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第15回 インタビュー:なぜ発達障害と有機給食を結びつけてはいけないのか②【分断をこえてゆけ 有機と慣行の向こう側】

コラム・マンガ

第12回の記事(有機給食がカルトの餌場になる前に)では、公立学校の給食に有機農産物を導入しようという動きが日本で活発になっている、その背景や構造について簡単に解説を試みました。それを受けての第14回に引き続き、発達障害の当事者の方へのインタビューを取り上げます。

インタビューのつづき(「発達障害のニュース」さん×間宮)

間宮 発達障害が増加しているという先入観にそもそも誤りがあること、また増加を問題視する捉え方自体が発達障害に対する、ある種のスティグマ(負の烙印)を含んでいることがわかりました。

私としては、科学的根拠の薄弱な段階でこのような恣意的な主張を展開することは当事者の尊厳を傷つけ、偏見や差別、保護者に対する自己責任論の助長にもつながることを懸念しています。この他に、どのようなリスク、懸念点が考えられるでしょうか。

発達障害のニュース 発達障害の原因は世界中の科学者から関心の対象となっています。
相当な数の論文が様々な可能性を指摘していますが、決定打となるものはいまだにありません。
その状況下で、発達障害の原因は農薬であると恣意的に主張するのは問題があると思います。
主張の元となっている論文に問題があることはAGRI FACTさんの記事でも触れらています。

・農薬以外にも膨大な数の仮説が提示されていること
・主たる原因は遺伝子にあり、環境要因は少なめと見られていること
・近年の見かけ上の増加は支援の充実と理解の広がりによるものであること

などを伏せて、発達障害は農薬が原因であると言うのは問題があると思います。

発達障害は後天的な疾患ではなくて、胎児期にすでに発生しているという考えが医学界では主流になっています。
つまり、発達障害は親の育て方でも、農薬の影響でもないのです。

農薬が原因であるとの風説は保護者に対する自己責任論を生むと私も思います。
また、発達障害の増加を防ぐという論調自体が発達障害は悪いこと・不幸なことだという前提に立っており、当事者に対する差別・偏見の助長につながると私も思います。
そして、それらのことは、本来支援が必要なのに診断を忌避する人を生み出す可能性もあります。

発達障害に関して大切なのは、何が原因なのかという原因論ではありません。
原因が未解明である以上、当事者に対する支援の充実と環境整備が何よりも大切になります。
恣意的かつ誤った原因論により肝心なところへの意識がそれるのは避けたいリスクであると私は思います。

間宮 誤った理解が原因で、発達障害と診断されること自体への不安感が社会で大きくなれば、受診を避けてしまったり、それにより必要な支援が行き届かないという事態も懸念されますね。

では、発達障害の増加を問題視する形で有機給食を推進している団体や活動家と、発達障害の研究者・専門家・支援団体などの間で、適切な情報提供や意見交換などのコミュニケーションは行われていると考えられるでしょうか。
また、行われていないとすれば、彼らがまずどのような機関や情報にアクセスすることが適切と考えられるでしょうか。

発達障害のニュース 発達障害に関する専門知識がある人たちは、「診断基準が緩和され、人々への認知が広まり、支援の充実もあって発達障害の診断を受ける子供が増えた」という現実を知っています。
そういう方々が、農薬が原因で発達障害が増えているという恣意的な話に興味を持つことはないと思います。

団体や活動家の方々も、発達障害の人たちを不安材料として取り上げることにしか関心がなく、発達障害そのものについて正しく知ろうという意思はあまりないのだろうと私には思えます。

以上の理由から、専門家等とのコミュニケーションは行われていないと思います。

アクセスすると良い情報としては、大学の先生で発達障害を専門とする方々の講演会を聴きに行かれるとよいと思います。
そういう先生方が出している一般書もおすすめです。

間宮 こうした活動の影響で不安を感じる保護者の方などもいらっしゃると思います。
そのような場合、まずアクセスしてほしい情報、団体、相談窓口としては、どういったところが考えられるでしょうか。

発達障害のニュース 私は発達障害児の親御さんたちと交流がありますが、「健康のために幼少期から無農薬野菜を食べさせてはいます。でも、うちの子は発達障害と診断されています」という親御さんも相当数います。
つまり、無農薬・オーガニックで発達障害を防げるというわけではないのです。

すでに述べていますが、発達障害は生まれつきの脳の得手不得手の違いです。
健康のために食事に気をつけるのは本当に大切なことですが、発達障害と残留農薬に関しては過度の心配は不要であると私は思います。

農薬の影響とは関係なしにお子さんの発達障害に心配があるならば、

①担任の先生、担任の保育士さん
②自治体の相談窓口(子育て課、福祉課)

などに相談するとよいと思います。

発達障害に関する信頼性のあるホームページを見るのもよいと思います。
その例としては下記が挙げられます。

LITALICO発達ナビ

NHK発達障害キャンペーン

間宮 ありがとうございます。
最後に、発達障害に対して不安を感じている人へのメッセージがあればお願いします。

発達障害のニュース 私自身、発達障害がありますが、元気に生きています。
自分なりの幸せも感じています。
それは私だけでなく、他の多くの発達障害の人にも言えることです。

発達障害だから不幸ということは決してなく、独特の苦労や困りごとがあるだけです。
現在ではそれらの苦労や困りごとに関して様々なサポートが存在します。
どうか発達障害という言葉を過度に怖がらないでください。
そして、発達障害の人が身近にいたらば、温かく迎え入れてあげてください。
困っていることについて、その人が求める範囲内で助けてもらえるとありがたいです。

考え方の違いを超えて

発達障害について本当に関心があるならば、まず正しく理解しようと努めること。
思い込みや願望ではなく、専門家の情報にアクセスし、当事者の声を聞くこと。
一方的に不幸のレッテルを貼らないこと。
「発達障害のニュース」さんからのメッセージは、有機給食以前の大前提として、考え方の違いを超えて広く共有されてほしいと願わずにはいられないものだった。

繰り返しになるが、給食の有機化そのものには是非もない。
導入の仕方次第では様々にメリットもデメリットも考えられるので、保護者や自治体、生産者などの当事者間で導入の妥当性をよく議論し、決定すればそれでよいのだと思う。

個人的には、冷静に議論が深められていけば、有機食材は「より良い給食」を実現するための、様々な要素のごく一部に落ち着くのが妥当なところだろうとは思うが、それはそれ。

「有機給食」という現象をただ一絡げにして称賛することも、貶めることも、正確な分析と理解を妨げるという意味では等しく、望ましいものではない。

石を投げつけられたら、石を投げ返したい気持ちにもなるが、それこそ、子供たちが見ている。
急速に深まる社会の分断を前に、それを憂う大人たちがいざ、どう振る舞うのかを。

ただし、声を挙げない当事者を運動のダシに利用するような行為に対しては、誰に恥じる必要もない仕方で、粛々と異議申し立てを行いたい。

相手と同じレベルに身を落とさないことが、ささやかな抵抗になる。

(おわり)

※インタビューのあと、発達障害について初めて学ぶ方へおすすめの一般書をセレクトしていただきました。
ご興味のある方はぜひ、お手に取ってご覧ください。

『発達障害がよくわかる本』本田秀夫(監修)(講談社 健康ライブラリースペシャル)

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