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7.「天然物は安全、化学物質は危険」と判断するのは誤り【食品添加物をめぐる重要な10項目】
平成7年に食品衛生法が改正されるまで、化学合成品と異なるいわゆる天然添加物に法的規制はなかった。そのため、科学的な安全性が確認されていないものも多かったが、現在は既存添加物としてリスト化され、安全性の確認が順次行われている。これまで、発がん性が認められたものが1品目あり、速やかにリストからはずされた。
平成7年に食品衛生法が改正されるまでは、化学的合成品と異なりいわゆる天然添加物に対しては法律の規制はありませんでした。消費者の間でも「天然品は安全で体によい」という感覚が強く、食品メーカーの天然添加物の使用は増大しました。天然添加物の多くはすでに長期間にわたり、経験的に使われてきたものですが、安全性が科学的に確認されているわけではありせんでした。そこで、食品衛生法の改正により天然添加物は「既存添加物」として1996年に489品目がリスト化され、合成添加物や天然添加物という表現は使われなくなりました。これは、天然添加物を既存添加物としておいて、リスト以外の天然添加物を使えなくするとともに、リスト化されたものについては安全性の評価を進めようという特例措置です。既存添加物の安全性の確認が順次行われ、2004年にアカネ色素に発がん性が確認されたため、リストから削除されました。また、流通の実態がないことを理由に、これまでに120品目以上が削除されています。
(1)合成添加物と天然添加物には安全性の違いがある?
かつて、化学的に合成されたものだけを食品添加物として法律で規制していたとき、法律の規制対象外であった天然添加物は、天然物を原料に水や溶剤で抽出したり、発酵させたりするなど化学合成以外の方法でつくったものでした。化学的合成品といっても自然界になかったものをつくりだしたというわけではありません。食品添加物として使われる成分を化学反応でつくったものが合成品、自然の条件でつくりだされたものが天然添加物です。
L-アスコルビン酸は、栄養強化剤や酸化防止剤として使われる食品添加物です。L-アスコルビン酸というと難しい化学物質のようですが、野菜や果物に含まれるビタミンCのことです。工業的にはデンプンや糖類を原料にして、微生物を利用した発酵法によってつくります。工業的につくったビタミンCも果物に含まれるビタミンCも同じ物質で、体の中に入ってからの作用も同じです。ビタミンCは果物などからも抽出できますが、天然物では資源に限りがありますし、成分も一定ではありません。工業的につくれば、資源の不足の心配もなくなりますし、品質を一定にできます。また、指定添加物は安全性を科学的に厳しく評価されてから認可されています。
天然添加物の原料の約75%は植物が原料で、その多くが食品から抽出されたものです。天然添加物は、人が長い間食べ続けていたものなので、安全性は経験的に保証されていると考えられていました。ところが、食用でない虫や植物、微生物などからも添加物がどんどん作られるようになりました。また、複数の成分を含むものや有効成分が明らかでないものもあります。天然添加物の中には、安全性に関する研究が不足しているものも少なくありませんでした。そこで、厚生労働省は平成7年の食品衛生法の改正後、順次安全性試験を進めており、安全性の検討が必要とされた139品目のうち、2017年2月現在で残すところ5品目となっています。
天然物にもフグ毒やカビ毒のように危険なものはたくさんあります。同じ物質であるならば、合成品であろうと、天然物であろうと、安全性に違いはありません。
※この記事は、NPO法人くらしとバイオプラザ21発行の「『メディアの方に知っていただきたいこと』シリーズ」にある「食品添加物編」を許可を得た上で転載したものです(一部AGRI FACTが再編集)。