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消費者が知らない除草の話〈農家が実践している除草法〉【落ちこぼれナス農家の、不器用な日常】

農家の声

消費者の方が農薬と聞くと、殺虫剤や殺菌剤を思い浮かべると思いますが、除草剤も農業にとって、今やなくてはならない農薬の一つです。
しかし除草剤やそれを使用する農家に対して、偏見や誤解をされている方が多いのも事実です。
除草剤についての偏見や誤解を少しでも解きたい!
ということで今回は、
「消費者が知らない除草の話〈農家が実践している除草法〉」
をテーマに、農家の僕ナス男が雑草といかにして戦っているかを解説します。

なぜ除草するのか

そもそもなぜ草を枯らしたリ抜いたりするのかというと、

● 肥料を雑草に奪われないようにするため
● 害虫が寄り付かないようにするため

が主な理由です(当然作物や栽培方法によります)。
除草作業をサボれば、農作物の減収や売上ダウンにもつながってしまいます。
多くの作物や農家にとって、除草は重要な農作業の一つなんです。
だから多くの農家は妥協せずに除草作業をしているのですが……

「農家はすぐに危険な薬を使って草を枯らしている!」
「除草剤を使わずに、手で草を取れ!」
という意見を、残念ながらSNSでは目にします。

はっきり言いますが……
農家は何も考えずに、除草剤を使っているわけではありません!
そして除草剤を使うことだけが除草ではありません!
前置きが長くなりましたが、以下から農家が実際にしている除草の方法を紹介します。

1.物理的に雑草を抜く

最初に考えることは、物理的に雑草を抜いてしまうことです。
手で草を抜いたり、トラクターや管理機で草の根を切ったりすることで雑草を枯らします。

物理的に雑草を抜く

代表的なケースは作物のすぐそばに雑草が生えている場合ですね。
除草剤が作物にかかってしまったら、もちろん枯れてしまうので、除草剤を使わずに地道に草を取るしかありません。

家庭菜園でも一番メジャーな方法ですが、農家のレベルでももちろん有効です。
なぜなら、雑草に気づいたらすぐに取れるし、なにせタダだから!
農家が除草剤の使用よりもまっさきに考えていることが、この安上がりで原始的な方法なのです。

2.黒マルチや防草シートを張る

次に考えることは、黒マルチや防草シートなどの資材を使うことです。
黒い資材で土を覆うことで、物理的に太陽光を遮断して草を生やさなくします。
プロ農家でもよく利用されていますが、家庭菜園でも見かけたことがある方も多いのではないでしょうか。

一度、黒マルチを張ってしまえば、覆っている部分の草取りからはほぼ解放されます。
資材費はかかりますが、草取りの労働時間の削減になるので、有効活用を考えたいです。

3.緑肥を蒔く

緑肥を撒く選択肢もあります。
緑肥の多くは雑草の生長スピードに負けないので、地面を覆って雑草を抑えることができます。
まさに「草をもって草を制す」方法!
また、その他の緑肥のメリットとしては、

● 前作の肥料分の回収や、連作障害の対策になる
● 緑肥を鋤きこむことで、土づくりの一環になる

などがあります。
僕の地域でも、よく緑肥は作られています。

4.太陽熱消毒

透明なビニールを被せて太陽熱の力で雑草の種子を死滅させる、太陽熱消毒という方法もあります。
この方法なら夏の暑い時期は、地中温度は60度以上にもなり、たいていの種類の雑草の種子は死滅します。

太陽熱消毒

シンプルで効果も大きいので、いろいろな作物の農家で太陽熱消毒は行われています。
毎年夏に太陽熱消毒している僕のナスのハウスは、除草剤をかけなくても雑草はほとんど生えてきません。

5.石灰窒素

石灰窒素は肥料でもありますが、農薬として除草効果のある資材です。
追肥として土の管理機と合わせて使われることもありますし、太陽熱消毒と合わせて使われることもあります。

石灰窒素

6.火で燃やす

火で雑草やその種子を燃やすという大胆な方法もあります。
ガスバーナーで燃やす方もいますが、代表的なものは野焼きですね。

農地周辺の畔の草を刈り取って燃やせば、一気に雑草や種子、害虫までを駆除できる効率的な方法ですが……
近隣住民からのクレームが多く、野焼きをしている地域はかなり少なくなった印象です。
僕の地域でも、煙が上がっていると火事だと誤解されて通報されてしまいます。

7.除草剤を使う

いろいろな除草方法を紹介してきましたが、やはり除草剤を語らないわけにはいきません。
除草剤は効率的、かつ適切に使用すれば安全なので、農家の負担軽減にかなり貢献しています。
除草剤にも性質によって違いがあり、使用時期や用途などで使い分けています。
グリホサート系除草剤のラウンドアップばかりが有名ですが、あくまで除草剤の一つ、除草方法のひとつにすぎません。

1.根っこごと枯らすタイプ

一つ目は、根っこごと枯らすタイプの除草剤です。
雑草にある程度かかると、根まで成分が移行して根っこごと枯らすので、少量で効率的な除草ができます。
ラウンドアップがこのタイプの代表的な除草剤ですね。
根っこごと枯らすという特性上、土が崩れてしまうので斜面や法面には使えません。

2.かかったところだけ枯らすタイプ

移行性が少なく、かかったところだけを枯らすタイプの除草剤もあります。
このタイプは斜面や法面の雑草に使用できるので、根っこごと枯らすタイプの除草剤と使い分けている農家が多いです。

斜面や法面の雑草に使用できるので、根っこごと枯らすタイプの除草剤と使い分けている農家が多い

3.特定の雑草や、生育ステージにだけ効果があるタイプ

特定の雑草や生育ステージにだけ効果があるタイプの除草剤もあります。
いわゆる「選択性除草剤」、つまり「育てている作物にかかっても問題ない除草剤」です。

選択性除草剤の種類は、

● ○○科の雑草のみを枯らすタイプ
● 葉っぱ○枚までの生育ステージの雑草を枯らすタイプ
● 雑草の種子を発芽させなくするタイプ

などがあります。

効果がある雑草の種類や使うタイミングなどは限られますが、きちんと使用できればとても効率のいい除草剤と言えます。

まとめ

今回は、
「消費者が知らない除草の話、農家が実践している除草法」
についてお伝えしました。

除草作業はお金も時間も労力もかかることなので、農家はなるべく効率のいい除草方法を条件ごとに考えて使い分けています。
「思考停止して何でもかんでも除草剤、ラウンドアップ!」
ではないんです。
そして紹介したどのタイプの除草剤も、農薬取締法の基準通り、ラベルに記載がある通りに使用すれば安全が担保されています。
農薬の安全性についての詳しい記事は、AGRI FACTのサイトにたくさん載っているので、ぜひ見てください。
消費者の方が、少しでも除草や雑草対策について理解していただけたら農家として嬉しいです。

【落ちこぼれナス農家の、不器用な日常】記事一覧

筆者

ナス男(ハイパーナスクリエイター「いわゆるナス農家」)

 

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