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パンの成分分析でグリホサートが検出されました。これは大変な問題ではないですか?
A 安心してください。化学物質の毒性(人体への影響)は量に比例し、多量なら毒性が高く、少量なら無害という特性があります。この特性を利用して化学物質の安全性は量の規制で守られているのです。
日本の食品安全委員会はグリホサートの一日摂取許容量(ADI)を1mg/kg体重/日と設定しています。一日摂取許容量というのは、ある物質を毎日一生涯にわたって摂取しても健康に悪影響がないと判断される量のことです。
一日摂取許容量の設定に当たっては、子供など影響を受けやすい人と、そうでない人との個人差もしっかりと考慮されています。ADIは体重当たりの量で決めているので、摂取しても安全な量は体重によって違い、体重50kgの大人なら一日50㎎、体重15kgの子供(約4歳)なら1日15㎎までなら害はないといった具合です。
ご質問にあった市民団体の調査では、市販のパンから0.1~1.1ppm(0.1~1.1㎎/kg)程度の量が検出されたようです。
最も多い1kg当たり1.1㎎のグリホサートが残留したパンの摂取量に換算すると、大人なら1日で約50kg、4歳児は1日で約15kg以上食べ続けないと一日摂取許容量に達することはありません。摂取不可能な量だと理解できるはずです。
グリホサートは土壌中で短時間で分解され、環境中や農作物にほぼ残留しませんが、分析法が進歩して、これまでは測定できなかったような微量の化学物質も測定できるようになっただけなのです。微量の化学物質は数多くの食品に含まれていますが、ごく微量であれば健康に影響することはありません。
そろそろ「グリホサートが農作物に残留していた」ことだけをもって危険視するのはやめましょう。同様のニュースが流れてきても「どれだけの量が残留していたのか。どれだけの量を食べたら一日摂取許容量を超えるのか。どの量までなら人体に無害なのか」を見極め、冷静に判断してください。
回答者唐木英明(公益財団法人食の安全・安心財団理事長・東京大学名誉教授) 回答日2019年10月26日 |
注:商品名『ラウンドアップ』の有効成分名は「グリホサート」と言い、Q&Aでは2つの名称をその都度使い分けていますが、実質的には同じものだとご理解ください。