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Vol.1 反グリホサート運動の「表層」 世界の科学・規制機関は発がん性なしで一致【日本・世界の「反グリホサート運動」の真相】

食と農のウワサ

AGRI FACT執筆者でもある農業ジャーナリストの浅川芳裕氏が「日本・世界の反グリホサート運動の真相」と題し、オンライン講演を行った(2021年6月20日「食のリスクコミュニケーション・フォーラム2021」第2回)。その中で、浅川氏はグリホサート問題の中心地IARC(国際がん研究機関)の内部と背後で蠢く人たちの腐敗ビジネスに鋭く言及し、食の不安を煽って農業や社会を歪める構造の正体を浮き彫りにした。


これから「日本・世界の『反グリホサート運動』の真相」と題してお話します。除草剤ラウンドアップの有効成分グリホサートの使用に対して、世界的に市民の反対運動が長期継続している状況がある一方で、世界の科学・規制機関では安全性試験をすべてクリアし、150カ国以上の農業現場で使用されています。安全なのになぜ反対運動が続くのかというのが私の問題意識です。

結論のみ先に言ってしまうと、背景に米国の訴訟ビジネス業界と、欧州、米国、日本の反農薬・GM(遺伝子組み換え)の有機ビジネス業界の共通利害が存在します。さらには、二つの業界の利害にお墨付きを与える国際機関があり、その業界と国際機関をつなぐパイプ役の専門家がいることもわかりました。これから、この複雑な利害関係を解きほぐし、反対運動の真相に迫ります。そして、講演の最後に、新たな視点から反対運動に対する打開策を提言いたします。

反グリホサート運動の「表層」
世界の科学・規制機関は発がん性なしで一致

この図①が反グリホサート運動の表層です。

反グリホサートの表層図①

図①の左側が「発がん性はない」という厳密なリスク評価の結論で、これが日本を含めた世界の科学・規制機関の一致した見解です。右側が国際機関の下部組織IARC(国際がん研究機関)による分類の「グループ2A(おそらく発がん性がある)」というハザード特定をした評価です。

どんな研究・規制機関の見解が一致しているのか。代表的なところを挙げておきましょう。Efsa(欧州食品安全機関)、FAO(世界食料機関)、WHO(世界保健機関)、ECHA(欧州化学機関)、EPA(米国環境保護庁)、NIH(アメリカ国立衛生研究所)、カナダ保健省、APVMA(豪州農薬・動物用医薬品局等)、そして日本の食品安全委員会などです。

反対運動は基本的に2015年3月のIARCの発表に依拠してる団体や組織が右側のカリフォルニア州の有害性物質の評価局だったり、カリフォルニア州の裁判所だったり、米国の弁護士だったりするわけです。

発がん性があるという評価に基づくと、グリホサートは危険という話になるので、それがニュースとなってSNS等で拡散され、いろいろな宣伝、政治に利用されます。「おそらく発がん性がある」「危険な農薬」という話は世間の注目を浴び、ニュースになりやすい。また、それが大衆の不安に結びついて反対・禁止運動が盛り上がっていく。もし科学的に安全な農業技術が禁止されれば、世界の生産面、消費面で多大な不の影響があるのは冒頭で述べた通りです。

さらに問題なのは、IARCの分類にもとづき、カリフォルニア州環境保健有害性評価局(OEHHA)が発がん性物質のリストに加えたり、米国の裁判所や弁護士、陪審員たちがその見解に影響を受けてしまいました。その結果、左側の国際的・科学的な評価にもかかわらず、「危険な農薬」という風評が広まっていき、現在にいたっています。

Vol.2へ続く

【日本・世界の「反グリホサート運動」の真相】記事一覧

筆者

浅川芳裕(農業ジャーナリスト、農業技術通信社顧問)

編集担当

清水泰(有限会社ハッピー・ビジネス代表取締役 ライター)

 

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