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VOL.21 カビないパンはパンじゃない「山崎製パン陰謀論」【不思議食品・観察記】

コラム・マンガ

科学的根拠のない、不思議なトンデモ健康法が発生する現象を観察するライター山田ノジルさんの連載コラム。驚くべき言説で広まる不思議食品の数々や、それを楽しむ人たちをウォッチし続けている山田ノジルさんが今回注目するのは、能登半島地震発生時の「食糧支援」をめぐる動き、言説のあれこれ。ここにもやはり、ド定番の陰謀論が姿を現したようです。

被災地緊急支援のパンメーカーをデマ投稿が襲う

すでに方々で話題にはなっているものの、「謎食品」をめぐる騒動の一つとして当コラムでも記録しておくべき出来事がありました。それはパン業界最大手であることから、何かと矢面に立たされている山崎製パンに関連する陰謀論です。

2024年1月1日に能登半島地震が発生。山崎製パンが被災地に向けた緊急食糧支援に踏み切ると、まもなくSNSに以下のようなコメントが投稿されたのです。

「実は国が費用を後払い! 癒着!」
「人口削減のために被災地にパンを運んでいる」
「体力氣力を奪うためだけの添加物まみれのパン」 ※「氣」の文字に注目!

報道によると、能登半島地震発生の翌日から、山崎製パンが石川県に運んだのは菓子パン約5000個。他の大手製パンメーカーも同様の動きをみせ、食品だけでなく生理用品やおむつなどの生活必需品も運び込まれています。これは内閣府による「プッシュ型支援」というもの。被災地からの呼びかけを待たずに必需品が届くよう、業界団体を通じて支援される仕組みだとか(2011年3月発生の東日本大震災の後に整えられた)。企業が国と連携して大災害時に対応し、費用は国が後から支払うことになっているのです。

山崎製パンのトラックがいち早く被災地に乗り込む様子に、ネット上は拍手喝采。なのに費用は国!? そこに「自社の手柄かのようになっててずるい」という感情が働くのでしょうか。瞬く間にお約束かのごとく、前述のような陰謀論的コメントが発生していました。そうしたアカウント周辺によると、地震そのものも「悪の組織によって人工的に引き起こされたものであり、パンの食糧支援もその計画の一環である」という主張です。よって、2023年3月に発生した昆虫食叩きと同様に、自分の中で「陰謀によって不穏な存在とされてしまった」謎食品にリスト入りしました。

山崎製パン公式が実証実験で全否定

ちなみに山崎製パンを叩くコメントの中には、単純に「添加物が体に悪い」というだけで、「陰謀だ」とは言っていないものも数多くありました。じゃあ何ならいいのか?と言うと、オーガニックやマクロビ系の食品だそうです。

一応、情報を付け加えると山崎製パンが「添加物まみれのパン」と叩かれるのは今にはじまった言説ではなく、震源地は『ヤマザキパンはなぜカビないか 誰も書かない食品&添加物の秘密』という書籍(2008年発行)。同書によって「山崎製パンのパンが長期間カビないのは、臭素酸カリウムという強い添加物を使っているため」というデマが出回りました。

そもそも臭素酸カリウムとカビは一切関係なく、カビないのは製造過程が清潔だからなのですが、本家が「山崎パンにカビを接触させたらちゃんとカビたよ!」なる実証実験を公表して全否定しなければならなかったことからも、このデマがいかに根強く信じられているかがわかります。

「カビ」はいいもの悪いもの? それぞれの主張

カビないものは、体に悪い(=自然じゃない)。

この主張を聞くと、とある自分の体験を思い出します。某マルシェで「カビて腐るようなものは体に悪い」という主張に出会った出来事です(2014年に他媒体の連載コラムでも書いています)。

ある日、我が家のインターホンが鳴り、手が離せなかったので持参したというチラシをポストへ入れておいてもらいました。後から回収して見ると、ああこれがウワサの世界救世教。そこで告知されていたのは、近所で開催予定のマルシェです。これは何か見られそうだと、ウキウキしながら足を運ぶと、もちろんそこで売られていたのは「自然農法」※を謳う野菜です。そしてこんなパフォーマンスが繰り広げられていたのです。
※世界救世教の教祖である岡田茂吉氏が提唱している。

うやうやしく野菜の前に並べられていたのは、腐ってドロドロに液状化したジャガイモVSカサカサに干からびたジャガイモ。これは何?

「有機肥料で育った野菜はカビて腐る! 自然農法の野菜は腐らず枯れる」

オーガニック栽培などは余計な肥料を加えるので、不自然に腐るのだという主張でした。自然農法で何も加えず自然に育てれば、腐らない(で枯れる)のが本来の姿である、とな。(売り込むもののために他者をサゲる定番の手法)

菌がつくかどうかにも、色々な解釈があるものです。添加物でカビないと怖い。不自然な栄養でカビても怖い。イメージ次第で、何でも怖くなってしまうのですね。

自分としてはカビてないものを食べられれば、無添加でもオーガニックでも自然農法でも添加物入りでも、何でもいいですけどね(こだわらないヤツはすっこんどれ! とお叱りが飛んできそう)。

今回の災害では、マルチ商法で知られる会社の健康食品や雑貨も、支援物資として被災地へ発送されていた様子です。それ、被災地にいろいろご迷惑なのでは……。添加物入りのパンよりも、何十倍も心配です。しかし陰謀論の文脈では、権力&主流のものこそが、悪。「被災地に必要のないもの」を判断する基準の違いが、とてもとても印象的でした。

 

【不思議食品・観察記】記事一覧

筆者

山田ノジル

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