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農薬に関するデマで打線組んでみた!〈パート13〉【ナス農家の直言】

農家の声

12チームを越えても、まだまだ農薬デマは増え続けています。
今回も、
「農薬に関するデマで打線組んでみた〈パート13〉」
をテーマに、農家の私ナス男が農薬デマを紹介します。

1.(中)グリホサートは街路樹すらも枯らすから危険!

「某中古車販売店が、グリホサートを使って街路樹を枯らしている! 樹まで枯らす威力はやはり危険だ!」

連日ニュースを賑わしていた某中古車販売店の件。グリホサートの成分が土壌から検出されており、某中古車販売店も除草剤の使用を認めています。
案の定グリホサート批判に発展していますが、この件やグリホサートについて補足させてください。

①グリホサートを含む除草剤は、葉にかけることで成分を根っこまで行き渡らせて枯らす商品です。

根元に撒いていたくらいでは、樹が枯れることは通常なら考えられません。(通常では使用しない濃い希釈倍率や原液を大量に使用すれば枯れるのかもしれませんが……)
背の高い街路樹の葉にかけるつもりで動噴を使って除草剤を散布したら、それこそ近隣の住民や店舗が気づいて、とっくに炎上しているはずです。

②農業用のグリホサート系除草剤の中には、竹や雑かん木に適応があり、竹に孔を空けて除草剤を流し込んだり、切り口に塗布するやり方はあります。

しかし、この件で使用していたとされる当該の除草剤は、あくまでも雑草のための除草剤であり、樹木の適応はありません。ましてや街路樹に使うなんてもってのほかです。公共の街路樹を枯らすのは器物損壊ですからね!

③そして大事なことは、グリホサートデマの記事でも書いたように、使用基準を守って使用していれば、安全と言えます。

必要以上に怖がらないようにしましょう。

参照

2.(二)街路樹に農薬をかけるな!

「街路樹にネオニコを使うな! 住民に健康被害が出たらどうするんだ!」

という声があります。
たしかに農作物だけでなく、街路樹の害虫に対しても農薬を散布しているのは事実です。
しかし、農薬散布が短時間で終わり、費用も少ない有効的な対策であることは、否定できないはずです。
そして、農水相のHPに載っている街路樹の農薬散布の注意点には、

  • 農薬を環境中に散布する影響を考慮し物理的防除を優先すること
  • 散布に際して付近の住民への周知、散布時の風による飛散の軽減に留意すること
  • 登録農薬を使用して天候や風向きに留意して万が一にも健康被害が出ないようにすること

が記載されています(住宅地等における農薬使用について:農林水産省 (maff.go.jp))。

農薬散布をしないのであれば、どのように害虫の被害から街路樹を守るのでしょうか。
まずは農薬散布以外の具体案を提示していただき、その案が素晴らしければ私も賛成に回るでしょう。

3.(左)農薬成分カウントが〇〇回!ってことは、〇〇回農薬散布している!

「某県の農薬マニュアルには、○○成分は〇回使用と書いてある! これだけの農薬を無理やり使っている!」

という主旨を、某県の農薬使用回数表を添付でツイートされているのがバズってました。

品目名作型農薬成分使用回数
トマト3~9月(長段取り)46

上にある表は、某県の慣行レベルの農薬使用回数を参考にして、私が数字を変えて作ったものです。
消費者の方は見かけないと思いますが、農家なら見慣れている表です。
この表を見て、

「トマトは46回も農薬を使っているのか!」

とするのは、間違いです。
なぜなら、農薬成分カウントは農薬散布回数と同じではないからです。

  • 2剤混用して農薬散布すれば、一回の農薬散布でもカウント2になります。
  • 1剤しか使用してなくても、その農薬の成分が2種類あれば、カウント2です。

そして大事なことは、表はあくまでも農薬成分カウントの上限であり、ここまで使用しない農家も多いことです。
実際には、農薬散布の回数はカウントより少なくなるのがほとんどです。
無理やり農薬成分カウントをフル使い切るような栽培をしたら、とんでもなく時間と経費がかかりますからね。
これらの事実を知っててミスリードさせているのか、もしくはただの調査不足なのか。
いずれにせよ、農業には全く関わっていない方が言っているのは確かですね。

4.(一)西日本の野菜ほど、農薬が多い!

