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第6回 反グリホサートプロパガンダ【IARCに食の安全を委ねてはいけない】

特集

1970年代に開発されたIARCの分類は科学の進歩により時代遅れになっている。そして除草剤ラウンドアップの有効成分グリホサートをグループ2Aに分類したIARC(国際がん研究機関)の判断は、反グリホサートのプロパガンダに大いに利用されている。

がんより雑草の方がいい

米ニューヨーク市議会は2021年4月、市が所有したりリースしている遊び場や公園などで、グリホサートなど化学農薬の使用を禁止する条例を全会一致で可決した。条例案を提案し、成立に尽力したベン・カロス議員は「この条例は、子どもたちをより安全にし、私たちの街をより良くするために大いに役立つでしょう。」などと発言している。

カロス議員はゲームのやり方をよく知っている。グリホサートなどの農薬を公園やその他の公共の場から禁止するために、彼は試行錯誤の末にある方法を用いている。「子ども」と「がん」を同じ文章に含めるだけで、報道される率が格段に高まるのだ。つまりカロス氏をはじめNY市議会は、公園での農薬使用を禁止するために、偽のがんの恐怖と「子供たち」を利用した。カロス氏の科学的洞察力はともかく、「怖がらせ方」に関しては、さすがと言うほかない。

たとえば、ニューヨークのローカル局から発信されたレポートは、市内の公園や公共の場からラウンドアップ系除草剤を追放しようとする取り組みについて語ったものである。カロス議員は次のように語っている。

「ガンより雑草の方がいい。なんでこんな大問題になるのかわからない」

もちろん個人的には、雑草よりガンの方がいいという人はいないので、ある意味、カロス氏と私は意見が一致している。しかし、グリホサートに発がん性があるという主張には賛同しない。そしてカロス氏は放送局NY1のアリ・エフライム・フェルドマン記者から反農薬の知識を得ている。フェルドマン記者は2021年4月8日に “City May Soon Ban Chemical Pesticides Like Roundup “(NY市ではラウンドアップのような化学農薬が公共の場から追放されるかもしれない。)という記事を書いている。

記事を読むと、

“probable human carcinogen” (ヒトに対しておそらく発がん性がある)=グループ2A)

というタイトルの章が出てくる。

フェルドマン記者は、市の保健精神衛生局の2016年の報告書によると、WHO(世界保健機関)は 「グリホサートは発がん性物質の可能性が高いとみなしている 」と書いているが、これは誤りである。WHOは、グリホサートは 「現実的な曝露レベルでは癌を引き起こす可能性は低い」としている。

フェルドマン記者は、EPA(米国環境保護庁)が「グリホサートに発がん性があるとは考えていないことを認めている」と併記することで記事の公正中立性を保つフリを装うとしているが、他媒体のEPA批判記事に触れて、我々はEPAの意見を無視すべきかもしれないとほのめかしている。その記事はEPAの「明らかに汚染された」結論には、何らかの歪んだ陰謀あるいは隠蔽工作が関与していると示唆しているものだ。

巧妙な反農薬プロパガンダに触れたことのある人なら、WHOがこの化学物質を発がん性物質と呼び、EPAが金銭的な動機からか反対の結論を言っていることを「知って」いるだろう。では、どちらを信じればよいのか。

ハザード同定の分類は非現実的で劣っている

まずWHOは前述したようにグリホサートに発がん性があるとは考えていない。しかし、その下部機関であるIARCは「ヒトに対しておそらく発がん性がある=グループ2A」に分類している。

フェルドマンの記事では、他の多くの世界的な機関が意見を寄せていることも省略されている。以下のどの規制機関や団体もグリホサートに発がん性があるとは考えていない。

• 米国国立毒物学プログラム
• EPA(米国環境保護庁)
• カナダ保健省
• 欧州化学品庁
• フランス食品・環境・労働安全衛生庁
• ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)
• オーストラリア農獣医局
• 連邦食品安全・獣医局(スイス)
• 環境保護局(ニュージーランド)
• 国立健康監視局(ブラジル)
• 日本の食品安全委員会
• 農村開発協会(韓国)

参考

あくまでIARCが測定するのはハザードであってリスクではない。ハザードとは、ある化学物質が、いかなる状況下でも、いかなる曝露や用量でも、現実的か否かを問わず、ヒトの健康に悪影響の状態Xを引き起こす可能性があるか否かを測るものである。これは、人間が実験動物と同じ高用量の化学物質にさらされるという仮定に基づいて答えを出すので、毒性を測定する方法としては劣っている。

参考

WHOおよび他のすべての規制機関)は、リスク(人間が実際に遭遇する可能性のある曝露に基づく危険性)を用いている。なぜならその方法がグリホサートをはじめ化学物質の実際の発がん性を評価する優れた方法であると判断しているからだ。リスクを決定要因として用いると、グリホサートは発がん性物質ではない。しかし、IARCは、この化学物質が非現実的で可能性の低い条件下でのみヒトにがんを引き起こす可能性があると判断しているにすぎず、その時代遅れの判断が反農薬プロパガンダに利用されてしまっているのだ。

*この記事は、ACSH(全米科学健康評議会)化学・薬学部長のジョシュ・ブルーム 2021年4月15日公開https://www.acsh.org/news/2021/04/15/nyc-pol-uses-phony-cancer-scare-children-ban-glyphosate-parks-15480 をAGRI FACT編集部が翻訳編集した。

〜第7回へ続く〜

 

【長期特集 IARCに食の安全を委ねてはいけない】記事一覧

筆者

AGRIFACT編集部

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