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農薬に関するデマで打線組んでみた!〈パート9〉落ちこぼれナス農家の、不器用な日常】

農家の声

多くの農薬デマを紹介してきましたが、まだまだメジャー級の農薬デマは溢れています!
ということで今回も、

「農薬に関するデマで打線組んでみた<パート9>」

をテーマに、農家の私ナス男が紹介します!

1.(中)ネオニコのせいでワカサギが激減した!

「ネオニコチノイドが使われ始めた時期から、餌となる動物性プランクトンが減少して宍道湖のワカサギの漁獲量が激減した!」

という報道がありました。

確かにワカサギが島根県の宍道湖で減少したのは事実ですが、それがネオニコチノイドのせいだと断定するのは性急すぎます。
なぜなら、国土交通省の調査では宍道湖中心の動物性プランクトンの量は、激減した時期からは回復しているからです。
wg2-shiryo2-5.pdf (shimane.lg.jp)

そして島根県の見解では、夏に30℃以上の高水温の日が続き、ワカサギが生きにくくなった可能性も考えられるとしています。

何より、島根県より北の県では、ワカサギは激減してないですからね。
ネオニコチノイドとの関連を結論付けるのは性急すぎるので、もっと詳しい調査を待ちたいところです。

2.(右)農薬のせいでトキが絶滅した!

「農薬のせいで環境が悪化して、トキが絶滅した!」

との意見も昔からあります。
しかし、トキの減少を農薬のせいとするには無理があります。
トキが絶滅危惧種にまで減少した原因は、

● 猟による乱獲
● 都市への人口集中や工場の増加による水田や生息地の減少

が主に挙げられています。

そして現在、中国産のトキを譲り受け繁殖と放鳥を繰り返して、佐渡のトキの個体数は戻ってきています。
農薬のせいだとするならば、トキの個体数は回復しませんよね?

3.(DH・投)学校給食は農薬まみれの野菜しか使われない!

「給食センターに減農薬の野菜を持ち込んだら拒否された! ちょっと虫食いがあるだけなのに!」

と主張する、農家の動画が話題になりました。
私も動画を見ましたが、説明不足&論理が飛躍し過ぎてツッコみどころ満載でした。

● 給食センターに卸している登録農家かどうかも分からない
● どこの市の給食センターの話かも説明しない
● 規格に合った野菜を安定的に提供していたのか分からない

これらの説明を一切せずに、なぜか食料危機を煽り、自身のオンラインサロンの運営をしているのはいかがなものか。

色々な農家がいますが、他を攻撃して自身の野菜をアピールするような売り方をしている農家は信用しない方がいいと思います。

4.(左)農薬によって作物は病気から無理やり復活させられている!

あるブログで、

「異臭が漂う夏キャベツに、農薬をかけて無理やり延命させている。ゾンビキャベツだ。」

という言葉がありましたが、キャベツを栽培していた私としてはこの表現に憤りを覚えました。
おそらく夏キャベツの「軟腐病」という病気のことを言っているのだと思われます。

病害虫図鑑 軟腐病(野菜共通) – あいち病害虫情報 – 愛知県 (pref.aichi.jp)

この病気にキャベツがかかってしまうと異臭が漂い、廃棄するしかありません。
予防するために農薬を使いますが、

「病気になって廃棄するレベル作物を、農薬を使えば出荷出来るレベルまで回復復活させらて出荷している!」

と思っている方がいたら、これは明らかな間違いです。
そんな魔法のような農薬がもし本当にあったら、ぜひ紹介してください!

5.(三)牛乳は実は危険な飲み物だ!

「牛乳は健康にいいと思いこまされているが、それは謀略だ!」
「牛乳を飲むと、むしろ骨粗鬆症になる!」
「牛乳は薬漬けの乳牛から絞られる!」

など、牛乳も昔からよくデマが流れています。

確かに、乳糖不耐症や乳アレルギー、牛乳が苦手で飲めないという方はいます。
しかし適量を飲む分には牛乳が健康に害を与えることはなく、むしろ健康に有益であると分かっています。

ここで牛乳のデマを全て紹介するのは難しいので、気になる方は下記のサイトをご覧ください。

6.(一)農薬を複数混ぜて使っているなら、安全か分からないじゃないか!

