会員募集 ご寄付 お問い合わせ AGRI FACTとは
本サイトはAGRI FACTに賛同する個人・団体から寄付・委託を受け、農業技術通信社が制作・編集・運営しています

第1回 少人数だからこそ深まる、本音トークと多様な視点【AGRI FACT会員限定イベントレポート】

ニュース

2025年3月6日に開催された「第1回AGRI FACT会員交流会」は、予定された議題に縛られることなく脱線しながらも農業や食にまつわる話題が飛び交うオンライン交流会となった。参加者は農家、コラムニスト、元百貨店勤務で食品売場経験者など実に多彩。少人数ならではの「じっくり深く」語れる雰囲気の中、つぎつぎに興味深い話が展開された。

「トンデモ」を見極めるコツ

まず盛り上がったのは、種苗法や食品安全をめぐって「トンデモ情報」を発信する人たちについての話題。参加者の一人でAGRI FACTコラムニストの渕上桂樹さんが営むバーには、まれに「農薬は危険」「種(タネ)が奪われる」といった極端な情報を真に受けている人が来店して自説を披露するとのこと。

とはいえ、体感的にはそうした“トンデモ”を強く信じる人はほんの一握り。むしろ「無農薬のほうがなんとなく安全そう」くらいの、曖昧な不安を抱える予備軍が多いのでは、という指摘があった。

他の参加者からは「農薬の安全性に関する仕組みは現場では当たり前。でも実際は発信不足。だからこそ、誤解を招く根拠薄弱な情報が広がりやすい」との声も。専門家サイドの人々が“間違いを糺す”だけでなく、現場のリアルを楽しみながらわかりやすく伝える必要がある――そんな課題意識が共有された。

オーガニック給食の裏側

オーガニック給食の推進運動が各地で活発化している現状にも話題が及んだ。

「安全な食材を使うのはもちろん大切だけれど、なかには“本当に子どもたちの健康のため?”と疑問を抱くような政治的意図が見え隠れすることもある」との意見が出た。

一部では、実際の栄養管理や食品安全委員会の評価を無視して“オーガニックならすべてOK”と安易に結論づけられることは珍しくない。

「給食は春夏冬休みを除く平日、一日3食のうちの1食しか担わない。家庭での食事こそ大部分を占めるのに、そちらへの呼びかけをせず、行政や学校教育へまず入り込もうとするのは不自然」という声があり、参加者全員が頷く。地域社会で食や農業をどう継続的に支えていくかが大事という意見が多かった。

「あきたこまちR」への注目

今年は秋田県から登場する「あきたこまちR」も注目が集まるトピック。品種改良や最新技術によって改良された米なのだが、「放射線育種」という言葉のイメージを悪用して “トンデモ”の格好のターゲットにされている現実がある。

放射線育種と「あきたこまちR」

参加者からは、「秋田に実際に行って、生産者や県の担当者、JA関係者とまずは“おいしく食べて”語り合えるようなイベントを開くのはどうか」という提案も飛び出した。科学的見地から厳密に反論するだけでなく、“ポジティブに盛り上げてかき消す”リスクマネジメント・カウンター手法の開発実践が課題となっている。

地域で高まるPFASの不安

一方、東京の多摩地域などで騒がれているPFAS問題にも意見が上がった。まずメディアのPFAS報道自体が基本的な事実を押さえていない。PFOS・PFOAという2物質を問題視した報道が大半で、これは10,000種類以上あるPFAS全体の問題ではないからだ。特定のPFOS・PFOA問題 とPFAS全体の問題という全くの別問題を分けずに混同して報じている。それに加えてネット・SNSでは米軍基地との関連を論じる動きなど、政治色が強い主張も混じりながら不安が煽られるケースがあり、「農業と食の安全」のトピックとしても注視すべきとの声が強かった。

不安情報が出回っているため、食品安全委員会や環境省がすでに基準や評価を進めていても、それを知らない市民の方が“危ないらしい”だけで過剰に不安を持ってしまうことも多く、情報の届け方が重要という議論になった。

交流会を終えて:今後の展望

今回の会員交流会では、オーガニック給食や新品種へのデマ、PFASなど、農業と食を取り巻く社会の様々な“噂”や誤解が話題に上りました。しかし共通して感じられたのは、「生産・流通の現場には多くのプロフェッショナルがいて、その人たちの想いがきちんと発信されず埋もれている」という現実である。

参加者からも、「農家や研究者が積み重ねてきた試行錯誤を“根拠なしの不安”でかき消されるのは悔しい」「科学的エビデンスとともに、農業の現場がどれだけクリエイティブでおもしろい場所か、もっとポジティブに伝えたい」という声が上がった。

アグリファクトからの一言

この交流会は、会員同士が自由に意見交換し、学び合い、そして新たな連携を築く場でもある。農家の本音、市民の不安、行政への提案など、多角的な視点が集まることで、単なる「言いっ放し」にとどまらない新たな実践・試行錯誤につながる動きにしたい。今後も定期的に開催し、より多くの会員が参加できる機会を設ける予定だ。有料オンラインセミナー(会員無料!)の近日開催も検討中。

AGRI FACTは農と食に関心がある方の参加・会員登録を心よりお待ちしています。

 会員募集中! 会員募集中!

関連記事

記事検索

Facebook

ランキング(月間)

  1. 1

    「非科学的な遺伝子組み換え作物論争に終止符を!」- 毎日新聞・小島正美記者に聞く遺伝子組み換え作物

  2. 2

    「オーガニック給食運動」のおかしいと思うところ:54杯目【渕上桂樹の“農家BAR Naya”カウンタートーク】

  3. 3

    日本の農薬使用に関して言われていることの嘘 – 本当に日本の農産物が農薬まみれか徹底検証する

  4. 4

    Vol.6 養鶏農家が「国産鶏肉と外国産鶏肉」問題を語る【農家の本音 〇〇(問題)を語る】

  5. 5

    農業に関するデマで打線組んでみた!〈パート31〉 種苗法(前編)【ナス農家の直言】

提携サイト

くらしとバイオプラザ21
食の安全と安心を科学する会
FSIN

TOP

会員募集中

CLOSE

会員募集中