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【誤り】グリホサートが土壌の微生物に悪影響を与える 印鑰智哉氏(民間稲作研究所・種子の会とちぎアドバイザー)
「グリホサートが土壌の微生物に悪影響を与える」印鑰智哉氏(民間稲作研究所・種子の会とちぎアドバイザー)
AGRI FACTによるファクトチェック結果
その理由は?
農薬評価や長年の研究で土壌・土壌の微生物への悪影響はないとされているから。
AGRI FACTのファクトチェック【対象と選択基準】
AGRI FACTのファクトチェック【評価基準と判定】
以上の要旨はAGRI FACT事務局が作成したものです。詳細は以下でご確認ください。
農と食に関する事実をフェアな立場で提供するサイトAGRI FACT(アグリファクト)は2021年6月10日、「グリホサートが土壌の微生物に悪影響を与える」印鑰智哉氏(民間稲作研究所・種子の会とちぎアドバイザー)との投稿についてファクトチェックを行い、「科学的根拠なし」とする調査結果を発表した。
ファクトチェックした投稿内容
「グリホサートが土壌の微生物に悪影響を与える」
投稿内容の原文(検証対象は太字部分)と出典
グリホサートが与える広範な影響も明らかになってきている。米国の裁判ではグリホサートがガンの原因となったことが争点になっているが、人の健康に悪影響を与えるだけでなく、ハチや蝶の激減(1)、さらには土壌の中の微生物にも悪影響を与え(2)、そして害虫や病原菌への植物の防御機能にも悪影響を与えることが指摘されるようになった(3)。
出典:印鑰智哉氏(民間稲作研究所・種子の会とちぎアドバイザー)のFacebook投稿(2021年4月22日 午前10時32分)
ファクトチェックの検証結果
農地に散布されたグリホサートの分解については多数のデータがある。除草剤ラウンドアップの有効成分グリホサートは土壌中の微生物と光によって分解される。条件によって違うが、早ければ2、3日、遅くとも60日ごとに半分に減少する。詳しいデータは、「食品安全委員会の『農薬評価書 グリホサート』2016年7月にあるので、参照されたい。
農業現場での使用法としては、雑草が生えた畑にグリホサートを散布し、雑草が除去されたあとに農作物の種をまく。発芽する頃にはグリホサートは分解されて土壌中から消失しているため、発芽した作物は雑草と同じ植物でも枯れずに成長することができる。農家は農作物の生育不全や土壌汚染、作業者の健康被害を心配せずに安心して使用できるのだ。
散布されたグリホサートは、その大部分がAMPA(グリホサートが体内で変化し生成されるアミノメチルリン酸)へと変化する。AMPAは毒物ではなく、かりに飲食物を介して微量のAMPAが体内に入ったとしても、人体に何かの作用をするとは考えられない。食品安全委員会が行ったグリホサートの安全性評価でも、AMPAの安全性は確認されている。
分析化学が進歩した現在は、1ppb(1グラム中に0.000000001グラム)程度という微量の化学物質が測定できるようになり、土壌を測定すると、あらゆる種類の化学物質が微量とはいえ検出される。しかしながら、検出限界値に近い程度の微量は土壌汚染とは言えない。
グリホサートが土壌中の微生物数や微生物のもつさまざまな能力に与える影響についても、マイナスの影響からプラスの影響まで長年にわたって調査・研究され、通常の使用量では影響がない、あるいは一時的に微生物数が減少しても短期間のうちに回復するという報告が得られている。
したがって、「グリホサートは土壌の微生物に悪影響を与える」という投稿は、「科学的根拠なし」(評価基準と判定)と判断される。