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第28回 オーガニック給食問題まとめ(後編)【分断をこえてゆけ 有機と慣行の向こう側】

コラム・マンガ

問題点③ 反医療運動、陰謀論団体、カルト宗教、マルチ商法等との接点

オーガニック給食推進に関わる市民団体やその中心人物、ときには推進を掲げる地方議員・国会議員自身が、これらとの接点を持っている、あるいは当事者として関わっているケースが、無視できないほどの規模で観察されている。

例えば、ある推進団体の代表者は自身が主宰するセミナーで「ディープステートとの戦い」をテーマに掲げ、2021年の米議会襲撃事件の背景となった陰謀論「Qアノン」思想の影響下にあることを感じさせる。

また、「子どもの障害は全て親の食生活が原因」などの差別的発言で知られる反医療インフルエンサー・内海聡氏をゲストに迎えた動画をたびたび配信している(なお、全国オーガニック給食フォーラムで結びの挨拶をおこなった元農水大臣の山田正彦氏も、内海氏とは何度も対談するなど友好関係にある)。

別のある推進団体は過去に、米国の有名カルト宗教の国内関連団体から会場提供などの協賛を受けており、その代表者ともシンポジウム等で共演している。
同団体の代表者は著書等で「発達障害は医療業界の陰謀によってつくられた疾患である」と主張している。

オーガニック給食運動を隠れ蓑として、これらの活動への勧誘や名簿収集等に利用される危険性も考えられる。
しかし、仮にそこまで直接的ではなかったとしても、推進団体に関わるなかでメンバー同士の市民の内部で予防接種への忌避感情が広がったり、マルチビジネス商品に触れる機会などが増加すれば、将来的な健康被害や金銭的被害の発生は十分に予見できる。
運動拡大に利するからといって野放しにして良い問題とは思えない。

さらに最も深刻な点は、省庁や自治体、議員がこれらの活動に対し、十分にチェックしないまま無防備に連携や支援をおこなってしまうことだ。
結果的に公的な「お墨付き」を与えた格好になり、その拡大を助長している。

オーガニック給食運動を支援したつもりが、蓋を開けてみればワクチン陰謀論などの反医療運動や特定のマルチビジネス等に利することになっていた、というケースはすでに各所で発生していると考えた方が良い。

旧統一教会問題のように後になって大きく社会問題化した際には、「まさかそのような団体とは存じ上げなかった」とでも言えば済むと思うだろうか。

もし省庁、自治体、議員ともに、それぞれ何らかの思惑や皮算用があってこのような現状を黙認のうえで便乗しているのだとすれば、自らを恥じ、早急に対応をあらためていただきたい。

参考記事

問題点④ ①〜③を通じた運動の先鋭化、自己目的化

ここまで指摘してきたように、市民運動としてはあまりに荒削りで、議論が不足しており、不必要に周囲を傷付けながら広がりを見せているというのが、オーガニック給食運動の負の側面であると言える。

新しい運動に荒削りな面があるのは仕方ないとしても、推進をリードする立場の運動家や専門家、議員までがこれらに無批判に同調していたり、あまつさえその影響力を悪びれもせず利用するような態度では、今後の改善を望むべくもない。

「オーガニック給食にすれば良いことがある」という希望を「オーガニック給食にしなければ恐ろしいことが起きる」という呪いにすり替え、その実現が絶対善として疑われることなく自己目的化していく。

現行の給食が抱える本当の課題や改善点、地域の食文化の持続可能性といったグランドデザインを考える視野が欠落し、ただ声の大きさ・強さに頼るばかりの運動が、広く市民権を得られるようになっていくとは考えられない。

オーガニック給食実現の課題としてしばしば「調理現場や栄養士の無理解、温度差」が挙げられるが、仮に無意識的にせよ、この様な捉え方には「自分たちの方が正しいのに、相手方の無知・無理解により話が進まない」という不満が透けて見える。

こうした正義の押し付けは有機農業運動が幾度となく繰り返してきた失敗を再びトレースするものであり、後に続く若い有機生産者のためにも、断ち切らなければいけない。
前向きに捉えれば、生活者がこのような運動を通じて農業現場を知り、理解を深めることで、結果的にオーガニックにこだわりすぎない適切な落とし所に辿り着くような事例も生まれてくるかもしれない。

まずは①〜③に挙げたような問題を当事者たちが認識し、距離を置くこと。
その上で、対話を通じて「そもそもなんのためにオーガニックを目指すのか」を絶えず問い直し、強硬な自己目的化から抜け出し、「オーガニックの先にどのような社会を目指すのか」という建設的な議論に発展させていく必要がある。

おわりに

ここまでに何度か「分断」という言葉を使ったが、コロナ禍やSNSなどによって急激に加速した社会の分断は、米大統領選やQアノン現象などに象徴されるように今や世界規模の深刻な課題となっており、食の分野のみを切り取って解決できるようなものではない。

山田正彦氏がプロデュースした映画「食の安全を守る人々」には、全国オーガニック給食フォーラムの実行委員らも多数関わっているが、例えば出演者のうちロバート・F・ケネディ・Jr氏は、「新型コロナワクチンに関するデマ発信源12人のひとり」として多額の利益を得たことで世界的に報道されている、いわばパブリックエネミーとも言うべき問題人物である。

そのような人物が「食の安全を守る」英雄的に描写されていることに、関係者の誰一人として異を唱えない現状は極めて異様であり、根深い社会病理が横たわっていると考えざるを得ない。

オーガニック給食に関わる当事者たちがこれらの課題点から目を逸らし続ければ、長期的には有機農業への理解や普及をかえって阻害し、ネガティヴな影響さえ与えかねない。
それが本当にこれからの有機農業者や子どもたちのためになるのかどうか、立ち止まっての再考と議論を期待したい。

参考文献

〜前編はこちら〜

【分断をこえてゆけ 有機と慣行の向こう側】記事一覧

筆者

間宮俊賢

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