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JAに関する誤解で打線組んでみた【落ちこぼれナス農家の、不器用な日常】
日本の農業は、JA(農業共同組合)抜きに語ることはできません。
JAの名称は広く知られていますが、JAに関する誤解もよく見受けられます。
JAについて正しく知ってほしいし、JAのデマに惑わされないでほしい!
ということで今回は、
「JAに関する誤解で打線組んでみた」
と題して、JA出荷ほぼ100%農家の僕ナス男が解説します!
1.(中)JAは農家の野菜を買い叩いている!
「JAは不当に農家から搾取している!」
「JA出荷では農家は儲からない!」
よく耳にするJAに関しての噂ですが、これらは誤解です。
一般的にJAは売上の〇〇%を、販売手数料という形で徴収しています。
つまり、JAとしても野菜を高く売った方が儲かるということです!
JAの利益が少なくなるのに、農家から安く買い叩いて野菜を仕入れたいとは思わないはずです。
2.(遊)JAの出荷規格は厳しすぎる!
「ちょっとの傷や腐りでも、JAは出荷できなくなる!」
「規格が厳しいせいで、廃棄がたくさん出て農家は儲からない!」
確かに他の出荷先と比べると、JAの出荷規格は厳しいでしょう。
しかしそれには理由があります。
• 傷や腐りは流通の過程で進行してしまうから。
• 産地のブランドイメージが下がってしまうから。
• 規格外の野菜が大量に出回ると、規格内の野菜の価格が下がってしまうから。
これらが厳しい出荷規格を設ける主な理由です。
僕を含めたほとんどの農家は、きちんと出荷規格を守っていますし、規格外の野菜はもったいぶらずに廃棄しています。
「このくらいの傷や腐りなら、まあ出荷していいだろう……」
と妥協してしまえば、その報いは必ず自分や産地全体に跳ね返ってきます。
農家にとってはたかが一つの野菜でも、消費者にとっては大事な野菜ですからね。
3.(二)JAの手数料はぼったくりだ!
「JAは手数料が高すぎると聞いたぞ!」
「農家のためにもっと安くできるだろ!」
という声は、消費者だけでなく農家からもあります。
確かに他の出荷先より、JA出荷は手数料が高めです。
• 荷造運賃
• 販売手数料
• 市場手数料
• 段ボール代
など、いろいろな名目で引かれています。
僕の地域では、JAに引かれる手数料は(野菜の価格にもよりますが)全部ひっくるめて22%~30%ほどでしょうか。
「ほら見ろ! JAの手数料は高すぎるだろ!」
と思った方、ちょっと待ってください!
JA出荷は、時間と労力をお金で買っているという考えが適切でしょう。
手数料を抑えたいと思ったら自分で販路を開拓するしかありませんが、その分時間も労力もかかります。
野菜をちゃんと栽培しながら、自前で営業をして毎日自前で出荷先を回らないといけません。
そこまでの労力がある農家は本当に少ないです。
ちなみに僕も昔は、JA以外の卸先や産直に出荷していました。
しかし出荷先を回る時間やガソリン代が積み重なっていくうちに、
「あれ、JAに出荷した方が良くね?」
となりました。
手数料も安くて労力もかからなくて儲かるという、全てが完璧な出荷先なんてありません。
僕は総合的に見て、JA出荷にメリットを感じるから選択しているだけです。
4.(一)JAは日本人を〇そうとしている!
「JAは野菜を農薬漬けにして、人口を減らそうとしている!」
「JAは日本人を〇そうとしている!みんな気づいて!」
なんていう極端な思想を振りかざす方もいます。
正直ここまでの陰謀論者には、議論しようにも成り立ちませんし付き合いきれません……思想は個人の自由ですし、僕は関与するつもりはありません。
ただ、事実無根のことを吹聴して消費者を煽動するのは止めてください!
5.(右)農薬や化学肥料を農家にバンバン使わせている!
「農薬や化学肥料を農家にバンバン使わせている!」
という偏見を持った消費者もいます。
そんな消費者の方に声を大にして言いたい。
「農家もバカではない!」
JAの農薬や肥料の栽培暦は参考にはしますが、その通りにやらないといけないわけではありません。
ましてや、バンバン農薬や肥料を使いたい農家なんかいません。
経費や農薬や肥料を散布する労働時間は少しでも減らしたいですからね。
消費者に安心安全な野菜を提供する以上は、安心安全の基準は当然守ります。
その基準の中で、減農薬減肥料のために農家は常に勉強と努力をしています。
6.(三)JAバンクの金利が高すぎる!
「JAバンクが農家を借金漬けにしている!」
「高金利によって、農家はJAに食い物にされている!」
というツイートが話題になっていました。
JAの金利が高すぎると言いたいのでしょう。
しかしJAバンクの金利は、他の銀行と比べても高くないです。
参考までに、アグリマイティーという農業資金の融資の金利は地域や県、借入期間によって異なりますが、概ね1%を切っています。
決して高くないですし、むしろ良心的ですよね。
そしてJAバンクは、農業に一番理解がある金融機関だと言えます。
他の金融機関では、農業という売上が不安定な職業にお金を簡単には貸してくれないでしょう。
7.(左)JAは全て悪だ!
「JAが日本農業の元凶だ!」
「JAは解体すべき!」
という意見も根強くあります。
このJA解体論には、僕は反対です。
下の組織図を見てください。
組織図から分かる通り、地域のJA○○とJA中央会、営農部門とその他の部門では組織が違います。
JAにも改善点はたくさんありますが、一つ一つのサービスは分けて考えるべきです。
気に入らない所を批判するにしても、一括りにJA全てを否定するのは間違っています。
8.(捕)JAは何も変えられない組織だ!
「JAは何も改革できない!」
「山積している問題に取り組めていない!」
という手厳しい意見もあります。
確かにJAは巨大な組織なので、なかなか変えにくい所はあります。
営農部会の中でも、自分と違う意見の農家も当然いますし、一農家だけでは改革することはできません。
どうしてもそりが合わずに、JAを辞める農家もいます。
しかし、全く何も変えられないかというとそうではありません。
営農の部会でも、販路や売り方にも意見を言うことはできます。
総会も年一度は開催されて、一農家でも意見を言うことはできます。
外から見れば山積している問題が解決出来ていないように感じてしまいますが、少しずつ改善されてきています。
9.(投)営農部門でなく、他の部門で稼いでいる!
「野菜を売るより、JAバンクとか他のサービスで儲けてるんじゃないの!?」
という情報も流れていますが……
これは本当です(笑)
農業が盛んな地域のJAは営農部門は黒字ですが、営農部門だけでは赤字になってしまう地方の単協もあるのは事実です。
営農部門だけで成り立つのが一つの理想のJA像ですので、これからの大きな課題になるでしょう。
まとめ
今回はJAに関する誤解を紹介しました。
最後に断っておくと、僕はもろ手を挙げてJAに全面的に賛成しているわけではありません。
改善してほしい所もたくさんあります。
ただしネット上の憶測やデマを鵜呑みにして、JA全てを否定することは止めてください。
悪質なデマに惑わされないように、この記事を判断材料の一つにしてもらえると嬉しいです。
筆者 |