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有機野菜で学校給食を、の前に! 義務教育でも農薬の授業を!【落ちこぼれナス農家の、不器用な日常】
「有機栽培の野菜で学校給食を!」
という声が、昨今政治家や団体から上がっています。
これに関しては賛否両論ありツッコみどころも多いですが、僕はどちらかというと賛成です。
しかしそれは農薬は危険だからという誤った理解のためでなく、農薬の安全性や正しいリスクを教えたうえで選択の自由は消費者にあるということを小学生から知ってもらいたいからです!
今回は、
「有機野菜で給食を?その前に義務教育でも農薬の授業を!」
というテーマで書いていきます。
特に消費者の方にこそ、ぜひ知ってほしい内容です。
知っておきたい農薬中毒の歴史
まずは、農薬が問題視されるようになった歴史について振り返ります。
農薬の危険性が問題になったのは、1960年代の高度経済成長期のことです。
高度経済成長期の負の歪みである4大公害(イタイイタイ病や水俣病など)と同時期、レイチェル・カーソンの『沈黙の春』もこの年代に発表されています。
当時は毒性の強い農薬を使用していて、残念ながら農家の中には農薬中毒で亡くなる方もいました。
この辛い経験を経て、問題になった農薬は現在では使用が全て禁止され、農薬取締法はより厳しい基準に改正されています。
新開発の農薬についても、厳しい基準に合格した安全性の高い農薬しか登録が認められていません。
つまり正しく農薬が使用された現在の農産物は、安全であると言えます。
今の教科書の内容
僕としては、年代も重なっている4大公害とセットで、中学公民の授業で教えてほしいと考えています。
僕が小学生の時は『沈黙の春』は教科書に載っていた記憶がありますが、今の教科書ではどうでしょうか。
代表的な教科書の出版社数社に問い合わせた所……公民の教科書では扱いはないそうです。(小学生の課題図書や、高校の倫理や日本史の授業では載っている教科書もあるようです。)
つまり先生の参考資料として『沈黙の春』は紹介されることはあるかもしれないけど、確実に歴史の授業で扱うということはないということ。
少し残念ですね。
『沈黙の春』に代表される悲しい歴史も、もちろん大事ですし忘れてはいけないことです。
しかしその悲しい歴史を乗り越えて、科学技術の進歩や厳しい検査基準を課してきた上で現在の農業があることもセットで教えるべきです。
特にADI(許容一日摂取量)や有機栽培の正確な定義などは、日本国民全員が絶対に知っておくべき最低限の知識だと考えています。
不毛な対立構造を生まないために
農薬の安全性に関して誤解したり、デマを信じてしまう人がいる原因は何か?
僕は義務教育できちんと農薬の安全性や科学技術の進歩を習っていないことも、原因の一つだと考えています。
デマが拡がり世論が分断して、「慣行栽培vs有機栽培」のような対立構造に仕立てて、政争の材料になってしまっているのがすごく悲しい!
いろいろな農家や栽培方法の多様性が尊重されるように。
デマに流されず、自分の考えを持って選択できる大人になれるような教育をしてほしいなと思いました。
筆者 |