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第4回「『自然派被害』は自己責任なのか」(後編)【分断をこえてゆけ 有機と慣行の向こう側】

コラム・マンガ

このコラムの下敷きになっている、僕自身の活動目的は「科学的に明らかに誤った情報や信念に影響されて、命・健康・尊厳・人間関係などが損なわれるのを未然に防ぐこと」であり、また「被害が発生した際にどのようなケアや回復の方法があり得るのかを考えること」にある。

誰かの批判や攻撃は目的ではなく、被害者をそもそも出さない社会をどう実現できるか、それだけを考えていたい。

もちろん、誤った情報の発信源となるオピニオンリーダー(社会的に影響力のある人物)がいれば、適切に批判をおこなうことは必要になる。

一方で、特定人物をあまりに深追いすれば、かえってその言葉を信じる人々にとっては、彼や彼女を弾圧の被害者としてますます英雄視する動機を強化することにもなりかねない。

戦う相手は人ではない。分断や争いといった現象そのものをどう鎮めるかだ。そこにモンサントのようなわかりやすく名状し得る「黒幕」はいない。

ではどうするか。科学的根拠や一次情報に基づく応答を淡々と続けることはもちろん重要なのだけど、これだけではどうしても消耗戦になりやすく、終わらないモグラたたきのような徒労感を免れない。

特にSNSでは顕著だが、嘘を言う人は内容の正確さより、声のトーンと大きさの方が影響力を持つことをおそらく自覚している。正確な情報や批判には基本的に耳を貸さない。

そうなると、いくら指摘を続けても暖簾に腕押しとなり、いずれは学習性無力感に覆われて「言っても無駄」と感じるようになったり、ライフステージの変化とともに脱落することにもなりかねない。

社会課題としての可視化

おそらく、まずは実態調査などを通じてデータを出し、しっかりと社会課題として可視化し、理解者を増やしていく必要がある。オーガニックに関わる事業者間で自主的にガイドラインを作成して表現に規制を設けたり、またメディアに対して報道ガイドラインを提示することも有効だろう。

また並行して、こうした食の安全にまつわる誤った情報や信念による被害に名前をつけ、概念化することで、より社会的認知を広げられないだろうか。

例えば過去にはセクハラ、パワハラ、ブラック企業といった言葉が社会に広がることで、賛否も含めて議論の土台となる共通認識が生まれ、少なくとも話題が通じやすくなり、メディア等でも取り上げやすくなった。何より、社会問題化することで、そうした被害にあった当事者が声を上げやすくなった点が大きい。

特に食事療法など、本人の過去の生活習慣を否定することで強い影響力を発揮する方向に傾きやすいジャンルにおいては、思うように療法の結果が出なかった場合でも、本人の努力が不足していた、あるいは過去の食生活が乱れすぎていたため、などの理由づけによって、さらに過激な療法にのめり込む動機に転化させられたり、自己責任に帰結させられるケースが多い。

上手くいったら先生のおかげ、失敗すれば本人のせい、ということだ。この場合、どこまでいっても食事療法そのものはダメージを負わず、威光を失わないようにできている、ということになる。

自己責任ではないというメッセージ

はたから聞けばひどく理不尽に思えるが、そもそも本人の世界観が食事療法とその思想に大きな影響を受けている限り、やはり矛先が先生に向くことはなく、自発的に自分自身を責めることになる。

もっと「厳格に」取り組むべきだったとか、あの時つい○○を食べてしまったからだ(白砂糖などの嗜好品が対象になることが多い)、といった風に、真剣な想いを持って取り組んできた人ほど、失敗の原因を自らの行いに探し求める。

つまりこうした状況に名前を与えることで、被害を自覚しながら泣き寝入りしていた被害者以外にも、自己責任だと思い込んで人に話し辛かったり、被害を被害として認識していない当事者に対しても「自分の経験した出来事は理不尽であり、救済の権利を主張しても良いのだ」という気づきを広めることにもなる。

標準医療を拒んで代替医療を導入したケースでは、乳児等が死亡する痛ましい事件も起きているが、食事療法を含む代替医療が単なる治療行為の選択肢のひとつではなく、本人の信念や生き方にまで影響を及ぼす価値観・自己実現として内面化される傾向がある以上、こうして事件として表面化するケースは氷山の一角に過ぎない可能性が高い。(※)

※参考:片瀬久美子『ホメオパシーとは? そして忘れ去られたいくつもの死亡事件』 2020年4月5日

解決を早める方法

セクハラやパワハラも「そういうものだから仕方がない」と黙認されていた時代があり、個人が耐えて適応することが善とされた共同体が存在した。「正論ばかりで、この程度のスキンシップも許されない窮屈な時代になった」等という本音主義的な物言いは、幸いにして少しずつ力を失いつつある。

被害者は存在しなかったのではなく、可視化されていなかったに過ぎないからだ。

食の安全情報に関しても、例えば木村映里さんのように代替医療の問題を憂慮し啓発活動をおこなっている医療従事者など、異なる分野に関わる人々と知見やノウハウを共有することで、少しでも解決を早められないだろうか。

もちろん、このような大風呂敷を広げたところで、今の自分の能力やリソースを大きく超えているのは明らかで、はて、どうしたら良いのかと立ち止まる。

良いアイデアをお持ちの方がいればぜひご連絡をいただきたいし、何なら、ここに書いたようなことをどなたかお先に実行して頂けないでしょうか、とさえ思っている。

僕が願うのはこれ以上の被害や分断を生み出さないという一点のみであって、それを誰が実現するのか、自分なのか他者なのかは、問題ではない。

(前編はこちら

筆者

間宮俊賢

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