会員募集 ご寄付 お問い合わせ AGRI FACTとは
本サイトはAGRI FACTに賛同する個人・団体から寄付・委託を受け、農業技術通信社が制作・編集・運営しています

バイエルが米家庭用除草剤の有効成分変更を発表 代替製剤化の背景と米国除草剤市場への影響【ニュース】

ニュース

グリホサート(ラウンドアップ系除草剤の有効成分)は世界の規制機関が科学的なリスク評価を行い、安全性を確認したうえで承認している農薬である。しかし、製造元のバイエルは2021年7月29日、2023年までに米国の家庭用向けラウンドアップ系除草剤の有効成分をグリホサートから代替製剤に変更予定であると発表した。

有効成分の変更は安全上の懸念ではない

今回のバイエルの発表により、「ラウンドアップ」ブランドで販売されている米家庭用除草剤は、有効成分を変更して販売されることになる

何十年もの間(編集部註:1974年に米国でモンサント社が発売)、グリホサートベースの除草剤は、急性および慢性毒性が非常に低く、安全であると考えられていたにもかかわらず、グリホサート系除草剤「ラウンドアップ」訴訟では、10万人以上の原告による大規模な訴訟が募集された。また、陪審員の判断は、科学的コンセンサスや国際的な規制当局(国際的に認められた20の独立機関がグリホサートの安全性を検証している)の結論に反していた

過去の訴訟当事者との和解案で、除草剤とがん(特に非ホジキンリンパ腫)との間に因果関係はないという見解を原告が受け入れたことが明記されており、企業は和解金を支払うことで訴訟を終わらせた。しかし、このような動きはグリホサートベースの除草剤によりがんになったと将来主張するかもしれない消費者からのクレームも想定しておく必要がある。バイエル社によると、その一部を回避するために、安全上の懸念によるものではなく、「訴訟リスクの管理」のために今回の判断がなされた

ラウンドアップ裁判Q&Aはこちら

農家向けグリホサート除草剤の販売は継続

ときに反バイオテクノロジー活動の中には、真の目的は、生産者を助けることでも、環境を守ることでもなく、すでになくなった企業(モンサント)の残骸を罰するためである場合がある。

バイエルが消費者向け除草剤の有効成分を変更しても、根本的な科学は変わらない。雑草を安全に防除し、作物の収穫量を向上させる技術は、経済と環境の持続可能性のために必要なツールである。使用したい製品の入手が制限されると、持続可能性や効果の低い選択を迫られることになる。科学に基づかない反対は、実際には、ただ消費者や生産者の選択を奪うだけだ

バイエルは米農家向け業務用除草剤の有効成分は今後もグリホサートのまま販売するため、生産者は現行仕様のラウンドアップ製品を今後も継続使用できる

発がん性がないのにあると言われている理由

そもそも、なぜグリホサートは、発がん性のリスクが低いにもかかわらず、発がん性があると言われているのだろうか。

米国のラウンドアップ裁判で敗訴したから発がん性があるとの主張もあるが、ある化学物質ががんを引き起こすかどうかは、陪審員や裁判官が決めることではない。このような判断は、動物実験、疫学的な評価、化学物質とがんを結びつける正確な分子メカニズムの慎重な特定などを総合して行われる。グリホサートは、1974年に米国環境保護庁に登録されて以来、何十もの国際的な規制機関や独立した学術科学者(およびグリホサートを販売する無数の企業)によって慎重に精査されてきた。

グリホサート評価サマリー表

グリホサートは、新しいデータを分析に加えるために、定期的に再評価されてきた。世界中のすべての研究を透明かつ厳密に独立して再評価した結果、現在、世界のどの農薬規制当局も、人間が現在さらされている曝露量では、グリホサートが人にがんのリスクを及ぼすとは考えていない

規制当局と異なる評価は2015年、国際がん研究機関(IARC)が、グリホサートをおそらく発がん性がある(グループ2A)に分類したことのみだ。このIARC評価の根拠となるのは、多数のin vitro研究、疑わしい動物実験、およびIARCによって選別された疫学データだが、実際のヒトへのリスク、つまり実際に使用された場合の曝露量に基づいていないため、大きな議論を呼んでいる。

関連記事

原文

‘War on glyphosate’ and the unintended negative environmental consequences of the demonization of a safe and effective herbicide and its removal from the garden market
https://geneticliteracyproject.org/2021/08/10/war-on-glyphosate-and-the-unintended-negative-environmental-consequences-of-the-demonization-of-a-safe-and-effective-herbicide-and-its-removal-from-the-garden-market/

Facing 30,000 unresolved cancer claims, Bayer plans to pull glyphosate from US lawn and garden market by 2023
https://geneticliteracyproject.org/2021/08/03/facing-30000-unresolved-cancer-claims-bayer-plans-to-pull-glyphosate-from-us-lawn-and-garden-market-by-2023/

「『グリホサートとの戦い』と安全で効果的な除草剤の悪魔化と家庭用市場からの除去の意図しない負の環境への影響(Kevin Folt 2021年8月10日公開)」を翻訳・編集した。
「30,000件の未解決のがん訴訟に直面し、バイエルは2023年までに米国の芝生と庭の市場からのグリホサート排除を計画しています(Jef Feeley, Tim Loh 2021年8月3日公開) 」を翻訳・編集した。

  会員を募集しています 会員を募集しています

関連記事

検索

Facebook

ランキング(月間)

  1. 1

    第50回 有機農業と排外主義①【分断をこえてゆけ 有機と慣行の向こう側】

  2. 2

    日本の農薬使用に関して言われていることの嘘 – 本当に日本の農産物が農薬まみれか徹底検証する

  3. 3

    【特別セミナー】グリホサート評価を巡るIARC(国連・国際がん研究機関)の不正問題  ~ジャンク研究と科学的誤報への対処法~

  4. 4

    【誤り】検証内容「豚のへその緒に(ラウンドアップの主成分グリホサートが)蓄積するということは、人間にも起こりうることを意味する。もし妊娠している女性が摂取すれば、へその緒を介して胎児にも深刻な影響を与えかねない」山田正彦氏(元農水大臣)

  5. 5

    VOL.22 マルチ食品の「ミネラル豚汁」が被災地にやって来た!【不思議食品・観察記】

提携サイト

くらしとバイオプラザ21
食の安全と安心を科学する会
FSIN

TOP
CLOSE