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「ラウンドアップはがんを引き起こす」という論文を発表し、その後、論文が取り下げ処分になったセラリーニ教授が、昨年末の来日講演で「ラウンドアップは安全」と話したというのは本当ですか?

食の疑問に答えます

A ラウンドアップは特許が切れたので、多くの企業がほぼ同じ成分の製品を違った名前で販売しています。それらを「ラウンドアップ類似製品」と呼ぶことにします。ラウンドアップ類似製品には除草作用があるグリホサートと、その働きを助ける界面活性剤などが入っています。そして、界面活性剤の種類は製品により違います。セラリーニ教授は来日講演で、「グリホサートではなく、一部の界面活性剤などが危険」という話をしたのです。その内容は次の論文で発表されているので、その概要を紹介します。

N. Defargea, J. Spiroux de Vendômoisb, G.E. Séralinia:Toxicity of formulants and heavy metals in glyphosate-based herbicides and other pesticides.
https://doi.org/10.1016/j.toxrep.2017.12.025

実験1:トマトの苗にグリホサートを散布しても枯れないが、各種のラウンドアップ類似製品あるいは界面活性剤を散布すると枯れた。
実験2:実験が簡単にできる人由来の培養細胞HEK293を使って試験管内での試験を行ったところ、グリホサートの毒性は低かったが、界面活性剤の毒性は種類によって大きく異なり、POEAと呼ばれる界面活性剤の毒性が最も強かった。
実験結果の解釈:ラウンドアップ類似製品の毒性は、その主成分のグリホサートの毒性を調べるだけでは不十分で、各種の界面活性剤と組み合わせた時の毒性を調べるべきである。世界の食品規制機関は「グリホサートに発がん性はない」と言い、国際がん研究機関IARCは「グリホサートにはおそらく発がん性がある」と言っている。その違いの原因は、規制機関はグリホサートの試験結果を使い、IARCはグリホサートと界面活性剤を含むラウンドアップ類似製品の疫学調査の結果を使ったという違いがあるからではないか。

この実験にはおかしなところがあります。そもそもグリホサートに除草作用があることは多くの実験で証明されているのですが、この実験1で「トマトの苗にグリホサートを散布しても枯れない」のは理解できません。次におかしな点は、実験1より界面活性剤が強い除草作用を持つことです。世界で栽培されている遺伝子組換え作物の8割は、ラウンドアップを散布しても枯れない「ラウンドアップ耐性」ですが、それはラウンドアップの主成分であるグリホサートの除草作用に耐性を持つ仕組みを持っているからです。もしラウンドアップに含まれている界面活性剤が強い除草作用を持っていたとしたら、界面活性剤には耐性を持たない「ラウンドアップ耐性」作物まで枯らしてしまうはずです。しかし、現実にはそのようなことは起こっていません。

ただし、この論文で一つだけ評価できるのは、実験2で示されたように「グリホサートの毒性は弱い」という科学界で一般的に認められている事実を、セラリーニ教授も認めたことです。

注:商品名『ラウンドアップ』の有効成分名は「グリホサート」と言い、Q&Aでは2つの名称をその都度使い分けていますが、実質的には同じものだとご理解ください。

回答者

唐木英明(公益財団法人食の安全・安心財団理事長・東京大学名誉教授)

回答日

2020年2月1日

 

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