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オレンジ色の風評加害に、農家たちが勝利した日:38杯目【渕上桂樹の“農家BAR Naya”カウンタートーク】

コラム・マンガ

「農業と食の安全」にまつわるトンデモは以前からありました。根拠のない風評で不安を煽って政治利用する政治家もいました。しかし、内容がいくら現実とかけ離れたものでも、反論する声は小さく、「言ったもん勝ち」ともいえる世の中でした。ですが、最近は変わってきたように思えます。不安を煽る風評ばかり発信している政党に対して、農家が理路整然と反論し、政党がタジタジになってしまうという今までにない動きがあったのです。

とある政党のトンデモ主張

事の発端となったのは参政党の主張です。
かねてから街頭演説や党のQ&Aなど、あらゆるチャンネルで農業の不安を煽る情報をばら撒いていました。

その内容は「日本の農薬使用量は世界一」「我々はモルモット」「市販の食品を摂取することで健康的な食生活を送ることは、ほぼ不可能」「慣行栽培の大根の質は悪いらしい」「農薬と肥料と種をセットで買わないと農業ができない仕組みにされた」などトンデモないもの。
いやはや、どれもクラクラするものばかりです。

もちろん事実と異なる内容ですし、さすがにここまで極まっていると農業を知らない一般の人でも「あれ? なんか怪しくない?」と思うはずですが、大丈夫。
一部にはこういう尖った物言いが好きな層がいるので、そういう層の票を集めて議席を獲得する戦略なんだと思います。

SNSで追及するプロ農家

もちろん、ネタにされた農家はたまったものではありません。
安全でおいしい野菜を一生懸命作っているのに、ここまで大っぴらにおかしな情報を流されて黙っているわけにはいきません。

昔はどうだったかは知りませんが、最近の農家はSNSなどでしっかり情報発信をします。
X(旧Twitter)上では、キャベツ農家のSITO.(シト)さんや、メロン農家でメロン王子の富岡ユウトさんをはじめ、たくさんのプロの農家や食品安全の専門家たちが声を上げ、繰り返されるトンデモ発言を追及し始めました。

私は、党がプロの追及に対してどう答えるのか気になっていました。
「いいえ、慣行農業は危険なんです!」と貫き通すのか、それとも「間違ったことを言ってすみません」と訂正するのか。

逃げ腰の政党

実際はどちらでもありませんでした。
所属議員たちはSNS上で「そういう意味ではありません」「慣行農業を否定はしません」と、どちらとも取れない反論っぽいことを述べていました。

「慣行農業を否定はしません」と言うなら「慣行農業も安全です」と言えばいいのに、熱狂的な支持者を前にしてはその一言が言えない。
でも、プロを前にして素人向けの手口は通用しない。
その様子からは、党として普通のことも言えなくなってしまった苦しさが見て取れました。

所属議員はのちに「そうじゃなくて安全性の評価基準の話をしているんですよ」と苦し紛れに別の話題に言及し始めましたが、これもおかしな話です。

所属議員たちはプロに突っ込まれるまではそんな主張はしていなかったからです(ちなみに、今後方針を切り替えて安全評価基準の話をしてもいいのかもしれませんが、今まで以上に専門的な話になるので支持者がついてきてくれない可能性あり)。

取り残された支持者

そんなやりとりがあった末、党所属議員(候補含む)からの反応は示し合わせたかのようにパッタリなくなってしまい、あとは支持者だけがプロのツッコミに反論しているというなんとも哀しい結末になってしまいました。

支持者は呼びかけに応じて熱狂していたのに、代表の人たちはプロに見つかって指摘された途端たちまち黙ってしまったのです。
そんな結末を見せられた支持者たちの気持ちを思うといたたまれません。

これが、「慣行農業はこんなにも危険! 声を上げよう!」という呼びかけに、農家たちが本当に声を上げた結果です。
風評加害という卑劣な敵に対し、勝ったのは農家たちでした。
生活も、家族も、ふるさとの未来も、全部背負う決意を固め、毎日技術と知識を研ぎ澄ましている勇敢な農家たちに、生半可な風評で勝てるはずがないのです。

安易に不安を煽ろうとする者たちは、このことを肝に銘じるがいい。

 

【渕上桂樹の“農家BAR Naya”カウンタートーク】記事一覧

筆者

渕上桂樹(ふちかみけいじゅ)(農家BAR NaYa/ナヤラジオ)

 

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