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健やかであることをうたう酒:7杯目【渕上桂樹の“農家BAR NaYa”カウンタートーク】

コラム・マンガ

食品の付加価値を高めるために、根拠なく健康効果をうたう手法が採用されることがあります。法律に引っかからない?トンデモ医療の架け橋になっていない?本質ではない売りはかっこ悪くない?農家BAR NaYaの渕上桂樹さんがズバッと言います。


私が経営するバーには自家製果実酒が70種類以上あり、中にはおいしいだけではなく、健康効果が期待されるものもあります。果実酒のレシピ本を読むと、リラックス効果や老廃物を排出する効果、病気を予防する効果、美容効果など、期待できる様々な効果・効能が書かれています。

しかも、どの効果も多くの人が関心を持つものばかりです。最近は健康志向が高まっているので、果実酒の付加価値を高めるのに健康効果をうたうのは有効なようにも思えます。ですが、それは私のお店では敢えて避けています。それにはいくつかの理由があります。

無関係な医薬効果をうたうことは法に抵触

一つ目の理由は、“さまざまな法律に違反するから”です。果実酒の効果・効能を標榜することは薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)で禁止されています(第66条、誇大広告の禁止)。それだけでなく、健康増進法や景品表示法による禁止の対象にもなります。

思い入れのある商品に健康への願いを込める気持ちはわかります。ですが、巷でよく目にする「有機野菜で免疫力アップ!」や「アロマでがん予防!」というように、医療と無関係の商品に医療的な効果を表示したり、暗示したりすることは法律で禁止されているのです。

安易な健康効果の情報からトンデモ医療へ

二つ目の理由は、“安易に健康効果をうたうことは、トンデモ医療と結びつきやすいから”です。一般的な商品に健康効果を示すことは、多くの場合現代医療と矛盾します。そうなると、やがて現代医療を否定し、お客さんやお客さんの家族を適切な医療サービスから遠ざけてしまう恐れがあります。

たとえば、「びわ酒にはがん予防の効果がある。医者が否定しているのは、利権のために真実を隠しているからだ。だから病院は信じられない」といった具合です。心配しすぎと思うかもしれませんが、マルチ商法や自然派ビジネスではわりとよくあることで、手作り味噌教室やヨガ教室、アロマ体験会、スピリチュアル系講演会など、トンデモ医療は様々な形態の入口で私たちを待ち受けています。私のバーでも初めのうちはそういうお客さんがお見えになることがありました。ナチュラルテイストのバーなので、いわゆる自然派を惹きつけやすかったのかと思います。

しかし、こうした人たちに合わせてしまうと、一般のお客さんを遠ざけてしまいます。そして何より、医療は命に関わる重大なことなので、私のような門外漢がむやみに情報発信してはいけないのです。

実態のない付加価値を売りにする商売はかっこ悪い

ここまで、むやみに健康に関する効果・効能をうたう違法性と危険性についてお話ししてきましたが、私が果実酒の健康効果をうたわない最大の理由は別にあります。それは、“変な付加価値を付けるのは時代遅れだと思うから”です。

自然派思想の人たちは他者と違う自分を求めて先鋭化する一方で、一般の消費者は賢い方が増えていると感じます。「発掘あるある大事典」や「みのもんた」の番組が流行っていた時代ならいざ知らず、最近の賢い消費者は安易な健康情報に飛びつかないと思うのです。私のお店は健康やら病気予防やらの変な付加価値ではなく、果実酒の味や香りなどの美味しさや、カウンターでの会話などの楽しさなど、バー本来の価値を高めなければならないのです。これは飲食店だけではなく、他のビジネスにも当てはまるのではないでしょうか。農業なら野菜の美味しさ、雑貨ならデザイン性、講演会なら情報の質や面白さなど、本来の価値から判断できる時代がやってきたと感じています。

一方で、波動が高い野菜、病気を防ぐアロマ、運気が上がるトークイベントなど、実体のない付加価値を売りにする商売はたちまち見破られ、苦戦を強いられるでしょう。ですが、私はこの変化を歓迎しています。本来の価値を高めるのは時に困難が伴いますが、雰囲気を身にまとうよりもずっと創造的で面白いからです。

筆者

渕上桂樹(ふちかみけいじゅ)(農家BAR NaYa/ナヤラジオ)

 

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