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「日本では水道水に残留するグリホサートの基準値がなく、目標値だけ」さらにその数値も他の農薬や他国と比べて高く、農薬に汚染された水を飲んでいるという記述※が『週刊新潮(2020年4月23日号)にあります。水道水は飲んではいけないということですか。

食の疑問答えます

※記述の原文(抜粋):ラウンドアップもネオニコと同じで、雨が降ると河川に流れ、やがて水道水に流入する。ところが、日本では水道水に残留するグリホサートの基準値がなく、目標値だけ。 その数値も2mg/L(ppm)と、他の農薬に比べてダントツに高いのだ。(略)ちなみに EU では 0.001ppmだから、日本の水道水は、ラウンドアップの成分がEUより2万倍溶けていても飲めることになる。比較的ゆるいアメリカは0.7ppm。これを超えると「腎臓障害・生殖困難」を引き起こすと警告しているが、日本はこの3倍近くもゆるいのだ。これまで日本の水道水は「安全でおいしい」といわれてきたが、実際は農薬に汚染された水を飲んでいることになる。

「農薬に汚染された水」というのは完全な誤りです。日本の水道水は100%安全です。この筆者の言説には、読者を不安にさせる多くのミスリードがあります。

まずは散布されたグリホサートがそのままの濃度で河川、水道水に移行するような印象を与えていますが、実際は2日で半減するスピードで土壌中で減衰していきます。

次に日本の水道水では、高濃度のグリホサート残留基準値・目標値が設定されているように思わせる記述がありますが、この記述にも悪意があります。グリホサートに「基準値」がなく、「目標値」のみである理由は、水質基準値原案(毎日2Lの水道水を一生涯飲んだとしても安全な濃度)がグリホサートの場合は2ppmの10分の1である0.2ppmを超える濃度が水道水から検出されたことがなく、さらに言えば検出される恐れがないからです。実際に、日本の水道水ではグリホサートは0.02ppmを超える濃度の検出例がありません※。

仮にグリホサートのように検出される恐れがないにもかかわらず、基準値が設定されると、水道事業者(例えば各都道府県)は、その濃度を必ず検査しなくてはならず、水道中のすべての物質を検査することは非現実的だからです。基準値は本当に検出される可能性のあるものだけに設定されています。

では目標値はなんのために存在するのでしょうか。筆者は、「その数値(目標値)も2mg/L(ppm)と、他の農薬に比べてダントツに高いのだ」と述べていますが、水質基準値・目標値は「実際に水中に含まれる濃度」ではなく、「どの程度の濃度までなら安全か」という考え方で決められています。要するに、数値が大きいことは、それだけ多くを摂取した場合でも安全だという意味で、グリホサートの目標値が比較的高いのは人体にとって安全性が高いことの裏返しなのです。筆者の言説は目標値と基準値の意味を理解していない、もしくはあえて読者に誤認させるものです。

さらに「農薬に汚染された水」との記述がありますが、分解物を含むグリホサートに関しては、厚生労働省の調査※において、水道水から0.02ppmを超える検出例はありません。さらにその他の119種の農薬についてもほとんど検出例はありません。つまり農薬に汚染された水という主張や表現は、読者の不安を煽るだけの完全な間違いです。読者のためとは言えません。

※2011年(平成23年)年~15年(平成27年)年の5年間、日本全国、延べ2615地点での調査において、 0.02ppm(0.02 mg/L、目標値の1/100) を超過するグリホサートは検出されていません。
厚生労働省 平成29年度水道水及び水道用薬品等に関する調査等一式業務報告書
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000199548.pdf

詳細は、農薬工業会(週刊新潮第6回2020年4月23日号に関する農薬工業会見解)
https://www.jcpa.or.jp/news/pdf/news_200430_01.pdf をご覧ください。

※週刊新潮ファクトチェックより抜粋・再編集

『週刊新潮』(2020年4月23日号)掲載 グリホサート/ラウンドアップに関する記述を徹底検証2

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