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5. 正しく使えば、農薬を使用する人の安全性は確保される【農薬をめぐる重要な10項目】

食の疑問に答えます

農林水産省によると2007年以降散布中の死亡事故は起こっていません(2015年度までの報告が公開されている)。2015年、農薬を食品の空容器に移し替えた時の誤飲、農薬を散布する際の防護装備の不備などが原因で、28件の中毒事故が発生しましたが、農薬自体の安全性は向上しています。


2003年に農薬取締法が改正され、農薬使用基準違反への罰則が強化されたり、地方農政事務所や都道府県より改善の指導が行われたりしています。

農薬メーカーや農薬工業会は、プロダクトスチュワードシップといって、製品の開発から廃棄に至る全ライフサイクルにわたり、環境・ヒトの健康・安全の確保に配慮し、農薬の安全な使用を啓発する活動を推し進めており、化学業界全体の自主的な管理活動(レスポンシブル・ケア活動)として位置付けています。

近年、IPM(Integrated Pest Management:総合的病害虫・雑草管理)といって化学農薬だけに頼るのではなく天敵、防虫ネットなどさまざまな技術を組み合わせ、農作物の収量や品質に経済的な被害が出ない程度に病気や害虫の発生を抑制しようとする考え方が認められ、実施されつつあります。

農薬は適用内容どおりに使用すれば安全な生産資材であることは言うまでもありません。使用者自身の健康管理から農薬の使用後に至るまでのすべての注意事項を確実に実行することで、 農薬を使用する人への安全性が確保されます。

(1)農薬による事故

最近では、毒性の低い農薬が普及し、また農薬に対する知識が向上したことから、農薬の重大な事故の発生件数は少なくなっています。また、農薬による事故の原因は、使用者の不注意によるものが大半をしめています。

農林水産省による2015年度の農薬の使用に伴う事故及び被害の発生状況の調査では、農薬を食品の空容器に移し替えたために誤って飲んでしまったり、農薬を散布する際の防護装備が不十分だったりしたことなどが原因で、28件の中毒事故が発生しました。このような中毒事故を防止するために、農林水産省では、毎年「農薬危害防止運動」を実施しています。この結果、1961年から2010年までの死亡事故の推移をみると、死亡者数が大きく減少していることが分かります(表2-5)。

表2-5 1961年から2010年までに散布中の事故における死亡者数 (農林水産省「農薬の使用に伴う事故及び被害の発生状況について」などより作成)

(2)農薬を正しく使う

農薬は定められた使用法をきちんと守ることで、安全性が担保されます。農薬の使用法は容器や包装に貼付されたラベルにすべて記載されています。安全上、特に注意を必要とする農薬には「注意喚起マーク」がついていますし、農薬メーカーはラベルをより見やすく、わかりやすくする工夫も進めています。

2003年に農薬取締法が改正され、無登録農薬の製造、輸入、使用の禁止(販売は従来から禁止)や農薬使用基準に違反する農薬使用の禁止など使用者の遵守すべき基準が定められ、違反に対する罰則が強化されました。そのおかげもあり、農薬の適正使用は高い水準で達成されています。

農薬適正使用の実態については、農林水産省によって毎年全国的な調査が行われています。2015年度の調査では、不適切な使用が認められたのは3,948戸中2戸だけで、その内容は不適切な(登録にない)作物への使用や使用回数の誤りでした。不適正な使用については、地方農政事務所や都道府県より改善の指導がされています。なお、農薬の安全な使い方の指導や教育については、国や都道府県、農業団体などがそれぞれの立場で連携・協力をして実施しています。

農薬メーカーや農薬工業会は、プロダクトスチュワードシップに取り組んでいます。スチュワードシップとは、農薬の専門家としての責任を認識し、その開発・製造から使用・廃棄にいたるまで、安全管理に努め、全ての取扱者に対して適切な情報提供を行うということです。さらに、化学物質の開発から廃棄にいたるすべての過程について、自主的に環境・安全・健康面の対策を行うというレスポンシブル・ケア活動も実践しています。

(3)IPM(総合防除)とは

近年、IPM(Integrated Pest Management)が世界的に取り上げられるようになりました。これは、「総合的病害虫・雑草管理」と訳され、病害虫や雑草防除において、化学農薬だけに頼るのではなく天敵、防虫ネット、防蛾灯などさまざまな技術を組み合わせ、農作物の収量や品質に経済的な被害が出ない程度に発生を抑制しようとする考え方のことです。健康に対するリスクや環境への負荷を軽減するとともに農産物を安定生産すること が目的です。

IPMでは、化学農薬は、気象の変化などで病害虫が急激に増加し、他の手段では抑えられない場合に使う資材とされ、天敵の活動に影響の少ない薬剤や剤型、使用方法を選び、回数もできるだけ減らすように使用します。

IPMを正しく行うことは、農薬の最適使用につながります。国際的農薬業界団体であるクロップライフインターナショナルでは、IPMと「レスポンシブルユース(農薬の責任ある使用)」は表裏一体のものと考えています。

※この記事は、NPO法人くらしとバイオプラザ21発行の「『メディアの方に知っていただきたいこと』シリーズ 農薬編」を許可を得た上で転載したものです(一部AGRI FACTが再編集)。

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