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第10回 検査の案内や結果に示されている用語を理解する【農薬について知ろう】
残留農薬の検査の案内や通知される結果には、分析に関する専門用語が出てきます。「基準値を越えていなくて安心した」に加え、検査を正しく理解するために、もう少し詳しく見てみましょう。ここでは残留農薬の分析に関わる用語を解説します。
定性と定量
分析には定性分析と定量分析があります。どんな農薬があるかを調べるのが定性試験、どのくらいの量が含まれているのかが定量試験です。
誤差~真の値に近いか
測定のデータを示す数値には誤差が含まれます。誤差とは真の値からどれだけずれるかということで、多くは計算や測定の誤りなどによるものです。それを正しく表すために、データを補正することがあります。誤差が小さいとき、確度が高いといいます。
測定値を得るために、測定を繰り返し、統計処理を行います。
精度~バラツキが小さいか
信頼できる測定結果には、精度が高いことが求められます。精度とは、その実験を繰り返したとき、得られる結果がどれだけ近いかを示します。すなわち、ばらつきを表します。ばらつきができるだけ少ない結果が、精度が高いことになります。
ND~ゼロはない
検査結果に「ND」と示されていることがあります。これは、Not Detectedの略で、検出限界以下のことです。検出限界とは、先に述べたようにこれ以上検出できない限界の値でゼロを意味するわけではありません。NDと示されていたら、測定値は検出限界よりも小さく、これ以上分析できないので、ゼロなのかごく微量が含まれているのかはわからないということです。分析技術は非常に進歩し、ごく微量でも調べられるようになったものの、ゼロを調べるのはとても難しいのです。そこで検出限界以下と示します。
不検出基準の農薬などでは、「不検出」と示されますが、これも検査で検出されなかっただけで、ゼロではありません。
検出限界によく似た用語に、定量限界があります。これは、測定したときどのくらいの量があるかどうかがわかる、すなわち定量できる、最小の量をいいます。これもゼロではありません。検出限界はあるかどうかがわかる限界(量はわからなくてもいい)なので、定量限界のほうが大きい値になります。そのため、検出限界は定量限界の2分の1程度に設定されることが多いです。
農薬の分析技術は非常に高度で、ごく微量でも検出できますが、残留農薬ゼロはありません。無農薬で栽培したとしても土壌中に残っている農薬が検出されることもありますし、検出限界以下の農薬が含まれることもあります。残留農薬の検査の目的は、あくまでも、基準値を超えて農薬が残留していないかどうかを確認することです。そのことを忘れないようにしてください。
筆者佐藤成美(サイエンスライター) |