「単体の農薬の安全性の試験はされているけど、農家は複数の農薬を混用して使用する時もある! だから安全かどうかは分からない!」

とする意見は根強くあります。

確かに、現場では複数の農薬を混用して使用することがあり、複数の残留農薬が検出されることもあります。
しかし、健康被害が発生する可能性は非常に低いと考えられています。

農作物に複数の農薬が残留しているにしても、その残留量がごく微量であるからです。
毒性を示さないような微量の残留農薬を複数摂取した場合、毒性が現れるか(複合毒性)をテーマとした種々の研究は行われていますが、複合毒性を示唆する事例は報告されていません。

化学物質の組み合わせが無限大であるため、全ての農薬の組み合わせで毒性を調べることは現実的でなく、複合毒性の可能性はまったくないとは言い切れません。

しかし複合毒性が発現するかどうかは、共存する物質の濃度による影響が大きいと考えられており、ADI=一日摂取許容量よりさらに少ない残留量の農薬は、いくら集まっても何らの作用も示さない、つまり複合毒性を発現しないと専門家は考えています。

消費者の方は過度に心配しなくてもいいと言えるでしょう。

7.(二)カビがちょっとついていてもいいから、無農薬の方がいい!

「ちょっとくらいのカビなんか、その部分を取り除けば食べられる! だから殺菌剤を使うな!」

農薬に抵抗のある方はこのような意見を持つ方もいるかもしれませんが、この考えは要注意です。

発酵食品など有用なカビを利用した食べ物もありますが、一方で人や家畜の健康に悪影響を及ぼすものもあるからです。

カビ毒の中には、大量摂取すると嘔吐や食欲不振など様々な食中毒の症状や発がん性が認められているカビもあります。

有害なカビの発生を抑えるために、農薬は食の安全にも一役買っているのです。

8.(遊)サイトで買う野菜の方が、無農薬が多いからいい!

「スーパーや産直の野菜より、ECサイトの方が無農薬栽培をしている野菜が多い!」

と感じる消費者の方は少なくないでしょう。

パート2>でも紹介しましたが、スーパーマーケットや直売所など不特定多数に農産物を販売する場合、「無農薬」などの表記はNGです。(栽培期間中農薬不使用などはOK)
理由は、消費者に優良誤認を招かないためです。

一方で農水省基準認証室の担当者は、「各サイトの交流機能を用いれば生産者と消費者がやりとりでき、相互に納得した上で売買できるため、不特定多数への販売に当たらない」としていて、一部サイト上でそれらの表記を認めています。

これがECサイトの方が無農薬表記の野菜が多い理由ですが、これはかなりグレーゾーンだと個人的には思います。

真面目に認証を取って表記している農家が、表記で損をすることがないようにしてほしいと私は思っています。

9.(捕)種なしぶどうを食べたら、不妊症になる!

種なしブドウ、食べやすくておいしくて人気ですよね!
しかしこのおいしい種なしブドウにも、攻撃する方が存在します。

種ありブドウを種なしにするには、ジベレリンという植物由来のホルモンを使った液に漬ける作業をするのですが……

一部の人はジベレリン処理を自然に反していると捉えて、不妊症と絡めてデマを流しています。
皆さんご存じの通りだと思いますが、これは全くの事実無根です。

人気のあるデラウェアやシャインマスカットを食べた方は、不妊症になっているなんて言えますか?

ジベレリン処理をしなくても、日本で売られているいちじくやバナナ、パイナップルには種がありませんが、食べると不妊症になってしまうのですか?

不妊に悩む方にも失礼ですので、このデマはいますぐ止めてください!

まとめ

完全に間違っている農薬デマから、デマとまでは言わずとも農薬のせいとは断言できないようなものまで、まだまだ農薬デマは溢れています。

消費者の方が完全に農薬デマを見抜くことはなかなか難しいですが、多角的に情報を見ることが大切です。

 

【落ちこぼれナス農家の、不器用な日常】記事一覧

筆者

ナス男(ハイパーナスクリエイター「いわゆるナス農家」)

 

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