「この表では、南に行くほど農薬散布の回数が多い!」
「北日本では、西日本の半分の農薬しか使ってない!」

という具合で、同じ作物で農薬の使用基準に違いがあることをミスリードしている企業があります。
西日本にいくほど農薬散布の回数が多くなるからくりは、栽培期間や気候です。
例えばトマトを例に挙げると、温暖な地域で10カ月栽培する作型と、雪が降る地域で5カ月しか栽培しない作型では、農薬の散布回数は当然違います。
倍の栽培期間があれば、倍の散布回数でもおかしくはないでしょう。
しかも先ほども触れた通り、この数字はあくまでも上限なだけで、必ずこの量の農薬を使えという命令書ではないんです。
作型や気候などを一切無視して、地域ごとに農薬の散布回数が違うと叫ぶ人たちは個人的には信用できません。

5.(三)後ろめたいことがないなら、農作物全てに農薬履歴を記載しろ!

「全ての農作物に、農薬散布履歴を記載しろ!」

という声はありますし、消費者の方も気になる方はいるかと思います。
安心してください。
すでにそこらのスーパーや産直では、トレーサビリティができている農作物が流通しています。
たしかに、野菜の袋全てに農薬履歴が記載されているわけではありませんが、気になるようでしたら、スーパーなり出荷団体に問い合わせていただけば答えられます。

ではなぜ全ての農薬履歴を記載していないのか。

私の想像ですが、
①QRコードに農薬履歴を落とし込むことは技術的には可能でしょうが、それだけコストがかかり野菜の価格がその分上がることは想像できますし、
②そもそもそこまで厳密な農薬履歴に興味がある消費者の方が少ないから、ではないでしょうか。
声高に農薬批判をする方は、たとえ全ての農作物に農薬履歴を記載したとしても批判するでしょうしね。

6.(右)希釈倍率より薄めて使えば経済的だし安全だ!

「農薬を使う時は、ラベルの希釈倍率よりもさらに薄めて使え!」
「農薬がもったいないなら、より低倍率で薄めて使おうか。」

というように、登録上の倍率より薄くして使用したり、少ない量の農薬を使えば安全だし経済的だと思う方もいるかもしれません。
このやり方は、農家の私としては止めてくださいと言います。
農薬の効果も薄くなる可能性が想像できますし、生き残った病害虫が抵抗性を持つ可能性もあります。
農薬をケチったせいで病害虫が多発し、結局もう一回農薬散布をしないといけなくなる……みたいなことも起きそうです。

参照

7.(捕)濃い倍率で農薬散布すれば、よく利くし散布回数を減らせる!

登録より濃い倍率で使っている農家がいるとすれば、それはアウト!
たしかに基準より濃い倍率や量で農薬を使用すれば、病害虫はより退治できるかもしれませんが……〈パート8〉で紹介した通り、残留農薬チェックに引っかかった時に全品回収&社会的信用を失うリスクがあります。
また、薬害などで、農作物の品質にも影響が出ることも考えられます。
そもそも、農薬取締法に違反しています。
やはり農薬は薄すぎず濃すぎず、適正倍率での使用を守る必要がありますね。

8.(遊)農作物に針で何かを注入している!

「スーパーで買った野菜に注射跡がある! ○○の陰謀だ!」

取り上げたくないレベルの発言ですが……
農家が意図的に農作物一つ一つにヤバい何かを注射していたら、人件費がかかりすぎて、今のような安い価格で農作物を提供できるわけがないです!
もしそのような注射跡が農作物になるのであれば、いたずらかもしくは農業の現場を知らない原価の概念がない方の自作自演の可能性があります。
もしも注射跡がある農作物を見かけたら、SNSで不安を煽るのではなく、消費者センターか買ったお店にまずは連絡をしましょう!

9.(投)ワクチントマトやワクチンきゅうりがある!

植物ワクチンを危険視する意見は根強くあります。
たしかにトマトやきゅうりなどでは、モザイクウイルスなどに対する防除手段として、混合ワクチンを予防接種した苗があります。
植物ワクチン接種は、陰謀によって打たされているのではなく、ちゃんとした以下のような目的やメリットがあります。

  • 株に病害虫に対する抵抗性を持たせる
  • 安定的な生産や品質を向上
  • 価格の安定化
  • 農薬を減らす栽培に貢献

植物ワクチンは自然界に存在する弱毒ワクチンを利用しており、環境にも優しい技術と言えます。
陰謀論者が危惧しているように? コロナワクチンと同じ成分なわけがありません。
ましてや、植物ワクチンを打った野菜を食べたからと言って、気力がなくなったり事なかれ主義になったり、生きる希望がなくなったりすることはありません。
植物ワクチンに関しても、正しく知って正しく恐れることが大事です。

まとめ

これからも、一つ一つの記事を分かりやすく書いていきます。
遠くない将来には、日本プロ野球を越えてメジャーリーグのチーム数30くらい、農薬デマで打線を組めるのかもしれません。

 

【ナス農家の直言】記事一覧

筆者

ナス男(ハイパーナスクリエイター「ただのナス農家」)

 

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