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第2回 どんな農薬が使用され、いかに規制されているのか【農薬について知ろう】

コラム・マンガ

農作物の安全性の面から「残留農薬」を気にする人が増えています。最近では、小麦粉やパンなどの小麦製品から残留農薬が検出されたことが話題になりました。スーパーマーケットには化学合成農薬を使わない、いわゆる有機(オーガニック)栽培の野菜も並びます。ひょっとしたら農薬は必要ないとすら考える人もいるのかもしれません。そこで、農薬が気になる人の疑問を解決すべく、残留農薬を中心に、農薬の使用目的や安全性、検出法などについて、サイエンスライターの佐藤成美がシリーズで解説していきます。

戦後の農業生産性向上に資する

農薬は食料の安定生産や農作業の省力化に貢献してきました。第2次世界大戦後には欧米や日本でも農業の生産性向上をめざして農薬は目覚ましく普及し、使用量も著しく増加しました。

昭和時代の中頃、BHC、DDT、パラチオンなどの有機塩素系の殺虫剤や有機水銀などの殺菌剤が開発されました。しかし、これらの農薬は毒性が強く、分解されにくいため、体内蓄積や環境汚染が問題になりました。いまでは、これらの農薬の使用は禁止されています。農薬というと「体に悪い」「危険」と感じてしまう人がいるのは、その時代の農薬のイメージがあるからかもしれません。

低毒性の新しい農薬が登場

その後、低毒性で、体内への蓄積性や農作物への残留性が少ない農薬が開発されています。カルバメート系は、アフリカの有毒なカラバル豆の成分をもとに開発された殺虫剤で、昆虫の神経伝達系をかく乱させることにより殺虫効果をもたらします。ピレステロイド系の農薬は除虫菊の花に含まれる成分やその類似成分を用いた殺虫剤、ネオニコチノイド系農薬は、古くから殺虫剤に使われていたニコチンの毒性を低減させたもので、哺乳動物にとって毒性が低いという特徴があります。

また、新しい作用機構を持つ薬剤も開発され、少量で効果を示すようなもの登場しています。グリホサート系の農薬は、植物の代謝系を阻害し、すぐに分解する除草剤で、開発された当時は画期的な農薬だと話題になりました。

さらに、水に溶けやすいフィルムで包まれたジャンボ剤や小さなカプセルに有効成分を閉じ込めたマイクロカプセル剤など新しい形状の農薬も生まれています。ジャンボ剤は水田に投げ込むとフィルムが溶けて農薬が広がります。マイクロカプセル剤は、カプセルから少しずつ有効成分が溶けだします。環境や農薬を扱う人への影響をなるべく少なくする工夫です。このように、現在使われている農薬は、いずれも環境に配慮されたものばかりですが、より環境への影響が少なく、残留性も低いものへと開発が進んでいます。

生産段階は農薬取締法で規制

農薬取締法は、農薬の規格や製造、販売、使用などの規制を定める法律です。この法律では、農薬の登録を義務付けることによって、農薬の品質や適正な使用が確保できるようになっています。

いくら環境に配慮された農薬といっても使い方を誤れば、環境や人の健康に影響を与えることがあります。そこで農薬の使用には厳しい規制があります。新しく開発された農薬もすぐに販売できるわけではなく、農林水産大臣に申請し、登録されなければなりません。農薬が申請されると、薬効や薬害、毒性、残留性などについて審査されます。農薬取締法では、作物や環境中に残留した農薬が人や家畜などに影響を与えないように基準が定められており、その基準を満たさないと判断されると、登録が保留されます。これを農薬保留基準といいます。

現在登録されている農薬のうち有効件数は4263件、有効成分は593種類(2020年2月29日現在)です。そのほとんどが殺虫剤、殺菌剤、除草剤で、低毒化されたものが主流です。これらの農薬は、薬効や薬害、毒性や残留性の面から、使用方法などを審査されます。登録後も、農薬の有効成分ごとに定期的に最新の科学的知見にもとづいて再審査されます。

登録された農薬は、使用目的、用途、使用方法が細かく規定されています。つまり、農薬が基準をこえて農作物に残留することのないよう、農薬の散布回数や最終散布から収穫までの日数などが規制され、不正な農薬の使用を禁止しているのです。これを農薬安全使用基準といいます。

筆者

佐藤成美(サイエンスライター)

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