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第4回 プレハーベストのグリホサート使用に食の安全リスクはない【アメリカ産小麦は安全か】
小麦の収穫期を調整するためにアメリカとカナダの一部地域で稀に行われるプレハーベスト。除草剤ラウンドアップ(有効成分グリホサート)を収穫前に散布することから、サラ・ポープ氏の投稿記事をはじめ残留農薬の危険性を指摘する誤情報が拡散されている。小麦生産地でもあるオクラホマ州立大学が小麦の生育・収穫法とパンの摂取量を踏まえたファクトを発信した。
プレハーベストは小麦の生育には影響しない
グリホサートは、小麦など穀物の収穫前に雑草防除処理剤としての使用(プレハーベスト)が規制当局により認められている栽培法なのだが、安全性を疑問視する誤情報の流布があとを絶たない。
米国南部のグレートプレーンズや南東部では、雨の多い年に収穫期を調整する目的でグリホサートがわずかに使用されている。小麦が成熟した後の湿った圃場は、夏の一年生雑草が急速に成長するのに最適な環境となり、枯れた小麦畑で活発に成長する雑草は、収穫時に問題となることがあるからだ。
このような場合、生産者はグリホサートを散布することができる。雑草によって引き起こされる収穫時の問題には、農機具へのダメージ、穀物の水分増加(保管上の問題を引き起こす可能性がある)、収穫した穀物の中の異物やゴミが混ざるなどがある。
春小麦の産地では、雑草を抑制しながら小麦の株をより均一に乾燥させるために、プレハーベストを行う場合がある。残留農薬試験等をクリアして認可された使用法に従って散布した場合、グリホサートは作物の成熟期以降に行われる。つまり、穀物はすでに生育を終えているため、グリホサートで「枯れる」ことはない。
小麦の生育・収穫について知らない人のために説明しておくと、小麦は収穫前には粒が露出せず、小麦の粒は胚軸に包まれている。そして穎果は、風雨から種を守り、収穫までの間、種を保持する封筒のようなものだと考えてもらいたい。コンバインの脱穀工程では、全粒小麦であっても、穀粒と穎粒を分離し、穎粒は廃棄される。
そのため、収穫後に市場に出回る小麦には、収穫期前に散布したグリホサートが安全でないレベルで残留することはない。農産物には米国環境保護庁(EPA)によって定められたグリホサートの残留基準値があり、小麦の場合は30ppmである。
グリホサートの安全性は確保されている
日常的に消費される作物の多くはグリホサートが散布されているため、EPAはグリホサートの残留調査を広範囲に行うよう求めている。グリホサートの残留は厳しい管理下にあり、食品の安全性は確保されているのだ。
またグリホサートの毒性は、カフェイン、アスピリン、食卓塩など、日常的に意図的に摂取する多くの製品に比べて、経口摂取してもはるかに安全である。体重68kgの平均的な女性のLD50*の閾値は、グリホサートで約330g(4900 mg/kg)。体重90kgの平均的な男性であれば、約440gとなる。一方、同じレベルの毒性を人体にもたらす純粋なカフェインの量は、わずか約14g(192mg/kg)にすぎない。
*除草剤および家庭用品の急性経口LD50とは、ある製品を重量あたりで消費した場合に、人口の50%が死亡する量。10人が50%致死量(LD50)を摂取した場合、そのうち5人が死亡する。
グリホサートをプレハーベストで使う場合、1エーカー(約4,000㎡)あたり22オンス(約650ml)散布される。オクラホマ州で1エーカーあたり約1230kgの小麦を平均的に収穫するとして、収穫された穀物に微量のグリホサートが残留していたとする。1斤のパンを焼くのに必要な約450gの小麦には約300mgのグリホサートが含まれており、平均的な体重の女性が急性LD50用量に達するには、1斤ほどの大きさのパンを938個一度に摂取する必要がある。平均的なアメリカ人が、一生のうちに消費するパンは4,376個(斤)にすぎず、現実的な量ではない。
農薬の使用機会は一世代前と比べて減少しているほか、プレハーベストには薬液代だけで1エーカー(約4,000㎡)あたり6.5ドルの費用がかかるため、コスト意識の高い農業経営者はプレハーベストをより慎重に判断している。
この記事は、Glyphosate Use as a Pre-Harvest Treatment: Not a Risk to Food Safety「プレハーベスト処理としてのグリホサート使用。食の安全へのリスクではない」2017年4月公開 By Angela Post, Jeff Edwards, Brett Carver をAGRI FACT編集部が翻訳・編集した。