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Vol.37 2025年を振り返る、謎食品たち【不思議食品・観察記】

コラム・マンガ

科学的根拠のない、不思議なトンデモ健康法が発生する現象を観察するライター山田ノジルさんの連載コラム。驚くべき言説で広まる不思議食品の数々をウォッチし続けている山田ノジルさんに、2025年印象に残った食品をあげてもらいました。食べるフェムケア、白い水、そしてサナ活ランチ!


SNSを盛り上げてくれた漫画原作のドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』が無事終わりましたね。食に表れる人生や価値観の変化を、楽しく堪能させてもらいました。『きのう何食べた?』のお手軽料理や『凪のお暇』の貧乏メシに続く、良きメニュー満載のドラマで、最終回は切なさあふれるブリ大根の味が気になりすぎました。さて、不思議食品界隈では今年、どんな謎食品があったでしょうか。個人的に印象深かったものを、この場をお借りして記録していきます。

解決するのか疑問沸騰の「食べるフェムケア」

盛り上がりきらぬままに、無難なサービスだけが生き残っている感のあるフェムテック(FemTech)※。市場規模はジワジワ成長しているようですが、一時期は雨後のタケノコかという勢いで発売されていた吸水ショーツなどは、すっかり停滞している雰囲気です。

そもそも「テック」というからには、画期的なものが登場するのかと期待していましたが、ここ最近の都内のフェムテックビジネスショーを見学して回っていると、前からあった商品の中身やパッケージに少し手を加えただけという印象のものも少なくありません。結局、参入しやすい手軽なものばかりが、増えては消えていくのでしょうか。その中で当連載的に注目すべきは、「フェムケアフード」です。女性の不調をケアする成分のサプリや機能性表示食品が「食べるフェムケア」として、登場しているのです。

一例として、「乳化剤・白砂糖不使用。“食べれば食べるほど身体が整う” チョコレート」なんてものがありました(試食したが味はおいしい)。お値段は、1枚2160円。そこそこ高級なので、不調をケアするために食べ続けるには、正直厳しい。完全に嗜好品の域で、体が整う前に、財布がスッカスカになりそうです。もちろんお手軽価格のものもあり、明治製菓からは「生理を応援する栄養」を加えたチョコやサプリなどが販売されています。

しかしこれらは値段以前に、女性特有の健康課題を食品でどうこうしようという点に、まどろっこしさしか感じません。体と向き合うきっかけをつくる程度のブツも需要はあるでしょうけど。

不調に対し、ゆるやかに解決するアプローチがあってもいいとは思いつつ、ちょっと話題になってすぐ消えていくものばかりが増えていく感は否めませんでした。来年は、長く市場に定着するような、画期的なものが登場するでしょうか。

※「フェムテック」とは、女性(Female)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語で、女性の生理・妊娠・出産・育児・不妊・更年期といった様々な体の悩みをテクノロジーで解決しようという取り組みのこと。デジタルなテクノロジー以外のアプローチは「フェムケア」と呼ばれる。古くからあるものでは、女性ホルモン配合薬剤であるピルや、生理周期官費アプリ「ルナルナ」が代表例。

自社の牛乳こそ「本物」、他は「白い水」⁉

お次はXの燃料となった、牛乳にまつわる政治家の失言です。と言えばネット民の皆さまは、もうお分かりでしょう。そうです、立憲民主党の小宮山泰子氏がSNSへ投稿した、中洞(なかほら)牧場創業者・中洞正氏の、一般的な牛乳を「白い水」呼ばわりした件です。

「動物福祉を考える議員連盟」の総会で、牛乳の試飲がありました! という報告とともに投下されたこのコメント。自社製品のすばらしさを語るために他者をディスるというカビの生えたスタイルの営業トーク、もうやめにしませんかね。あと、わざわざそれを紹介するセンス、SNSに向いてなさすぎる。この件はそこそこ燃えたため、小宮山氏は謝罪とともに投稿を削除しました。しかし都合の悪い投稿をすぐに消すというムーブも、悪手でしかありません。消すとかえって注目を集めるという残念な現象も、SNSの常なのですから。

牛乳に話を戻し、この出来事をきっかけに中洞牧場のHPを見ると、こんなキャッチがありました。

「本物の牛乳から作る全ての製品は自然な味わいでカラダに優しい」

根拠なく「本物」「カラダに優しい」と謡うほどに、うさん臭さが高まるのも、もはや常識。この一文から、根拠なき健康効果を発信してしまうオーガニック給食界隈と同じ匂いを感じます(オーガニック給食、つい最近では茨城県笠間市の公式アカウントが、小学生相手に明らかに間違っている解説をしている写真を投稿していましたね)。単に「美味しいから」というよりは、現代医療や食への不信を煽られる、うつみん信者のような層が愛飲しているような印象を持ちました。

そこでその手の人たちの牛乳情報をチェックしてみると、ドテラ―※としても知られる社会派インフルエンサー・あまねくオーガニック氏も、以前こんな投稿をしていました。

※精油をマルチ商法で販売する「ドテラ」会員の俗称

「ガイアに生きる一緒の生命体としてかわいそうで飲めない」。けれど「放牧されて(母牛が)子牛とも一緒にいれて、天然のオーガニックの牧草を食べているような」牛乳はたまになら飲む、と。「天然のオーガニック牧草」というのがよくわかりませんが、他の条件的には、中洞牧場はバッチリお眼鏡にかなうのでは。

よって、こだわりの牛乳は”そういう世界”がお好きなニッチな層への需要が高そうです。国民への活動報告に登場させるには、少々世界観が独特すぎたようです。

ところで、すっかり大人気の四毒界隈では乳製品は悪者とされているハズなのですが、この「本物の牛乳」についてぜひ見解をお伺いしたいところです。

需要があるのか謎すぎる「サナ活」ランチ

党首の名前を掲げた食品が販売されるのは、国会土産などでは定番ですが、ホントに需要があるのか? と首をかしげたくなるのが「サナ活」からの「サナ活ランチ」です。

2025年内閣総理大臣に就任した高市早苗氏を推す「サナ活」が盛り上がっていると報じられた中にまぎれたランチ情報ですが、いやいや、そもそもサナ活なるムーブメント、ホントに存在しているのだろうか。特に「Z世代に人気!」ってのが、信じがたい。そりゃあ野次馬的にどこのメーカーやブランドの品を愛用されているのか、と話題にする程度のところまでは理解できますが、マジに”推し活”として、ペンやら高価な鞄を購入している人っているんでしょうか。

奈良ロイヤルホテルで提供されている「サナ活ランチ」は、お値段「サナ」にかけて3700円。おそらく巷で最もサナ活しているのは、巨額の献金で注目を集める謎の宗教法人でしょうか。それを考えると、サナ活ランチを咀嚼するたびに、謎の宗教法人と同担である不思議なご縁を感じてしまいそう。カジュアルなネーミングに反した、闇深い味わいをぜひ体験してみたいものです。好物とされているコロッケや肉まんに罪はありませんが、謎深いネーミングや周辺情報に、味の印象がかき消されそうです。

このほか不思議界隈の食ネタでは、低身長ビジネスや発達障害ビジネス周りに散見される謎の栄養指導、最近また復活した「コオロギは避妊薬」説、参政党・工藤聖子氏のホメオパシー発信など、不穏な話題は尽きることがありません。2026年も観察報告を続けていきますので、どうぞよろしくお願いします。

 

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