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1. 食品添加物の安全性は科学的に評価されている【食品添加物をめぐる重要な10項目】
食品添加物は、安全性と有用性が確認され、厚生労働大臣が指定する「指定添加物」と、いわゆる天然添加物である「既存 添加物」、「天然香料」、「一般飲食物添加物」に分類される。各種の毒性試験により、食品添加物の安全性は科学的に評価されている。また、一日摂取許容量(ADI)が決められ、それを超えないように使用基準が決まっている。
食品添加物は食品とともに毎日、一生涯摂取されるので、安全性が確保されたものでなければなりません。添加物の指定にあたっては動物試験による一般毒性試験や繁殖試験、発がん性試験など特殊試験が行われ、科学的に安全性が評価されています。
(1)食品添加物とは?
食品を保存したり、加工したりするときに保存料や調味料として使われるような物質を食品添加物と言います。食品衛生法では、「食品の製造の過程において又は食品の加工もしくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によって使用する物」(4 条 2 項)と食品添加物を定義しています。
食品添加物は、安全性と有用性が確認されて厚生労働大臣が指定した「指定添加物」といわゆる天然添加物である「既存添加物」、「天然香料」、「一般飲食物添加物」に分類されます(図3-1)。
既存添加物は、かんきつ類の果皮に含まれるペクチンや砂糖を加熱した時にできるカラメル色素のように食経験のある食品の原料から作られ、長い間使われてきた天然添加物で、厚生労働大臣が使用を認めているものです。天然香料は、レモンの皮から分離したレモン香料のように植物や動物を起源とする香料です。一般飲食物添加物は、通常は食品として使っていますが、食品添加物のような使い方をする添加物をいいます。例えば、オレンジジュースをお菓子の着色目的で使用する場合などです。
(2)食品添加物の指定
指定添加物は品目が決められ、リストに収載されています。 これには、合成添加物や天然添加物の区別はありません。1995年の食品衛生法の改正以降、新たに許可される食品添加物は、すべて食品安全委員会により安全性を評価され、厚生労働大臣の指定を受けて「指定添加物」になります。食品添加物として指定されるためには以下の条件があります。
(1)安全性が実証または確認されるもの。
(2)使用により消費者に利点を与えるもの。
①食品の製造、加工に必要不可欠なもの。
②食品の栄養価を維持させるもの。
③腐敗、変敗、その他の化学変化などを防ぐもの。
④食品を美化し、魅力を増すもの。
⑤その他、消費者に利点を与えるもの。
(3)既に指定されているものと比較して、同等以上か別の効果を発揮するもの。
(4)原則として化学分析等により、その添加を確認し得るもの。
添加することにより、粗悪な食品をごまかしたり、食品の栄養価を低下させたりする物質は、指定されません。また、病気の治療や医療効果を目的とするものも認められません。
(3)安全性の評価
食品添加物は安全性が十分に確認されたものでなければなりません。2003年に、国民の健康の保護を目的とした食品安全基本法が制定され、リスク分析により食品添加物の安全性を判断するようになりました。リスク分析はリスク評価、リスク管理およびリスクコミュニケーションからなり、ヒトに悪影響が出ない量を科学的に判断し、管理する体制をとっています。使用基準は、それぞれの食品添加物について行った動物実験の結果から求めたADIをもとに、様々な食品からその食品添加物を摂取してもADIを超えないように定められています(科学的な情報の読み方と伝え方 5. ADI(一日摂取許容量)の考え方参照)。
すでに指定されている添加物でも、安全性を評価するための分析技術や毒性学などの知見は年々進歩しているので、現時点での科学水準にあわせて再評価することが必要です。そこで、厚生労働省では、定期的に安全性再評価の会議を行なっています。また有効性や必要性の面からも見直しが行われており、使われなくなった食品添加物はリストから削除されています。
国際的には、国連組織の中のFAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)が協力して、JECFA(FAO/WHO 合同食品添加物専門家会議)を設け、食品添加物の安全性を評価し、各国に情報を提供しています。また、世界中の人たちの健康を守り、食品の公正な取り引きを行うために組織されたFAO/WHO 合同食品規格委員会(CAC または Codex委員会)の国際食品規格(Codex規格)では、JECFAによる安全性評価をもとに食品添加物の規格基準や使用基準の設定を行っています。
(4)世界の食品添加物
食品の流通が国際的に行われるようになり、日本にも世界中からたくさんの食品が輸入されています。国際社会では、食品添加物も原材料の一部として考えられているので、食品添加物を表示することは世界で共通しています。けれども、国によって使える種類や用途が違うので、輸入された食品に輸出先の国で認められていない食品添加物が使われていたり、逆に輸出した食品が輸出先で返送されたり、廃棄されたりすることがあります。そこで、食品添加物の分野でも各国の法規制を見直し、考え方や規格を統一しようという動きが進められています。それが前述した国連組織での取り組みです。
米国では食品添加物は、GRAS(Generally Recognized As Safe)物質、Food Additives(食品添加物)、色素添加物、既認可物質に分けられます。GRAS物質は「一般に安全とみなされる物質」で、当初は、従来から使用されていた実績を根拠に、特に安全性の試験をしなくても使用が認められる物質をいいました。例えば、天然調味料、着香料、スパイスなどが含まれます。食品医薬品局で安全性を検証した結果、除外された物質もあり、最近では安全性の試験結果をもって判断されるようになっています。Food Additivesには、食品の製造に直接使用する直接食品添加物と食品の容器や包装に使われる間接食品添加物があります。
ヨーロッパでは、多くの国が加盟しているEUで食品添加物を統一しようという動きから、強制力のある規制(Regulation)を作り、一元的に管理しています。食品が国境を越えて流通するため、物質名のかわりにEU諸国共通の番号(E番号)を使用してもよいなどの工夫がされています。
※この記事は、NPO法人くらしとバイオプラザ21発行の「『メディアの方に知っていただきたいこと』シリーズ」にある「食品添加物編」を許可を得た上で転載したものです(一部AGRI FACTが再編集)。