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第12回 活動家・法曹界複合体が米国の科学と産業を破壊する【IARCに食の安全を委ねてはいけない】

特集

アメリカの科学と産業は、活動家・法曹界の複合体によって脅かされている。この複合体は、大企業に対して数十億ドルの訴訟を起こすために様々な疑似科学のトリックを展開する活動家と裁判弁護士との邪悪な同盟として知られている。このような欺瞞から安全な産業は一つもない。

活動家・法曹複合体が狙う巨額賠償金

アイゼンハワー米大統領は1961年1月の退任時の演説で、「軍産複合体が……不当な影響力を獲得しないように身を守らなければならない」と警告した。軍産複合体とは、平和よりも戦争を促進することに金銭的なインセンティブを与える、軍と防衛産業との連携である。そして今日、私たちは「活動家(アクティビスト)・法曹(リーガル)複合体」という別の脅威に直面している。活動家・法曹複合体は、アメリカの大企業に対する訴訟で数十億ドル規模の巨額賠償判決を下す存在となっているからだ。

この邪悪な同盟のパートナーの片方が、食物、飲料水、空気、使う製品のすべてが私たちの健康を密かに害すると虚偽の主張をする活動家たちである。彼らは仮定および可能性としてのリスクを誇張し、曝露レベルといった関連する事実を軽視することによって、邪悪な目的を達成する。科学に対する広範な誤解と「企業」、特に化学薬品、医薬品、消費財を製造する企業に向けられるうさんくさい的な感情を利用し、一般大衆に恐怖を植え付けるのである。

もう一つのパートナーは、弁護士業界である。弁護士業界は活動家の脅し文句を鵜呑みにして、巨額の賠償金という大当たりの判決を勝ち取る。彼らは、がんやその他の病気に苦しむ世間から同情されやすい患者を特定し、その病気を私腹を肥やす企業のせいにする。そして、テレビコマーシャルを流し、集団訴訟に参加する「被害者」を増やそうとするのだ。

この訴訟ビジネスはほぼ毎回成功し、その結果はいつも同じで、彼らにとっては金の卵である。そうして活動家・法曹複合体は、ジョンソン・エンド・ジョンソンのベビーパウダーが卵巣がんを引き起こしたとして47億ドルの賠償を求める訴訟を起こし、モンサントのグリホサートが非ホジキンリンパ腫(NHL)を発症したとして賠償金20億ドルの陪審員判決(その後、わずか8700万ドルに減少)を勝ち取ったのだ。いずれの判決も信頼に足る科学的根拠はなかった。*AGRI FACT編集部註 ジョンソン・エンド・ジョンソンのベビーパウダーはその後販売中止に追い込まれた。

しかし、この種の訴訟において、発がん性の科学的証拠がないことは、陪審員の判決には無関係である。活動家によって質の低い科学雑誌に掲載されることの多い、欠陥のある、あるいは都合よく選び抜かれた毒物学的および疫学的研究の助けを借りて、活動家と法律家の複合体は、疑似科学のトリックを使って科学を覆すことができるのである。

参照

疑似科学のトリック

疑似科学トリックの第一は、毒性について長年信じられてきた真実を覆すことである。パラケルススのおかげで、16世紀以来、「量が毒を作る(多量なら危険、微量なら安全=用量作用関係の原則)」ことが知られている。しかし、活動家と法律家の複合体は、化学物質が含まれている、あるいは残留していることが、その化学物質の潜在的な健康被害リスクを示す指標であるという、非科学的な説を喧伝している。これはもちろん間違っている。

いまや分析機器の発達で、体内や環境中のほとんどの化学物質を「1兆分の1」(オリンピックサイズのプールの水滴に相当)という微量なレベルで検出できるようになった。このような低濃度で健康を害する化学物質は、地球上にはほとんど存在しない。

しかし、活動家・法曹複合体の教義である「私たちは常に有害な化学物質の海の中を泳いでいる」を使えば、発がん性物質にさらされただけでも、数十年後に発症するがんの原因になり得ると弁護士たちは簡単に主張できる。そうして糾弾される化学物質は健康上の問題を引き起こすことなく何十年も前から使用されており、ずっと微量のまま体内に存在してきた。

疑似科学トリック第二の手口は、規制当局や活動家は利害関係のない正義の味方であるという社会の信条につけこむことである。例えば、モンサント社のグリホサート裁判の陪審員たちは、WHO(世界保健機関)の下部組織であるIARC(国際がん研究機関)がグリホサートを「おそらくヒトに対して発がん性がある=グループ2A」に分類したことを聞いている。しかし、IARCワーキンググループの外部特別顧問で、IARCグリホサート会議で唯一の外部専門家顧問でもあるクリストファー・ポワティエ氏が、グリホサート製造業者を訴えれば大金を得られる立場にあるがん患者の裁判を担当する法律事務所からコンサル報酬として16万ドルを受け取っていたことは、彼らの耳には入らなかった。

疑似科学トリック第三の手口は、陰謀論を煽ることである。通常は、文脈から切り取った古い不明瞭な文書や電子メールをいくつか使用する。活動家・法曹界の複合体はこの手口で、社会的強者の大企業を「罰したい」と思っている陪審員たちに、企業が不正行為に関与していたと信じ込ませるのである。これでゲームセット。残る問題は、賠償金が懲罰要素を加えてどれくらいの金額になるかということだけだ。

活動家・法曹複合体は、次にどこを襲うのだろうか。どこでもあり得る。もしかしたら、アメリカ人の肥満を理由にコカ・コーラ社を集団訴訟するかもしれないし、もしかしたら、SNSプラットフォームの中毒性が高すぎるとして、フェイスブックを狙う弁護士が出てくるかもしれない。あるいは、アップル社のiPhoneが脇見運転による交通事故の原因として非難されるかもしれない。

企業が資金力を持っている限り、文字通り何でも可能だ。活動家・法曹界の複合体から安全な産業はない。

*この記事は、アレックス・ベレゾウ博士(微生物学博士、科学ライター、講演者であり、米国科学健康委員会のためのジャンクサイエンス=疑似科学の論破が専門)、ジョシュ・ブルーム(元サイエンティフィック・コミュニケーションズ担当副社長)著 – 2019年12月17日公開 https://www.acsh.org/news/2019/12/17/activist-legal-complex-will-destroy-american-science-and-industry-14463 をAGRI FACT編集部が翻訳編集した。

〜第13回に続く〜

 

【長期特集 IARCに食の安全を委ねてはいけない】記事一覧

筆者

AGRIFACT編集部

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