物もあります。
ですから、農業生産現場では病害虫や雑草の防除が不可欠で、農薬を使用しないで、現在の品質や収量、経済的な生産レベルを維持するのは難しいのです。
※この記事は、NPO法人くらしとバイオプラザ21発行の「『メディアの方に知っていただきたいこと』シリーズ 農薬編」を許可を得た上で転載したものです(一部AGRI FACTが再編集)。
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